散りゆく紅葉
皆様こんにちは!スノーフレークです。評価や感想を書いてくださるととても嬉しいですし、次話を書く励みにもなります‼図々しいですが、是非ともお願い致します
くじ引きで相手が決まる。私が引いたくじは32だった。同じ32のくじの人を歩き回って探す。
「ええと…。32番の人ー、32番の人ー」
大きな声で言いながら探す。
「はい。私は32番です。」
凛としたよく通る声が後ろから聞こえ、振り返ると、頭の上の方で結わえたポニーテールに、白い肌、黒い若干吊り上がった大きな瞳の美少女が立っていた。
「あら、私の相手は山川さんなの?楽勝じゃない、100枚全てとれるわよ、こんなの。」
見下したような表情で美少女は言った。
美少女の名は松浦 夕。夕を一言で表すと「残念美人」。凄く可愛くて、お金持ちのお嬢様、勉強もスポーツもできて完璧なんだけど、いつも人を見下している。正直関わりたくない。百人一首で勝てる気がしない。なぜなら彼女の母親は松浦 凪、10年前からずっとクイーンをとり続けている人だ。
(でも、最初から弱気になってちゃ何もできないよね!)そう思い直した。
「松浦さんに負けないように私も頑張るね!」
それは夕に言ったと言うより、自分自身に言った。絶対に夕から一枚は奪う。このまま見下されてばっかじゃ嫌だ。古典への興味は正直薄いけど、やるからには本気でやる‼
全員が百人一首のペアを見つけた。先生が百人一首を読み上げる。
「古のー」
ええっと…、これに続く句は「けふここのへに」だ!その札を目指して手を伸ばす。その札に手が触れると思った瞬間、その手は空を切った。
何がなんだかわからないまま前を向くと、夕が「けふここのへに」の札を持っていた。悔しい。
先生は次の句を読み上げる。
「花の色はー」
えっ、何これ?聞いたことない!もう少し真面目に古典を覚えておけば良かった。
「パシッ」
乾いた音が目の前で鳴り、顔をあげると、夕は「わがみよにふる」の札を手にしていた。完全に流れが夕の方に行っている。なんとか流れを変えなくちゃ。次に先生が読み上げた札は…
「山川にー」
あ!これだけは私がとりたい。私が一番好きな札を夕にとらせやしない!私の手はまっすぐ一つの札に伸びる。まるでその札だけにスポットライトが当たっている気がした。私は夢中になって、呼吸すら忘れて手を伸ばす。
「パシッ」
乾いた音が自分の手元から鳴り、嬉々とした表情で手元へ視線を移すが、私の手の下にあったのは、札ではなく畳だった。視線を上げて夕の手元を見た。その手にはしっかりと札が握られていた。私はただただ呆然とすることしか出来なかった。時間が止まってしまったかのように感じた。
その後の事はあまり覚えていない。気がついたら0-100で勝負は終わっていた。
「紅葉姉さんは頑張ったよ」
そうさくらが慰めてくれたけど、だからといって悔しさが紛れるわけではない。さくらは対戦相手との勝負に勝って、2回戦へ進むことができるが、私は一回戦で負けてしまった。
優しく慰めてくれたにも関わらず、嫉妬や悔しさなどの負の感情が沸き上がって来てしまい、つい口をついて
「うるさいな‼勝ち進めたさくらには私の気持ちなんてわかんないでしょ‼早くどこかに行ってよ‼」
と言ってしまった。
「わかったよ姉さん…。」
そう言って踵を返したさくらの傷ついたような顔が焼き付いて消えない。後悔した瞬間に自己嫌悪や罪悪感に蝕まれていった。




