最悪
人を殺すというのはそいつの人生を奪うことではない。そいつの人生を自分のモノにすることだ。
イリイチ。スラヴ人は殺し屋だ。依頼をうけ、依頼通りにこなす。簡単な仕事から困難な仕事まで、暗殺から大量殺戮までなんでもこなす彼の組織は、こういう界隈の中でも異色だ。極端なまでの平等主義は結果的に全方向に敵を作ることとなり、それらを潰してまた新たな敵を作る。一般人も警察も軍も政府も富豪も過激派もコミンテルンすら敵に回す。非常に異常な組織だった。
彼はそこで何を学んだのだろうか。人の殺し方やバラし方、銃の取り回し、尋問拷問。全てが早すぎて多すぎた。
「またこの夢か。」
寝起きがあまりよろしくない彼は、よく見る夢が原因ではないのかと思うようになってきた。現実味のある悪夢。第六感を失って今までの意趣返しをされる。悪趣味な悪夢だ。
そしてそれは現実にまで来ていた。東アジアの島にまで来て、第六感では感知できないバケモノを知った。彼がもし敵に回ることがあればタダでは済まない。
「んなわけねぇな。平和ボケしている日本人だ。一生平和ボケしてるだろう。」
自分を安心させ、タバコを咥えると今日はあまりいい一日にはなりそうにはないと察知する。
「学年順位1位と奴が接触…。例の仕事がバレる可能性大…。大智の護衛に着いた方がいいな…。」
察知したはいいが眠気は収まらない。こういう時は必ずいいことが無い。嫌な一日になりそうだ。
二度寝を開始する。 そうして起きた時には夕方を過ぎていた。
「大智は…酒に浸っているな。オーケー。敵性は来ていないな。オーケー。あのライミーも居ないし、大丈夫か。」
やることも無いが、外に出る。昔からの習性だ。外に出ないと一生出ない気が湧いてくるのだ。
ロビーに行き、なにか楽しいことがないかと物色していたら楽しいことは起きた。喧嘩だ。
片方は男。身長は180cmほど。能力は身体強化系に振られている。もう片方は…これは強いな。女だが、糸で攻撃、防御、回避、拘束、なんでもできるバケモノだ。
予想通りにことは進んだ。糸で硬直した男は逆上して殴りかかるも、あの日本人に行動不能にさせられた。
破壊の皇帝はやはり感知ができない。2人は話すとどこかに消えていった。
ライミーは関心した様子だった。奴の性格から考えるに、俺とあいつをぶつけさせたいのだろう。
屈辱の極みだ。舐めやがって。
そして今日が運のない一日だと確信するのはそう遅くはなかった。
秘密警察がそこら辺にいやがる。自分の力で解決できないのならば、生徒会に頼めばいい。この学校のルールだ。
ここで殺るのは忍びない。場所を変えよう。金の発生しない仕事だが、依頼人の秘密保護は絶対だ。仕事はまだ続いている。
「よぉ!雁首揃えた無能共!そんな尾行で俺を知れると思ったら頭が悪いなぁ!」
郊外に言って聞こえるように大声で忠告する。
「瞬間移動で首を切ろうってか?考えることがしょぼいんだよ!」
顎に1発御見舞して、ナイフを奪う。いやナイフというよりは刀だ。
「日本刀か!大好きだ!素敵だ!」
渾身の力で切りつける。綺麗に2等分は出来ないものの、息も絶えつつある。
「かかってこいよ!糞ジャップ!!」
銃弾を華麗に避け、挑発する。挑発に乗るかは別として、銃弾ごときでは俺を殺せないのを察知して近接攻撃を仕掛けてくる。
「弱いってのは悲しいものだな。お前らは今日1番哀れな糞袋だ。」
日本刀の切れ味は凄いものの、脂がついて切れ味が悪くなる。また適当な刀を拾い、集団殺戮を開始する。
「い、嫌だ!殺さないでくれ!」
哀れな糞袋は哀れな戯言を吐く。根性が足りねぇ。
「聞こえなかったぜ。」
胴を切ると哀れな彼らは神の救いを得た。
「惨めな野郎どもだ。見せしめに生徒会本部に首でも飾っておくか。…やっぱり最悪な一日だな今日は。」
正義のヒーローはやってきた。殺意全開で。破壊の皇帝は、今まさに俺を破壊しようとしている。
「6個目の感覚。第六感。まさに神の力。神の代行者は今、破壊の力、破壊神の代行者と殺し合いをしようとしている。」
生徒の要請で渋々兵隊を派遣したライミーは同時にジョーカーも用意していた。
「最も最悪な一日の終わりの始まりだ。」
 




