最強VS最凶
「闘いの火蓋はきられた。学園最強、ロシア人イリイチ。学園最凶、日本人鈴木翔。数奇な運命に導かれ彼らは今こうして殺し合うのだ。」
破壊の代行者は怒っていた。かの暴虐なロシア人に対して。罪無き生徒を殺し、罪無き生徒会部隊を殺戮した。倫理的にも哲学的にも許す訳には行かない。
「やめてくれなんて言わないさ。言い訳もしない。お前の殺意は止まらない。止めることも出来ない。止められないなら俺が止めてやる。」
イリイチは雷撃を避けると、闘争を始める。
破壊のエネルギーは凄まじい。銃は飛び、剣は飛び、死体も飛び、飛んでいないものは彼らだけだ。
「キレる若者め。その能力をもっと有効活用しろよ。」
第六感によって回避し、避けきれないものは瞬間的に吹き飛ばす。彼の能力は進化する。危機に瀕せば瀕するほどに力を増していく。
「はははっ。自分が自分じゃねぇようだ。お前も俺に力を貸してくれるのか。」
中距離からの攻撃では仕留める所か強化に繋がることを察知した翔は、距離を詰めていく。
察知能力が使えない以上、何も考えず感のみで殴り合いをしなくてはならない。
「お前は言ったな。俺に殺意があると。その通りだ。正義は俺にある。正義のための暴力なら必ず俺は負けない!」
「くせぇこと吐いてんじゃねぇぞ!正義なんざ方便にすぎねぇ!」
殴り合いが始まる。第六感に頼りきっているイリイチはそこを崩されると弱いと思われていたが、やはり強い。殴り合いはほぼ互角のまますぎて行く。
一通りの訓練を受けていて、近接攻撃の仕方を熟知しているイリイチと、そんなものも関係なくただただ能力を上乗せして殴り続ける翔。彼らは互角だった。完全なる互角。100回やれば50勝50敗になるであろう互角。つまりは精神力がものを言う。
精神力と考えればイリイチは抜き出ている。酸いも甘いも切り抜けた歴戦の戦人。つい最近まで普通の学生をしていた翔とはその1点のみで勝っていた。
「チェックメイトだ!日本人。お前と俺は互角だ。互角だからこそ決着をつけなくては行けない。お前の負けでな!!」
「いらねぇよ!くたばりやがれ露助野郎!!」
完全に同時にジャブをいれ合うと、翔は倒れ、イリイチは精神力のみで立っていた。
「気絶やがったか…。くそ、あのライミーめ。俺達を演者に使いやがった…」
こうなればライミーだけは生かしておけない。奴を消すために向かい始めた時だった。
「本当に今じゃないとだめか?お嬢さん。」
「えぇ、不味いわね。ロシアからの客人。」
完全に拘束され全く身動きがとれない。イリイチの伝説は破局を迎えようとしていた。
「素晴らしい!さすが学年1位の秀才だ!君のことを生徒会会長に推薦しよう!!」
ライミー、ブライアンアーサーは興奮した様子だった。
「そんな推薦は要らないわ。私は借りを返しただけ。本当はもっと早く来るべきだったけど、時間は戻らない。さぁ彼を拘束して。」
アーサーは指を鳴らし、同時に生徒会内務委員部隊。チェッカーが現れる。
彼らはイリイチを拘束し、逮捕した。
「やぁ、気分はどうだい。劣等民族スラヴ人のイリイチ君。大人しくしていればこんなことにはならなかった。だが!大人しくしないなら、こちらとしても君を拘束せざるを得ないのさ!」
「そうかい…そうかい!ブライアンアーサー!美味しいところだけを食いちぎり、俺たちの闘争を台無しにしてくれてどうもありがとう。だがな、これで終わりだと思うなよ。数で負けようが意地では負けない。意地がなければ、未来もないんだよ!」
「気持ちよく吠えるなよ野良犬がよ!」
顔面に渾身の拳をいれ、鼻をへし折ると、またいつもの薄ら笑いになりながら
「内務委員会に伝達。彼はこの前の3年学年6位失踪事件の犯人であるということになった。君たちによって証拠を挙げろ!」
内務委員たちはこの世の中でも最も快感のある行為を行うことを命じられ、歓喜に沸いた。
「さぁ諸君。状況を開始せよ。」
自白って1番の証拠ですよね。




