円卓
「寒気がするほどの大物が一堂に会するわ。神里がイリイチを狙っていたのは最前のこと。それを止めるために翔が動いて、生徒会を気に入っていない柴田が働きかけて…。彼らにはもう少し一蓮托生の仲間である、という自覚を持って欲しいわ。ほんとに。本気で。」
「そりゃ無理なご相談だ。全員が全員と争う理由がある。だからといって彼らを遊ばしておくのはあまりにも無駄。だァから、ギリギリの妥協なんだよ。」
もし、例のカルト宗教が近代改修型汎用超能力技術を完全解読していれば、警察機関ではとても太刀打ち出来ないものに変貌してしまう。更に彼らの資金源にヤクザが関わっているという情報も漏れつつある今は、四の五の言って時間を潰す暇もない。三島の言う通りに、辛うじての時間であった。
「会長、序列第3位、柴田公正が到着した。予定時刻より30分は早いお着きだ。」
「意外ね…。会議室に案内してやって。コーヒーの1つでも出してやんなさい。」
学園横浜が決定した上位3名は、超能力者私設軍隊のトップスターに成れるレベルの才能と実力を兼ね備えている。言い換えてしまえば、彼らが離反しても、学園横浜程度では中々止めることは出来ない。だからこそ、意外という驚嘆を込めた感想が出てくるのだ。
「離反の意思はなさそうだな。あいつは強いし、影響力も強い。その上でそこまでの有名人ではない。敵に居れば最悪だが、味方に居れば最高な野郎だ。」
こまめと言うのか、律儀と言うのか、しっかりと授業出席率も悪くなく、超能力研究にも積極的で、愛想の良さや芯の強さから着々と味方を増やしている公正がこの時限りでも味方に居るのは心強い。苦労の絶えない学園横浜生徒会に少し希望が沸いてくる。
「お次は…。序列第4位、マグネターこと神里海里がご登場だ。来ないと踏んでいたが…。柴田が上手くやってくれたな。」
公正よりとなった超能力者の中で最強格、海里は、物憂げな表情を見せながら仕方なくと言わんばかりに生徒会本部に向かってきた。
「いつだか行方不明になった3年生、その人を凄く慕っていたことは割と有名ね。その3年生を暗殺したの嫌疑がかかっているのがイリイチであることも。でも彼女はイリイチを完全に敗北を認めさせるのが復讐が完遂する時だと思ってる。不可能なことは不可能だって。」
次に入ってきたのは、駄々を捏ねながら、子どもみたいなパジャマを着て、男の泣き落としにも近い説得に折れた女子であった。
「序列第8位。いや、繰り上げで第5位か?まァいいや。冷気量を自在に変換出来る超能力者様のご登場だ。別件に追われているとタカをくくっていたが…。スバルって言う段階3が上手く助けてるようだな。」
「あのバカ女には今すぐにでもいなくなって欲しいけどね…。ま、有能なのを証明してくれるんなら水に流しても構わないわ。」
こうなると残りは2人だけだ。学園横浜屈指の実力者にして屈指の問題児。その片鱗を見せつけるように、時間に対してシビアな国として知られる日本の慣習に唾を吐き捨てるように、ルーズであることは上に立つ人間の特権であると言わんばかりに、予定時刻は刻刻と過ぎていった。
「………。」
メッセージアプリによって通話をかけ続けても、スタンプ連打も、トーク連打も反応はない。ようやく1行のメッセージが美咲の元に送られる。
「わるい ねてた 今から向かう 時刻13:37 」
予定時刻は13時30分であった。
遊ぶの面倒になった時あるある
「ごめん、ねてた笑」
はい。




