PKDI:RANK4 第2位"第六感"
「復活の気分はどうだ?我が親愛なる友人よ。」
「悪かァねェな。いや、最高だ。おう、最高。」
イリイチの復活と第六感の復活は全く違う意味を持つ。頭のネジが外れた精神異常者であり、大量殺人鬼として死刑になる以外に能のない男は、シックス・センスがあって始めて能があると言えるのだ。総ては時間の問題により起きた茶番であり喜劇。
アーサーも海里も、最初からシックス・センスが全開であればあれほどまでに苦戦することも無かった。それを含めても、彼らは悔やむことの出来ない存在ではあるが。
「施術を受けたからには経過を教えておく。まずシックス・センスは完全に復活した。左脳に僅か残った脳細胞を増殖させたことにより、時間制限もなしに。一般生活は、まぁ、多少は訓練が必要かもな。あと、人工脳髄は僅かながら残してある。最悪の場合はそれらがシックス・センスを除いた全ての演算を行う。あと好評だった黒鷲と金鷲再現超能力は遺してある。」
「いたせりつくせりだな。遠回りになってしまったが、まぁこうなるならそれはどうでもいい。そういや俺はどうやって病院に担ぎ込まれたんだ?あのマグネターに酸素を奪われて、ついで生命も奪われる予定だったと思うのだが。」
「いい疑問だ。高木昴は早速働いてくれたとだけ言っておこう。速度制御超能力は、万物を引き寄せる不条理に対して非常に相性のいいものだ。」
かなりの間の空いた起床は、腹が鳴くことよりも、喉が砂漠のようになっていることよりも、朝を感じることよりも、まずは煙草から始まるらしい。あれから3日間経ったとなれば煙草が湿気ることを嫌うイリイチがリーコンにねだることは当然のことであった。
「院内禁煙だ。屋上に行くぞ。」
薄着で出てしまえば、肌が寒いと嘆くような寒波はまだ続いている。胸に入った刺青も心做しか寒そうだ。
「さみィな。」
「2月だ。そりゃ寒い。」
風は兎にも角にも彼らから気力を奪い取る。それでもオイルライターの独特な金属音はそれらを打破してくれるのかもしれない。5℃とない寒色に満ちた空は、普段よりも遥かな煙が舞って消えていく。
「あァ。この感じ、久しぶりだな。人の意思が流れ込んできやがる。昔は無意識に慣れたけど、暫しは気分が良くないだろうなァ。」
「ま、取り敢えず、大智やイリーナには事後報告した。ちょっと前までお前さんは滅茶苦茶ピンチだったんだぜ。これ、これからの敵リストだ。」
ファイル共有アプリで送られてきた情報は、イリイチやリーコンに反感を持ち、実際に危害を加えるために行動している者たちだ。暗に自分の敵も纏めてイリイチに始末させようとするリーコンの意思は透けて見えるが、復活させて貰った手前、そこを否定しても仕方がない。段階4及び段階3の上位層の顔と超能力をある程度暗記すると、同時に煙草を灰皿に押し付ける。
「目の色が変わったな…。頼むぜ。」
何処か掴みようのない雰囲気は、かつてのような冷徹なものへと戻って行った。ロシアにいても、横浜にいても、東京にいても、彼の持つ異質な冷酷非情さと傲岸不遜さは、万に一つも代わりがない。




