『北の大地に伝わる呪われた物語』
異世界エステニアに伝わる物語をアップしました。
物語の読み聞かせ口調と、領主様口調が混ざっている為、読みにくいかと思いますが、、、すみません;
『
むかし、むかしの物語、
北の大地に
それはそれは素晴らしい領主様が居ました。
天地創造神より与えられし魔法の力を、
大地の神より育まれし豊かな大地を、
己に奢る事なかれ、
神を尊び、精霊を尊び、
民の暮らしのため、
強固な国にも負けぬ、
国づくりのためにと、
邁進する領主様の姿に、
民は誇らしく、
人々は彼を慕っておりました。
しかし、
そんな領主様にも悩みがありました。
妻に子が授からないのです。
いくら領土が豊かになろうとも、
強固な国となろうとも、
自分の後を担う世継ぎがいないことに、不安に思わない訳がありませんでした。
妻共々子宝を願い、女神への祈りを欠かすことなく願い続けましたが、
願いは叶わず、
奥様は日に日にふさぎこんでしまいました。
そんな姿を目の当たりにした領主様は、
妻を愛していましたが、やむなく側室を入れる決心をしました。
しかし、第2、第3と、、、、、10人の側室を迎え入れては送り出しましたが、
やはり
子には恵まれませんでした。
そんなある日のこと、
領主様が領土を視察中、こんな噂話を聞きました。
『深緑の女神、、、ドリュスス様の聖なる泉に行くことができた奴が居たそうだ!』
と、言う話です。
この北の大地に古くから伝わる、深緑の女神ドリュアス、、、
深緑の女神を始め、聖なる生き物たちは人間に使役されることを嫌い、安易に己の名を唱えられない様、特別な魔法を人間界へと送り込み、己の住まう聖霊界と人間界との境界に一線引き隔て世の均等を保っていました。
神に近しい聖生物たちが、名を知られたからとはいえ、そう簡単に人間に使役させられることはないのですが、人間には名を唱えることができず、魔力量も桁違いに違う、その存在は恐れの対象と同時に崇拝の対象ともされていました。
そんな神の化身の中でも最も神エステニアに近しいと言われる、深緑の女神は時に己の棲家とも言える泉へと人を招き入れ、姿を現すと言うのです。
その姿は、少女にも少年にも見える愛らしい姿をしており、大地まで流れる黄緑色髪は青葉を思わせ、透き通る肌はもぎたての果実のような滑らかさ、人のようで違う彼女がまとう甘い香りは世の男性を、女性を虜にしてしまう魅惑の女神。と、人々は生涯で一度でも良いのでその女神を拝見したいと願ったものでした。
"神であるドリュアスに性を固定させるべきではないだろうが、昔から女神と表現されるほど女性身のある美しい神なのであろう・・・そんな女神ドリュアスは気まぐれだ、会いたいからと会えるわけでもない。”
と、その物語は領主様も知っていましたし、
エステニア神よりこの地へと与えられし女神と彼自身も崇拝していたのです。
深緑の女神ドリュアスは天地創造神より賜りし大事な役割を担っている。
そんな女神ですが、時に戯れにと人を招き入れ、
その者の嘆きを聞き、気まぐれに願いを叶えたり、
叶えなかったりと人を試す様でもありました。
“
願った者は、それ相応・・・それ以上の見返りが必要になるであろう。
現に行き着くことのできたという商人は商品を全て奪われたそうだ。
『天にも昇る甘美なる、、、至福のときを過ごした、、、』
女神の容姿も語ったが、その姿の特徴も曖昧で森のどこで出会ったのかもわからず、
ただそう言い残すのがやっとだった様だ。女神に扮した魔物にでも騙されたのかもしれない。
そんな商人が次に姿を目撃されたときには、
干からびた、まるで乾物のような酷い様で虫の息だったという。
“神の力に奢ることなかれ・・・” "
しかし
老いを感じる我が身、妻達の事を考えると女神に縋るしかない、そう思う領主様なのでした。
噂話を聞いてからも時は過ぎ、
何年も何年も女神にお目にかかろうと出向けども、行き着くことができず、
諦めかけたその年、ついに領主様は奥様と領主様のそばを離れず残られた側室様方と女神ドリュアス様に会うことができたのでした。
噂にたがわず美しい女神ドリュアス、
どんな見返りを求められるかと危惧していた領主様でしたが、
女神はことさら見返りを求めることもなく領主様の話を聞き入れ、
領主様の奥様方の一人へ男の子を授けてくださいました。
領主様はたいそう喜び、その子の誕生を成長を心待ちにしておりましたが、
子を腕に抱くことなく、この世を去ってしまったのでした。
時が流れ、男の子は北の大地の新しい領主様となりました。
しかし
彼は、ブロウ領の恵まれた大地や民には興味がありませんでした。
国を豊かにし、人々を幸福にと勤める領主としての勤めには見向きもせず、
求めたものはエステイル神がこの世界の生物へ与えたもうた魔法の力だけ。
愛想のない、民を省みない非道の領主とその風貌から黒の領主、冷徹な悪魔と蔑みののしられた領主様でしたが、
悪いことばかりではありませんでした。
魔術の基礎を生み出すという、この世界の常識を変える快挙を成し遂げたのです。
これにより、先代領主様が願った方法ではないとは言え、人々の生活を豊かにし幸福へと導いた彼は、
王より名誉ある称号を授けられ、
「魔術の父」と呼ばれるようになるのでした。
『己以上に良き領主様となってくれるであろう事を願う』
そう望み逝った先代の願いは
こうして叶えられ、
人々は幸せに
国はより繁栄しました。
そうなるはずでしたが、
魔法への探究心、魔術への探究心、
己の思うまま周りを顧みない魔術の父は、
やがて北の美しい大地を呪いの大地へと変貌させてしまうのでした。
その呪いの原因となった出来事も今となっては過去のもの。
今に知る人はいなくなりはしたものな、領土の半分以上を覆う氷の大地がこの地が呪われた大地だと言うことを、人々の記憶に焼きつけたのでした。』
お読みいただきありがとうございます!m(><)m