ギーク
「おーい。おーい。居ないのかァ。」
学園横浜に隣接する生徒寮。その中で最も異質な雰囲気を放っている部屋の前には情報を求める男がいた。メッセージは反応無し。インターホンにも反応はしない。彼が知っている彼は年がら年中部屋から出てこない彼だ。ドアを破壊する勢いで蹴りをいれ、強行的にお邪魔することにした。
「お邪魔しまァす!おい!リーコン!なにシコってやがんだ!!」
「オ〇ニーぐらい好きにさせろ!プライバシー侵害だ!」
「お前にそんなものは必要ない。何だこの動画!なんで女装?そういう趣味なのか?」
威風堂々とした彼の息子とは対象にリーコンの表情はあまり宜しくない。どうやら趣味の時間を妨害されたことに怒り心頭の様子だ。
「他人の性癖なんてどうでもいいだろうが!仕方ねェだろう!未来は女なんだから!」
「そんなにキレるなって。メッセージに一言、シコってますって送れば待ってたってのによ。情報探求の時間だ。名前は…。」
「山下優希。学園横浜超能力者開発指数、通称PKDIのランク4。順位は8位。超能力は冷気量自在。以上だ!」
汚濁の混じったティッシュをイリイチに投げ、それと同時に情報は既に調べついていることを報告した。
「流石だな!」
「お前は時々本当に殺したくなるよ。やっぱアーサーに殺さしとくべきだったか…。」
冗談とも思えない口振りだ。仕方がないと思ったイリイチは喫煙者を黙らせる方法として最も有効的な1本を渡す。
「悪かったよ。ほら、1本やっから落ち着け。」
手馴れたものだ。マルボロソフトから飛び出た1本をリーコンは手に持ち、咥えて火をつける。煙を出して落ち着いたのを見計らい、イリイチも全く同じことをする。
「俺に搭載された人工脳髄のことだがよ、シックス・センスの制限時間を引き伸ばす有効的な手段はないか?」
「現状はない。お前の脳髄のリソースの大半はシックス・センスを制御する計算回路で締められている。再現するための計算は中々縮められないのさ…。多分だがアーサーとの闘いで、金鷲を表した緊急回路が動いただろう?あれを無くしてもいいなら…。」
「いや、結構気に入ってるからな。むしろ、普段の身体強化を無くしてさ…。あの金鷲状態を作動させることは出来ないのか。」
リーコンは首を捻る。15秒の制限ありきで設計された人工超能力を、1時間を越える汎用身体強化と替えるのは困難を極めるからだ。少なくとも学園横浜のみの科学力では限界が見える。
「とりあえずはその状態に慣れることだな。ハッキリ言ってしまえば、左脳全てをそのままそげ代えた超能力者は前例がない。人間の身体を機械で制御するのは危険で難しいことなんだよ。ましてやシックス・センスだぞ。横浜がその能力を研究するためだけにかけた額を知っているだろ?お前ら兄妹だけでも75億円の契約金。お前を非合法司法取引で釈放させるために100億円以上。さらに…。」
「ま、俺はまるで応えていないがな!」
呑気な答えに乾いた笑いを飛ばす。リーコンの出世道具は随分と手入れが難しいようだ。そして彼は何かを思い出したかのように、目を開きパソコンに向かう。
「まてよ…。人工シックス・センスは非完全ではあるが完成している…。実験動物を用意してデータを取らせる…。最後まで生き延びたヤツのシックス・センスは…。」
リーコンの閃きによる理想値は、イリイチが求めるシックス・センスの次元を満たす次元にたどり着く。オタク野郎ではなくオタク野郎としての彼の瞳は輝く。
「イリイチ。お前のシックス・センスはなんとか出来るかもしれない。詳細と予算案は後で連絡する。じゃ、あの小物と闘ってこい。」
急な話に整理が追いつかないイリイチを尻目に、リーコンは計画設計に没頭するのであった。
いくらなんでもやりすぎだとおもう(KONAMI)




