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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
グレート・ゲーム
122/289

無謀

あるいは、それは、おそらくは。

頑張ったと言うから終わりという訳にもいかないのだ。2人の世界は混じり、それは歓喜に等しいものなのか、将来の破綻という虚しいものになるのか。

「苦しいか?それは苦しいだろうな。思えば、私はお前を倒すだけために布石を打ち続けてきた。もう1人のシックス・センスの確保。それを成し遂げるための超能力者の利用。横浜と本校の対立を生み出すための茶番。狼狽えたような私の表情。勝ち誇ったような高橋の顔。第2校の強行攻略。その後に起きた横浜の団結。そして今。今が全て。シックス・センス、いや、イリイチを打破するためのたった1度の機会。それに全てを捧げて、その一瞬のために…。」

なんとも物憂げな面持ちに、寂しげな語り口は、アーサーの将来がもう存在しないことを表していた。本校の物理的な壊滅状態や第2校の崩壊、駒を持っていない彼は、横浜との戦争には負けたのだ。

「大願成就の夜は終わり、残るものは私自身だけだ。私が造った陰謀は私が終わらせなくてはな。」

彼の復讐は、目の前に横たわっている、かつては恐怖の象徴、今となれば哀れな死せる豚、イリイチを打ち倒すことにより終わりを告げる。

「じゃあな。糞野郎。」

鎌を使い、首を削げ落とそうとした所で、アーサーが感じていた違和感の正体が現れる。血の繋がりというのは何処まで行こうが強い。たとえその関係は半年に満たないものであろうと。子どもの持つ無邪気な感性に限りなく近い()()()()()()()行われたことであろうと。

「…あ?」

身長が160cmにも届いていない少女が持つには不相応である50口径の拳銃は、シックス・センスの補助によってアーサーの肩の細胞の1部を焼き払う。

「イリーナ!当たった!多分効いてる!」

「うん。早くイリイチを助けよう。」

咄嗟に2人の座標に向けて突撃していくアーサーを尻目に、空間移動が作動を起こし、イリーナと若葉は全く別の座標に立つ。

「…空間移動系超能力者か。10歳かそこいらのガキにしちゃやるじゃないか。」

だがそこが限界である。若葉の空間移動超能力は、才能は途方もないほどに高いものの、それを計算する脳が完成されていない。自分ともう1人を同時に空間移動させるには若干のタイムラグが発生する。獰猛に向かってくる金獅子の威圧感に少し恐れをなして、自分だけは座標変換を行ったが、イリーナの座標変換演算を同時にこなせなかったのだ。

「…なるほど。こいつがイリーナ。ご機嫌じゃねェか。学園横浜のプロスペクト第1位と第2位のお出ましか。」

「あなたが誰かなんて知らないけど、イリーナだってシックス・センス使えるからね?」

意思を掴み取ることにより、最小限の動きでアーサーの繰り出す攻撃を避けていく。1度でも当たれば即死確定の状況でも、まるで応えてはいない。

「若葉。イリイチのことを頼んだよ。」

「他人の心配してる場合か?クソガキがよォ!!」

金獅子と化したアーサーの欠点として、冷静さが失われるということがある。普段の紳士的な態度は消え、目の前にいる幼き少女を殺すためだけに攻撃の応酬を繰り返す。

チェックメイト(王手詰み)だ。クソガキども。おい!そこのガキ!珍しいものを見れんぞ!人が殺される瞬間だ!よォく見ておけ!」

奥まで追い詰められて、イリーナは何も出来ずに、アーサーによる慈悲なき虐殺を待つだけとなった。

「っ!イリーナァ!」

感情の爆発、それは状況を一変させる。死を待つというのに眉1つ動かさないイリーナの剣呑な態度は、若葉の超能力を一瞬だけ進化させる。

(観察)六感でロックオン

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