序列第2位 VS 序列第1位 第二幕
戦塵が舞い散り、爆発的な煙が塗れる。とてもではないが、たった2人の人間が起こしたとは思えないほどに、学園横浜が持つ辺鄙な敷地、それでも高校1つは建てられるであろう場所は荒廃に荒れたのだった。
「信じられない…。これが第1位と第2位の戦闘…?」
口を開けて放観していた海里の意識が現実世界に戻ってくると、その場所にはイリイチも翔もいないことに気がつく。しかし、遅れてやってくる爆発音は、どこまでも響いている。
「やっぱお前は強ェよ!翔ォ!」
「その余裕に溢れた顔ヅラへし曲げてやんよ!」
かすかに海里が見えた狂乱舞踊は、次元が違うという言葉以外に何も出てこないものであった。一挙手一投足がぶつかり合う度に学園横浜は巨大な揺れに襲われる。地上に於いても空中に於いてもその勢いは止まらない。
苦く乾いた笑いが止まらない。誰も掴むことの出来ないイリイチの深淵を、誰も見たことの無い翔の深淵を、互いが掴む寸前まで進んでいるのだ。
「結局…あの化け物どもにはかないっこないってな訳ね…。復讐は虚しいなんて言われても意味が分からなかったけど、あいつらは心の奥底から殺し合いを楽しんでる…。きっと、落ちたところで殺しても、勝ちは掴み取れない…。」
報復は連鎖する。それすらも笑って踏み潰す男の世界は、弱々しい恐怖とは無縁だ。曲がりなりにも学園横浜序列第4位まで上り詰めて、その地位と権力と力を全て復讐に捧げる思いを持った彼女は、そのシックス・センスを持った殺人鬼の異常な深淵を垣間見て、途方もない無力感に襲われる。
「どうせ、この狂った生徒会は私の存在を罪にしてしまうでしょうね。だったら…。」
身体の磁場を変更する。適応範囲は自分のみ。超強力である磁場は人間の細胞を破壊し、死に至るだろう。生きている意味を失った人間は退場するしかないのだ。
「おい!何してんだ!」
声が聞こえた。磁力を変更する寸前に。絶望に濁った黒い目は、そこに立つことが出来る資格の持つ男を視認した。
「何?なにって…自殺しようとしてた…。」
身も蓋もない言い草だ。もはや応答するのすらも投げやりとなってしまう。
だが目の前に立つ男は、それが本心から出た言葉ではないことを見抜いているようだった。
「自分にとって上手く行かねェことがあれば自殺。まるでガキの狂言だ。このクソにも劣る学園で死んで何になる?ヤツらが喜んでパーティするだけだぞ?」
自殺を止めたいと言うよりは、学園横浜、その生徒会が喜ぶ顔が見たくない。社会の役に立つ訳でもなく、超能力者産業の名のもとに世界中に戦争と不穏を運ぶことに疑問を持つ学園横浜序列第3位。
イリイチと翔が血肉を削り合う殺人合戦に終始している以上、彼が生徒会の指示なく走ってくるのは妥当な判断だった。
「じゃあどうすればいいのよ…?」
学園横浜高等部第二学年、今年度10月に導入されたPKDIの上位4名は、そこに立ったのだった。




