PKDI:RANK2 衛生兵
「全員明日の15時に生徒会本部会議室集合
カルトには人質がいる可能性が高い
治療系超能力者の協力を取り付けた 既読 1:23」
決行の時は始まろうとしていた。超能力者開発指数、段階45人に、段階3が2人。そして、美咲以外に名前も聞いたことの無いような段階2が1人参戦し、併せて8人。外部に漏れてしまう可能性を防ぐために、更なる増援は期待出来ない。わかり切ったことであった。また、SNSによる会話が傍受される可能性が1パーセントでもあるというなら、実際に集まって話し合うしかない。徹底的な情報統制を引いているのだ。
そして、その時に集う。超能力の中でも禁忌とされる若返りと不死性を兼ね備えた施術を施された者の集まりであろう「創始真理会」と、行き場を無くした負け犬たちとは言え、現場経験歴は学生とは比べ物にならない超能力者軍隊を護衛に持つ関東最大の暴力団「三代目七王会」の貸元頭を同時並行で叩き潰すとなれば、然しもの超能力者たちでも重苦しい空気を隠しきれない。
「さァ…集まったわね。皆に、前言った衛生兵を紹介するわ。来ていいわよ。」
美咲の指示に従い、現れた女性に誰もが度肝を抜かれる思いを感じただろう。身体は細く、肌は白人よりも白く感じ、何よりも髪の色は透明感を見せつけるようなホワイトヘアーであった。
「…おいおい、先天的に色素が抜けているって言うアルビノってやつか?」
「そ、そうです。よろしくお願いします。」
謙虚な語り口ではあるが、恐らくは見慣れているのだろう美咲と、何故だか親近感を覚えたイリイチ以外は開いた口が塞がらないような、そんな様子であった。
「ま、見た目なんてものはなんだっていい。会長、この子は有能なのか?」
「えェ。本来なら、治療系超能力者というのは自分は完全に治療出来ても他人はあまり。或いはその逆。でもこの子はどちらにも有効的な働きが出来る。段階2ではあるけれど、来年度再編成の時に段階3に上がることが噂されるぐらいよ。」
「へェ。因みに国籍は?直感だけど中欧あたりだろ?」
彼が他人に対してここまで興味を示すのは珍しい。見た目や口先には惑わされない第六感使いは、その人間が持つ意思を最重要に捉えている。だからこそ、入り組んだ彼女に対して興を覚えるのだ。
「ヨーロッパの…。ん、この学園横浜に来るまでは…転々としてました。」
「成程ね。日本語話せるんだ。凄ェじゃん。俺もロシア人だけどよ。」
素直に感嘆したのか、イリイチは実直な褒め言葉を送る。それにしても、彼が感じる親近感というのは一体何が原因なのだろうか。少しでも情報が欲しい。彼女を彩るのは、その珍しく美しい顔と目だけでは無いことをイリイチが確信するのは、彼女の名前を聞いたときだった。
「名前は…サラ・ルビンシュタインです。」
ヘブライ語から語源が来ている名前は、年齢や国籍、超能力やその他全てを超越したものを思い出させたのだった。
全ての陰謀はユダヤに通ず




