表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1枚のカード  作者: スノーフレーク
1/5

ちょっと長めのプロローグ!

 はぁ、なんで誕生日に学校に通わないといけないんだよ。私は重い道のりで駅へ向かう。めんどくさい。

ふと、隣に居る自分の妹を見ると、満面の笑み。

「なんでさくらはそんなに元気なの?」

そう聞いた。だって、今日は私とさくらの誕生日、その上今日は日曜日。

なんで私たちが日曜日に学校へ行くかというと、百人一首大会を開くからだそうだ。正直、どうでもいい。勝手にやっててくれ。

「ふふ、私もお姉ちゃんと一緒で古典が大好きだから、楽しみなんだ~」

 そうだった。こいつは、かなりの古典好きだった。でも、私は古典が大好きだなんて思ってないし言ってない。

ただ、百人一首で好きな歌もある。

「山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあえぬ 紅葉なりけり」

 思わず口ずさんだその歌は、私にとって特別な歌。

駅のホームで電車を待っている間、ずっとさくらは百人一首を暗唱していた。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォッ」

 爆音と冷たい風を連れて、私たちが乗る電車がやって来た。

深い黒のさらさらした髪が、風に揺れる。

「プシュー」

 大きな音がして、ゆっくりと電車の扉が開いた。

革の鞄を腕に持ち、電車へ乗り込む。

 そうして電車は走り出した。

ふと時計を見ると、午前8時ちょうど。なるほど、どうりで人が多いわけだ。通勤ラッシュということか。

(こんな日曜日に、通勤なんて大変ですね。)

そんなことを思いながら、スーツを着たサラリーマンを見つめていた。

真冬なのに、人がいっぱい居る車内は暑く感じた。

 午前8時15分、学校に一番近い駅へと到着し、降車した。

車内では暖房が効いていて、しかもぎゅうぎゅう詰めだったから暑かったが、電車から降りてみればやはり1月、身を切られるような寒さや吹き抜ける北風。

私の紅葉色のマフラーとさくらの桜色のマフラーを揺らした。

さらさらの髪も風に流され、桜の香りがふわっと香った。

ここから学校まで徒歩3分。あまりの寒さに言葉も出せず、黙々と二人で歩き出した。

歩き続けて、やっと「私立夜半月学園(しりつよわつきがくえん)」の文字が見えた。

「ガラガラガラガラ」

重い門を開けて、急いで校内に入る。そのままスカートを翻しながら、1年紫組(むらさきぐみ)の教室へと走る。

「ガタンッ」

乱暴にドアを開け、教室へ入った。と同時に、予鈴が鳴り響いた。

急いで鞄を片付けて席へ座る。時計を見ると8時23分、あと2分で朝の会が始まる。

早く始まらないかなと思いながら、秒針が規則正しく廻るのを眺めた。

(あと5,4,3,2,1…0!)

私が0と心のなかで呟くのと同時に先生が入ってきた。この人の頭の中には時計が入っているのだろうか…。

先生は言った。

「いよいよ百人一首大会ですね。それでは今から和室に行くので出席順に並んでください。」

緊張する頭に酸素を送るべく精一杯深く息を吸った。新鮮な空気が肺に入っていく。

一歩一歩進んでいくと、和室の扉が見えた。廊下の端に上靴を脱ぎ揃えて、再び整列し直す。

学級委員長が和室の扉をゆっくりと開けると、畳の香りがした。

畳には、百人一首が並べられていた。



さあ、百人一首大会の始まりだ‼

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ