【設定】
現時点での設定を置いておきます。
読み飛ばしてなんら問題ありません。
【登場人物】
・レン
主人公、十七歳。
失敗したり、成功したり、かと思ったらやっぱり失敗したりしている。
強い主人公は好きです。
敵に勝つ主人公も大好き。
ただ、弱くても勝てなくてもお金がなくても、主人公は主人公らしければそれでいいと思う。
強くさせてあげたいし、勝たせてあげたい。頑張れ男の子。
でも正直ヒモになるのはどうかと思う。
・奴隷少女
もう一人の主人公兼ヒロイン、十七歳
青みがかった銀髪に、使い古しの貫頭衣を纏った美少女。首輪を外すと髪が紫になる。不思議だね。
謎の塊だった当初と比べて、だいぶ背景が透けてきた。
ミステリアスな感じが薄れてきて、その代わりに血肉が通って見えるようになっていればいいなと思います。
この子の過去は、大概暗い。奴隷というキーワードを入れている限り、明るくなるわけがない。
フラグの立ったような、そうでもないような。現状、プライベートに踏み込ませないという点においてはまだまだ鉄壁。作者が必死になって兄というキーワードでさらなるフラグを建てようとしたら、まさか妹にフラグを投げ渡すということをしでかしてくれた。
登場人物の名前がほとんど出揃ってきた中、断固として名前は出さない。まだその時ではない。
・女魔術師
断固として名前は出さない、その二。まだその時ではない。
ヒロイン、十六歳。年下の先輩というおいしい属性持ち。いままで周囲が年上のよくできた人間ばかりだったため、同世代の男子への耐性がゼロ。なまじっか強いものだから危機感もない。
どっちのヒロインルートかはまだ決まっていないので、サブと正とかの区分けはされていない。
レンのことが気になっているような、そうではないような、やっぱり気になっているような。
そんな微妙な心情に揺れてる時、女剣士と一緒に住んでいる家に、おおよそ十年ぶりに兄という名の変質者がノコノコと顔を出したのでブチ切れて家出をした。
市内のホテルに泊まっていたが、信じられないことに次の日の朝に、兄という変態が勇者の立場と権威を使って宿泊先を特定してお出迎えに来るというストーカーぶりを発揮したため、怒り狂った挙句に理性と羞恥心が吹っ飛んでレンの家に転がりこんできた。
プライベートを晒さない奴隷少女ちゃんとは真逆に、レンのプライベート空間に直接押し入るという驚きのチョロインぶりを発揮するあたり、さすがとしか言いようがない。
つまり次の章は女魔術師のターン。ヒロインとして本気を出す時が来た。
目指せ「なんでハーレムルートにしなかった」と言われるラブコメ。
・イチキ
レンの次に初めてちゃんと名前が出てきた少女、十六歳。
奴隷少女ちゃんの血のつながらない妹。身内には全力で尽くすタイプである。
首にはチョーカーを付けた、異国の装束。イメージとしては、和服というより漢服。天女みたいな感じ。巫女さん少女でも別にいいんですが。
二系統の概念形式を修めた高位の魔術師。特に結界の構築は超一流。イーズ・アンにこそ敗北したが、相手が悪かった。準備を整えて勇者と戦えば八割がた勝てるほどには強い。
祖国は大陸の東にあるという大国。イーズ・アン曰く「故国より放逐に近く拐され」たらしい。
普段はかわいげの塊みたいな少女だが、歩んできた過酷としかいいようがない人生経験から、敵対者には一切の容赦がない。
姉に過保護。妹だから姉を守るのは当然のたしなみである。血縁じゃないんだよ。姉妹っていうのは関係性なんだよぉっ!
女魔術師とはちょっと話しただけだが、学術論議ができる同世代は貴重。また会えたらいいな、友達になれるといいなという淡い期待を持っている。そして姉からキラーパスされたフラグが頭に刺さって、ちょっぴり「兄に似ている人」とやらが気になっている。
別にヒロインにする予定はなかったんだけど……さて。女魔術師と非常にいい感じの関係を作れそう。
・ウィトン・バロウ
勇者、三十代前半。
聖剣を、抜いてしまった青年。
人々の願いに背中を押され、革命を成功に導いた。それが本当に彼の意思であったのか、問うものはいない。
彼のおかげで救われたものは多く、それゆえに彼のせいで失ったと恨むものもいる。
お人好しで人の好意を疑わず、そのせいか、昔から空気が読めない。
もとから鈍感の類だったが、勇者になってから彼の傍に付けられたのが、よりにもよってイーズ・アンだったために決定的に悪化した。彼女と一緒にいると勇者は常にフォローする側になるので、自分が成長して空気を読めるようになったんだと勘違いしたらしい。
いまは聖剣を持たずにいる。
彼一人だけのことを思えば、聖剣なんてものは抜かなかったほうがよかったのだろう。
・イーズ・アン
ちょっと何を言ってるのかよくわからない人、二十代半ば。
教会に所属する修道女で、原典主義者の過激派。世界トップレベルの実力者の秘蹟使いで、ようするに世界トップレベルで頭がおかしい。世が世ならただのテロリスト過激派になっていた。
はっきりいって勇者よりはるかに強い。
信仰の壁の強固さ、浄化の光の破壊力、神の加護の発露たる補助、聖句による様々な恩恵。どれをとっても異常。
現実に即した知識体系を基準とする魔術と違って、彼女が信仰する一神教の原典に『距離』の概念定義はない。祈った瞬間に信仰は神の御許へ届くもので、神が地上に力を与える時に距離という概念は勘案されず、障害も存在しえない。だから祈りに距離はないとかいうトンデモ理論が彼女の中では破たんなく成立している。
「え? いや声も魔力も届かないのに聖句が発動するとかおかしいよね」とか下手に現実的な思考が挟まるとこの理屈は成立しないので、現実を見つめることを止めたちょっと頭がおかしい人にしか使いこなせない類の秘蹟である。
一応理屈を通せば、秘蹟の力の元である『神秘領域』に祈りで接続し、そこを構成する共通認識(つまりは唱えた聖句)を通して特定個人へと聖句の効果を発動させている。つまりは「人間がパソコン」で「神秘領域がサーバー」で「祈りが回線」で「共通認識が共用クラウドストレージ」で「聖句がウィルス」みたいな感じ――とかいう設定をいまつくったんですけど、この世界ではまだ未解明なので作中で解説はなし。
秘蹟使いの性質上、最高位の秘蹟である『玉音』を防ぐ術を持たないので、革命時には勇者を必要とした。勇者のことは聖剣の付属品だと認識している。
革命時に勇者の補佐をするという功績を上げたので、教会が『聖女』というシンボルに仕立てあげる。
まずは修道院でも任せて権威付けをしようとしてみたら、極度の清貧を強いて二週間で施設の人間全員を餓死寸前まで追い込んだ。こいつは人の上に立たせたらやばいと都市の教会に隔離。ダンジョンの蓋役を任じられる。
人類すべては唯一神のもとに平等であり、神に仕える気がない人間は人間ではないと思っている。神に仕える人間であっても平等なので、基本的に認識の区別をつけない。つい先日、聖剣の付属品が聖剣を持たずに会いに来た時、そいつが誰だか認識できなかった程度には他人というものに価値を認めていない。
ただなんの奇跡か、話の分かる後輩ができて、最近、ちょっとだけ嬉しい。
・ファーン
常連シスターさん、二十代半ば。
まったく興味がないことでも必要とあらば誰かと話を合わせるためだけに勉強できる人。
人を癒す治療のためにシスターになったから神学には一切関心がないのだが、無表情の先輩と話を合わせるためだけにいろいろ読み込んだ結果、無意味にいくつかの秘蹟を使えるようになってしまった。
神殿にいるデスコミュニケーションの極みみたいなとある先輩については、怖いけどすごくできる人だし悪い人じゃないんだよな、髪形変えたら褒めてくれたし、と思ってる。
・ジーク
秘蹟使いのリーダー、三十代後半。
勇者が聖剣を引き抜いて勇者になる前に、彼と同じパーティーを組んでいた。
明らかに手遅れな勇者の様子を見て、家族との時間はしっかり確保しようと決意した。
・アルテナ
女剣士、二十代後半
勇者が聖剣を引き抜いて勇者になる前に、彼と同じパーティーを組んでいた。
勇者のことなんて全然好きでも嫌いでもなんでもないが、しいて言うなら雨上がりの道端にできた水たまりに頭を突っ込んで溺死してくれると嬉しいなとは思っている。
・ディック
弓使いの先輩。二十代前半
主力の中で唯一、勇者と関わりがない。つまり平和平穏。
・ボルケーノ
アニキさん。
たぶんみなさんが思っているよりは、ずっと強くてすごい人。
・ストック
スキンヘッドの大男。
レンより強いんだよなぁ……。
・錬金術師の青年
失恋の反動で研究に没頭している。
・十リンの女の子
男の子とは仲直りして、時々おうちで一緒に勉強してる。
・騎士さん
頑張ってる。
・ボーイソプラノの少年
奴隷少女ちゃんとイチキの、血のつながらない兄。
・強さ順
ぜんこうてい>イーズ・アン>イチキ>勇者≧ボルケーノ(アニキさん)>>女魔術師≧アルテナ(女剣士)=ジーク(リーダー)=ディック(弓使いの先輩)≧奴隷少女ちゃん>ストック(スキンヘッドの大男)>レン
ぜんこうていは強いというか、『玉音』の秘蹟に抗えるものがほとんど存在しないため、負けようがない。
ただし勇者の聖剣はぜんこうていへの特攻持ちで玉音を完封できる。聖剣すごい。
・女性陣の背の順
アルテナ(女剣士)>170㎝>ファーン(シスターさん)>イチキ>160㎝>女魔術師>イーズ・アン=奴隷少女ちゃん>150㎝
・女性陣の胸囲順
イチキ>ファーン(シスターさん)≧女魔術師>アルテナ(女剣士)=奴隷少女ちゃん>イーズ・アン
いやだって感想で聞かれたから……。あくまで胸囲だから、身長と合わせてるとまた印象が変わるかも。ご想像におまかせしませう。男の方は、レンの身長が170を越えているくらいとだけ。
【設定】
・魔術
人が積み上げた知識体系が人々の魔力によって固定化し、ダンジョンのようには物質化せずに固有の力場として形成された。「英知界」と呼ばれることもある。
学識を得ることによって、この英知界に接続し、現象としての魔術を操ることができるようになる。
文明と思想の数だけ力場が形成されるため、様々な魔術がある。学識を深めればより多くの魔術を使えるようになるが、学問ができるから強いと限るわけではない。
様々な学問の中にたまたま戦闘に利用できる魔術があるだけなので、戦闘を専門的に学ぶ学問も別にある。戦闘に有用な魔術を使えるように体系付けて効率よくまとめられたものが『近接魔術』であり『遠距離魔術』。女魔術師は、これをとことん効率的に学び実践していった。
対照的にイチキは自分の祖国といまいる国と、二系統の文明で発展した学問を包括的に学んで自分なりの戦闘術に落としこんでいる。どちらかと言えば学者が戦えるようになったタイプ。
・方格規炬四神鏡
イチキが結界術でつくった閉鎖世界。世界を観測する術を持たなかった古代王朝での模擬世界観を表した祭具を媒体に、対象を結界術で創造した『小さな世界』に閉じ込めて惑わせる。
元ネタは古代中国の世界観を表現した祭具『方格規矩四神鏡』。ググれば詳しい説明が出てきて、中二的に楽しい。
本来の「矩」を「炬」としたのは、イチキが世界を直線的なものではなく曲線的なと理解して、中心に太陽を置いてるから。というのは後付けで、変換で「矩」って出てこなかったんですよ……。
・秘蹟
祈りによって神の力を希い奇跡を起こす術、と教会は主張している。
いまほど学問が発展していない時代、人間では理解できない事象への解釈が教義教典によって積み重なって共通認識へと昇華され、人々の魔力によって定着。『神秘領域』という概念領域が生まれた。そこに祈りという名の魔力行使で接続して力を引き出すのが秘蹟。ぶっちゃけ、原初の魔術の一つである。
その現象を教会は「神の御業である」として発展させていった。
のちのち秘蹟以外の魔術が発展するうちに「魔術と秘蹟に違いって大してないのでは」と思ったとある学者が「秘蹟は神の力の行使ではない。魔術と変わらず、人々の魔力により定着したものを利用しているだけだ」と主張したら、直後、とても痛ましい事件が起こった。
教会はこのような不幸な事件が二度と起こらないといいですねという声明を発表し、以来、ありとあらゆる学会は教会内部の神学論に触れないようにしている。
学術が発展するにつれ、多くの人々がうすうす秘蹟と魔術に違いはないと気がつき始めているが、この世の真実と教会の絶大なる権威は別問題なので、誰も口に出さない。イーズ・アンみたいなのがいっぱいいるのが教会なのである。
この国では一神教としての神秘領域が形成されているが、世界全体を見れば精霊信仰だったり多神教信仰だったり学問とごっちゃになっていたりする。
解釈違いではない神秘領域の存在は教会にとっては都合が悪いので、まとめて全部異教徒扱いである。
人類では未解明の部分を未解明のまま現象として発動できるという意味では、間違いなく奇跡であるとも言える。
・汝、その身を示せ
聖句。
常連シスターさんが口ずさむと、風邪をひいた時に喉を押されて「痛くない?」って優しく問診する感じになる。
イーズ・アンが唱えると、問答無用で喉を絞め上げて「苦しかったら異教徒。放してほしくば改宗しろ」になる。
ちょっと何を言ってるのかわからないので、イーズ・アンから聖句を食らわせられたイチキが状況を理解できなくてもしかたない。
聖句は共通認識を通して発動しているので、聖句を知らない人間にはそもそも効果が通じないという欠点はある。
イーズ・アン風に言えば「愚かにも神の御心を知らぬものはその恩恵は与れない」。そのためか、教会はとても布教活動に熱心である。教区圏内で有名な聖句を知らない人間は、ほとんどいない。
・ダンジョン
人の感情が魔力によって固定化され、物質化した概念空間。
なぜ国が軍を置いてダンジョンの対処しないかといえば、ダンジョンでお金を稼げるからである。
お金稼げるならなおさら置けよと言われるかもですけど、これを突き詰めると、税金いらず、あるいは非常に安上がりの軍隊ができる。軍国主義の理想。当然、軍部が増長する。自分たちでお金を稼げるものだから、行政の言うことを聞く必要性がなくなる。命もかけずに後ろでわめいているだけの連中の言うことをなんで聞かなきゃいけないの、意味わかんない、と本気で思って軍部にとって政治家の存在意義が消え失せる。
そうすると、よくて都市単位で行政機関を武力制圧して独立都市国家を名乗りはじめたりする。悪くて国家を転覆させてガチガチの軍国主義になった挙句、世界征服とか企み始める。
そうすると、戦争がはじまる。
戦争は負の感情のるつぼであり、戦場は大規模の命のぶつかり合いになる。
戦闘の後には、大体、非常によろしくない感情の寄り集まった善意の欠片もないダンジョンが出来上がる。だいたいは、このタイプのダンジョンの対処で軍国主義の拡張は止まる。善意がないということは恩恵がないので、この手のダンジョンでは一切お金が稼げない。浪費しかない戦闘になる。
それすらもうまく対処して世界征服を順調に進めると、人々の中で一定以上に膨れ上がった『世界征服理念』がどこかのダンジョンで結集して、『世界を征服するための魔物』が生まれる。
つまるところの『魔王』である。
・魔王
魔王が生まれると、世界全土のダンジョンが魔王のもとに組織化する。
ダンジョンは都市部には必ずできるうえ、戦争の影響であちこちにダンジョンが生まれているもんだから世界に魔物があふれ始める。人間がいる限り感情は消えないので、魔物も消えない。都市部と地方の両方から魔物が攻めてくるので、割とどうしようもなくなる。
もちろん魔王は世界を征服するために生まれたので、容赦なく人類を滅ぼしにかかる。
そして人類が敗北しそうになると、追い詰められた人類の『人々の魔王打倒の願い』によって、勇者が生まれる。
・勇者
人類を滅ぼす魔王から人類を救うための存在。
皇国の勇者は、あくまで一国の勇者であって、世界規模の勇者はまた格が違う。
マッチポンプとしか思えない大陸規模の所業を人類史で勇者と魔王の決戦を三回ほど繰り返した後、ようやく人類も「世界征服はまずい」と学んだ。
そうして魔王が生まれなくなり、勇者も本来の意味から少し変わり、人々の願いによって生まれた秘蹟を振るう存在が勇者と呼ばれるようになっていった。
以来、根本的な対処として、ダンジョンに軍隊は置かずにおこうと判断。
そもそも行政をつかさどる政治家としては、財布のひもを握れず、ゆえに自分たちでコントロールできない軍隊とか傍に置きたくないのである。軍に反旗を翻された政治家って、大体殺されるし……。
だからどの国の行政も、教会と民間に任せつつもダンジョンの戦力はできるだけ最小単位で区分けしている。
その結果が『冒険者』である。
・冒険者
ダンジョンに入って悪意によって生まれた魔物を倒し、善意によってうまれた恩恵を収集する。
ただ民間で戦闘集団の拡大とかシャレにならないので、冒険者を組織化させないことに関して、お国はマジで容赦がない。現状、パーティーの最大人数は九人。別パーティーとの連携も、一切許していない。冒険者に対する監査の目は、とても厳しい。もっと減らそう、と常に議題に上がっては、それ以下だと死ぬと反発食らっている。
でもきっと、いつかはまたどこかの国が世界征服未遂をやらかす。
たとえばいま、とある国の軍隊の主流は、計画的にダンジョンで鍛えた冒険者を軍に入れる形。軍隊じゃないよ、冒険者だよ、強くなってからお国を守りたくなったという自由意思で軍隊に入ったんだよ、ときらきらした目で語っているらしい。軍隊に入る前に彼らが稼いだお金がどこに流れているか個人のプライバシーなので不明である。不正はなかった。
ここまで全部、後付けの設定なので覚える必要はありません。それっぽくさえあればいいのである。