Action This Day
力が欲しい。大智に叩きつけられた問題を端的に言ってしまえばそれだけだった。
あの愉快なロシア人は、何処からか拾ってきた仕事を大体は大智と共に完遂する。
「仕事中毒なんだよ多分な。」
彼は陽気に笑う。仕事熱心。いい響きではあるが、その仕事というのは大方誰かが最も大事にしているものを奪い取ることでようやく終了となる。きっと、翔や公正がこの仕事を受注するとは思えないし、リーコンも難癖をつけてはコストパフォーマンスに優れない役割から逃げて回る。そうなれば、大智に回ってくるのはある意味必然であった。
「……俺は足でまといなのか?」
そもそも、超能力者開発指数という評価基準においては、ロシア人の彼、イリイチに比べるのもお護摩しい、RANK:2に過ぎない。その順位付けがその通りに絶対なものになると言われれば、恐らくは違うのだろうが。
「昨日だって人質制圧も碌に出来なかった…。報酬は折半だって言うけど、イリイチだって本当は思ってる筈だ。使えねェ部下は切り捨てるって。」
大智から見たイリイチという男は、そのまま反社会性人格障害が当てはまるのだろう。魅力的な性格と、本当なのか分からず仕舞いの経歴に、人を殺すことになんの躊躇を持っていない。
そんなイリイチが大智に抱いている感情は代わりのない親友だと言うことに気づいていない、いや、気づきようがない大智は、いつか消される恐怖といつか見捨てられる危機感に襲われる。深淵に入り込んだ人間は深淵に飲み込まれてしまう。
「……。」
ガラクタに映し出されるガラクタに目が映る。
かつて学園横浜が汎用的超能力システムである夜叉のカタログスペックを全て上回ったもう1つの汎用的超能力システム。
「羅刹速疾鬼。虚空夜叉と同等。あるいはそれをも越える正真正銘の怪物。安全性だかなんかの理由で創成は採用していない…。」
オプションプランとして、確かに羅刹という名前はあったのだ。生徒会副会長として、給料と引き換えに整理した書類の中に何度も幾度も。
思い立ったように、光の篭っていない目を擦りながら、携帯のメモリを圧迫するメッセージが詰まったアプリを開いた。
「羅刹速疾鬼について知っている情報があれば教えてくれ 」
数秒と立たずに食い気味な返信が来たのだった。
「例の喫茶店に来い 」




