トロイカ体制
トロイカ体制。原義となるものは、レーニン死後に形成された3人組による指導体制だ。ジノウィノフ、カーメネフ、そしてスターリン。結果的に最大の仇敵であったトロツキーの追放に成功するものの、その後分裂。書記長であったスターリンは他の二人を失脚させ、そして大粛清の嵐の中に追いやった。
「とどのつまり、そのトロイカ体制と似たようなことをしようとしているわけ。今の学園横浜は内乱が吹き荒れている。年金と栄誉と懲罰大隊送りを賭けた闘いがな。だが、ヤツらは結果を残せていない。だから妥協案ということで大矢副理事長が理事長へ、主幹教諭の近藤が副理事長へ。座布団が1枚づつ上がるけど中身は全くもって一緒。となるのさ。」
実に推測であり、実に的を得た学園横浜の内情を、生徒会内務委員であるリーコンは配下に話した。常に生徒を監視し、時には盗聴すらも行う内務部所属生徒、通称「NKVD」が集結した時に、録な事は起きない。
「んで、俺たちの行動は決定された。大矢副理事長に敵対する勢力をあらゆる手段を用いて潰せ。副理事長殿は学園横浜のカラーを理解している。この暗部もな。」
「と、言いますと、近藤さんは少々難ありと?」
名も無きNKVD所属生徒は、当然の疑問をリーコンに投げかけた。
「難ありねェ…。ありゃ難なんてもんじゃあない。俺たちは超能力者であり、超能力者というものは基本秘匿主義なのは分かるよな?何故なら、超能力者産業は斜陽国家日本を支える唯一の希望であり、間違っても中国やアメリカ、ロシアには漏らしては行けない。その点、あの近藤という野郎は致命的なまでにそれに対する危機感がない。ヤツが出来ることは精々総生徒50人程度の田舎の公立中学の校長ぐらいなもんだ。」
リーコンは鼻で笑い、煙草に火をつけた。内務委員にとっての一大事業となる学園横浜の総帥決定戦は、今のところは彼の手からはみ出してはいない。
「それに…。大矢さんは、自分が理事長となった暁には報酬を支払うと一筆貰った。今、NKVDはおよそ100名。全員に分配しても軽く億はいく金額だ。張り切ってくれたまえ。諸君。」
部下に発奮させる為に、大矢との特別取引にて取り付けた金額はおおよそ150億円。暗闇に蠢き、いつでも何かに怯える彼らにとって、現金というものは何よりの褒美である。一気に内務委員室の熱気が高まった。
「さァ…。皆で巨悪を打ちのめそう。巨悪をぶっ飛ばしたらシャンパンで乾杯しよう。自撮りやハイキングでもして盛り上がろう。輝かしい未来に向けて…。」
リーコンが書類に署名した瞬間に、彼らは行動を開始する。




