国家特別指定学園横浜校
今日も今日とて学園横浜は活発に動いている。今年度終了に向けて、生徒会も忙しいようだ。3学年に卒業証明書を発行し、中等部3学年の進学準備、中学校卒業と共に学園横浜に入学してくる者の整理。教員と手分けして行うにしても仕事は有り余る。
「今年からシステムがまた変わる。お上からのお達しだ。大きな変更点は定員人数の倍増。第2校の生徒を2分割して、本校と仕分けするわけだ。現時点の学園横浜総生徒は5250名。3学年卒業生と中等部からの内部進学が丁度同じ。第2校から2000名ほど。更にスカウト組から2500名ほど。およそ1万人。」
校舎の全てが灰となった第2校の廃校は正式に決定された。まさか序列第1位が1人で行った蛮行であるとは、口が裂けても言うことは出来ない。本校制度の終焉と合わせて、近年過疎気味であった学園千葉が学園埼玉に吸収合併されることも含め、一大プロジェクトは謳歌の時を迎えつつあった。
「学園横浜の正式名称も変更だ。創成学園横浜校から、国立特別指定学園横浜校ってな。バカみてェ。」
私立高校として扱われてきた「創成学園」全12校ではあったが、学生超能力者という危険な兵器に対する懸念の声は数しれず増えていった。昔のように報道規制と賄賂によって揉み消せる時代ではない。そこで折半案として、扱いに対して「日本国」が責任を持つ、国立高校として新たなる旅立ちを迎える。
「全データも書き直しだ。ったくよ。何が国立だ。弱腰の日本政府に創成の持つ権力を剥せるわきゃねェだろうが。」
アットホームな職場では暖かい言葉が飛び交う。創成は世界中の戦争に関与している。その関与で得られた多額の金と巨大な利権。それらが斜陽国家日本の税金を支えているのは言うまでもない事実である。
「国が指定した超能力者学園の1つだから国立指定。学園横浜はそのまま。創成を消して国立指定を入れただけ。なんの意味があるんだよ。」
「しゃあない。創成の印象は常に最悪だ。今までは大金でビンタして生徒を囲っていたが、なんでも超能力者養成技術を外部にお漏らししたヤツらがいるらしいからな。そちらに流れられれば難儀だ。」
日本国の1企業という枠を越えて、国家の方針にすら多大な影響力を持つ創成の重要な構成物質である全12校の学園は、名称変更及び吸収合併、生徒数の調整、とうとう総生徒市場価値第1位となった学園横浜が今年度10月頃に導入した超能力者開発指数の全校導入。それを乗り越えて新しい道を歩んでいくだろう。
「創始真理会の発展に向けて乾杯!」
新興宗教の前途は困難に満ち溢れたものであった。元々、日本という国の民はひとつの宗教のみを信仰するような厳格な文化は持っていない。神道と呼ばれるものがその最たるものであろう。だからこそあえて立ち上げた世界の救済を説くよく見かける新興宗教であった。だが、時節はその発展を決して許さなかった。カルト宗教による無差別大量殺人の記憶が新しいうちには、彼らは朽ちていく運命だった。
だが、心底諦めが悪い彼たちは狂信的に尖鋭を進めていき、やがて超能力を科学的に表した創成の技術を手に入れることに成功した。
創始真理会。驚異的な影響力を持つ会長のもとに、彼たちの世界に対する宣戦布告の手筈は整いつつある。
お、奥浪…。
 




