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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
全ての陰謀を終わらせる陰謀
134/289

プラン アルファベット

「悩ましいことに、無限分身を利用した人口シックス・センス搭載の実験動物共(モルモット)は俺たちが使えるスロットだと同時生産可能個体は26が限界だ。そして好ましいことに、科学班の異端どもを屈服させれば、第二第三の分身を作ることが出来る。計画の責任者として君に聞こう。イリイチ!どうする?」

「とりあえず26体作れ。アルファベットで納まって丁度いい。プランアルファベットだ。月並みだけど、ま、名前なんざどうだっていい。内容も単調なものだしな。」

学園横浜に最近作られたラーメン屋にて、世間話をしているように見える2人の口振りは、その感覚に反比例する苛烈な実験の相談であった。イリイチは初めて食べる横浜家系ラーメンに舌づつみを打ちつつ、さらに美味しいものを頂くつもりだ。

「うめェな!ラーメンは。んでよ、人工的に搭載された脳髄には当然だが…。」

「貧乏学生の強い味方だ。そうだな。当然だが、互いで互いを怨んで最終的には1人しか残らないように設定してある。映画とかなら反乱を起こされるだろうが、そんなことはありえない。研究結果は随時お前の脳髄へとアップデートされる。楽しみにしとけよ?」

()()()()()()()()()()()()()()()ってな!」

参政権を持つものは2人。民主主義の観念から考えれば、多数派である彼らは正義だ。皮肉めいた嘲笑いを見せるイリイチの片棒を担ぐ()()の合わせた笑顔は意味深なものであった。

「ま、兎にも角にも始めなくてはな。戒厳を引いとけよ?正義のヒーローが助けにくるとも限りまい。」

「じゃあ今教えておこう。哀れな誰かさんの超能力解明は済んだ。26名の分身に付けたシックス・センス再現機能付き脳髄が起動するのは今日の0時頃。全校生徒5000人を数える学園横浜に一斉に展開する。誰も気づきはしない。なんて経って、性別、身長、体重、国籍、肌色、名前、全てをランダム生成したからな。」

「大掛かりな自作自演劇だ。素晴らしい。」

仰天にのたうち回るような壮大な喜劇は、結局彼らの小さな掌から落ちることはなかったのだろう。学園横浜という名の舞台装置の中には、この程度の思いもよらないことは幾らでもあるからだ。数少ない例外よりも、遥かな成功に目が向かうのは当然のことであった。

「大智には言わない方が得だろうな。あいつには妙な求心力がある。今は俺に向いている好感が変感されれば悪感となる。傍観していてもらおうか…。」

生命の恩人として密かに尊敬の意を持っているのかもしれない。今までの悪業を知った上で、イリイチのために走り回った彼に対して。だからこそ、自らの手で葬るような事態を引き起こしたくはないのだ。

「カッコいい野郎だ。偽善に塗れた学園横浜の糞の中で咲く1輪の華?見たいなものだからな。」

乾燥した空気の中に至れば、煙草の煙は白さを増していく。情緒溢れる寒波は、イリイチの故郷を思い出させる。過去には戻ることが出来ない人間として今をしがみついてでも生き延びるしかない。

「まだまだ死にたかぁねェな。」

不意に呟く一言は、イリイチの本音の本音であった。

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