15歳の私と黒の侯爵家の夜
めまぐるしい一日が、過ぎようとしていた、、、
宛がわれた部屋の窓から夜空を見ることができた。
ベランダに出れる扉もある。
・・・ウズウズ
そっと、扉を開き出てみた。
壁に隣接されたベンチを見つけ、もたれ掛かるように夜空を見上げた。
星空がとても綺麗だ。
こっちの世界の夜空も、地球の夜空と同じようにたくさんの星が瞬いている。
違いがあるとすれば、月と同じくらいの大きさ?に見える星が3個ほど三角を描くように並んでいる事と、(夏の大三角デネブ、アルタイル、ベガの大きいバージョンかな・・・?)
夏の大三角の月のような星3つとは別に、
衛星なのか?惑星なのか??わからないけれど、、、
これまた大きい・・・月の三倍ほどの大きさに見える星も1つあるので、
ゴテゴテしている夜空だなぁ~と感じた。
まだ一日もたっていないのに、地球の星空の細やかな星たちの瞬きが懐かしく感じてしまう。
やはり、地球とは違う星であり世界なのだなと、まざまざと見せつけられてしまった・・・。
目を瞑ると昼間の出来事が頭から離れない、
異世界召喚、魔法、妖精か・・・
他にも色々あるけれど、何でこんなことになっちゃったんだろ・・・?
本当に検討もつかなすぎて、、、自然と涙が目頭に集まってしまう。
眠ってしまえば元の世界に戻れる・・・そんな感覚はない。
いつまでも、ウジウジしているのは気が重くなるだけだとわかっている。
ブロウ家の客室のベッドの固さは調度良く、
夏用の布団も触り心地がサラサラしていて気持ちがいい。
きっと、寝ようと雑念を消せれば眠れるであろうことは間違いないのだが、、、
今後の不安に、酷く打ちのめされてしまってどうしても眠れずにいた。
夕方のリンデルの様子と言えば、ベッドへと横たえた顔は青白く、
まるで貧血を起こしたようなそんなグッタリとした姿をしていた。
彼は、軽度の魔力欠乏状態に陥ってしまっているとのことだった。
血液ではなく魔力の欠乏症だったらしい・・・妖精に血でも抜き取られたのかと?勘ぐってしまったが、魔力消費による体質的なものということで理解した。
もとより、魔力が多い方ではないらしく使用量が定められていたそうだが、、、
とっさの出来事に対処しようとして、魔力を調整できなかったのではないかと?エドワルドさんが教えてくれた。
ブロウ家の結界には所々不備が生じているらしく、
招かれていないものたちが入ってきてしまっているそうだ。
立ち入りを禁じている妖精が進入できている事もその一例だと言う。
『外は危険ですから、窓を開けるのもお控えください・・・』
とエドワルドさんは言っていた。
だからこうしてベランダに居るのも、良くないだろうと言う事はわかっている、、、
でも、、、気分を落ち着けさせたくて出てきてしまった。
静かな夜だ、、、
物思いに耽っていると、
柔らかな夜風とともに、
”昼間はごめんなさいね・・・”
と、昼間と同じ声が静かに響いた。
ビクッと、驚きはしたものの、
昼間の時とは違い体には何の変化も起こらなかった。
頭に響く様は同じだったけれど、幾分か優しい。
”こんばんはっ。
私は深緑の妖精ウィ、枯葉の精なの・・・、一緒に居たのは
仲間のジェン、そよ風の妖精よっ
名前を尋ねといて、こちらは名乗ってなかったわって思ってね?♪
少しあなたとお話がしたくてココへお邪魔させてもらっちゃったわ♪”
あたりは、月三様(夏の大三角)と大月様(大きい星)のおかげで明るいが、
やはり、姿を捉えることができなかった。
「ウィ?妖精さん・・・?ごめんなさい。
むやみに名前を名乗ってはいけないと言われているので、、、
お教えする事ができないんです、、、呼んでくださるならリンと呼んでください」
真名には力がある。
魔法に特化していない人間は簡単に呪術にかかってしまう。
真名だけで発動する魔法・魔術はないそうだが、
本名を知られるのは好ましいものではないそうだ。
実際、エドワルドさんは性を語らず、リンデル君たちは通し名を教えてくれたのだという。
朝霧すず、、、本名です。
普通に名乗ってしまいました・・・。
もちろん、通し名だと誤魔化しましたとも!?(誤魔化せたかは?わからないけれどねっ!?)
知らないって怖い・・・;;;
すず=鈴=リン、、、まぁ、わかりやすい偽名だよね?
妖精ウィはクスクス笑いながら
”そうね、それが正しいわっ。
私も本名じゃないからお互い様よっ♪ふふふふッ♪
私たちはね~っ、肉体を持たないから肉体を持つ人間が羨ましいのよっ?
今日は目的が違うから安心して欲しいけれど、気をつけなさいね?
あなた達は、私たちにとって魅力的で上質な器なの?
みんな欲しているわっ・・・ふふッ♪”
クルクル飛びまわっているのか?
声が遠のいたり、近づいたりせわしない。
人間と言う器ですか・・・(魔術器具の器のようで・・・ガタブルです);;;
”リン、、、。あなたエステニア人ではないでしょ?
エステニアの人とは違う匂いがするの♪
それに、、、
あなた自身には魔力と言うものが備わっていない様なのに、、、
不思議な力に守られてる様だし?ふふっ♪
面白いわねぇ~。
貴女みたいな子に初めて会ったわぁ~♪
っうーん?魔力ではない、、、そう言いきれないんだけれどぉ~・・・近しい力かしらね?
・・・~~んっ。(深呼吸する声?)
私にはわからないけれど、とても魅力的な匂いがするのっ?
なんなのかしらね~?
人間の匂いよりこちらに近い気がするもの、ふふふふっ♪
昼間、あなた達と会ったことをマザーに伝えたらね、、、
なんだか嬉しそうにしていわぁ~♪”
妖精ウィは思ったことをそのまま言っているので、
私のことを言っているようだけれど・・・何を言っているのか?よくわからない。
「それって、どうゆう意味なんですか?」
そう聞いてみたけれど、
”う~ん?マザーのことかしら?
マザーは深緑の女神よ?”
「いや、、、そっちも気になりましたが、力のほうです・・・?」
”っあぁ!?ごめんなさいっ♪
貴女のソレわからないから、面白いし私としても不思議で興味がわくのよねぇ~♪
それに、今晩は昼間の謝罪に来ただけだからっ、追求するつもりもないのよね〜♪リン
なんか?私たちの魔力がリンの力に反応しちゃったみたいだったから?
意図してなかったとは言えごめんなさいね?
リンデルまで怒らせちゃったようだし・・・謝らなくっちゃね、、、
また、彼に嫌われちゃうわ?って、気にしてみたのよっ?”
ブロウ家の結界が綻んでいたとは言え、許可なくウィたちは立ち入りを禁じられたブロウ家へ進入してしまい、深緑の女神からすごく怒られたんだそうだ・・・
立ち入りを禁じられるほどの悪さを、彼女らはしたんだろうか?・・・したんだろうなぁ?
と気になりはしたものの、再びココに来ているのは大丈夫かと気にしてみると、
妖精と魔法の契約について話し始めてくれた。
ウィ、、、よく喋るなぁ、ありがたいけど。
精霊や妖精たちの生活に人間(特に魔に関わる者)つまり魔法と魔術を扱う者達との契約はとても重要なのだと言う。
契約により存在できるモノ、
存在意義の芽生えるモノ、
己の存在を確実にするモノ・・・
魔のモノ達だけでは成しえない力を共有し、お互いに利を得る。
契約を違えるということは双方に何かしらの影響を及ぼしかねない、危険な行為であり、
違えることは何の利にもならない、、、など他にも色々あるそうだが、
これ以上の難しいことはわからないでしょ~っ?と、それ以上は教えてくれなかった。
とはいえ、
結界が綻んでいるということは、今はその理に縛られていないってことよね?
と、昼間の謝罪を含め、今がチャンスとリンデルに会いに来たそうだ。
本当は私への謝罪と不思議な匂いについては、ついでだったとのことで、
本命はリンデルだそうです。
エステリア人と違う匂い、、、って言うのは、
単純に地球人だからだろうし、魔力でない不思議な力・・・。
わからないけれど、
なんか・・・旗立ってる?
チート来たーって展開なのか???
その力って私にメリットあるやつですか!?
今後の生活に役立つやつでお願いします!!
ウィの話を聞きながら、自分の都合のいい展開を気にしていると、
”わからないのは、本当よ?
でも、魔力やその者の本質とか、
そういう大事な、、、
肝心なことは私たちは言えないの。
そういうコトになっているの、
中途半端な話でごめんなさいね?
精霊とかそういう属性の者たちはね、
契約に縛られやすい質でしょ?
そう言って、わかってもらえないかしら?”
「・・・いえ、わかりません、、、不安だけしか残りません!」
うっかり、こっちで生活する気になっていたが、
「そもそも、謝罪とかそういうのが欲しいのではなくて、、、知っているのなら、元の世界に帰れる術を教えて欲しいんです。
力に守られてるとか・・・私、全然そんな自覚ないし、その力は私に使えるんですか?
私帰れるんですか?帰れる過程で役に立てるやつですか?そういう情報をマザーさんは何か?おっしゃっていなかったんですか?」
すがれるものにはすがわらなくちゃ、聞き出さなくちゃ、、、
自分の求めているものを口に出したが、
”ふふふっ、困ったわぁ~♪
そう言えば、
ジェンはね?、昼間の片割れなんだけど、ブロウ候へマザーからのを言伝を届けているの。
ブロウ候はすごい人なの!
きっと貴女に良くしてくれるわっ。
予定より早く帰ってくれると良いわね?ふふふっ♪”
と、話をそらされてしまった。
”さぁっ、、、リン?
もう、夜も遅いわっ?
、、、私以上に悪い子に食べられてしまう前に、
お部屋にお入りなさい?
大丈夫ちゃぁ~んと、眠れるように眠りの魔法をあげるっ♪”
通行料だと思って受取って?
そう言って暖かな空気が顔に張り付いたと思ったら、
強制的に話はこれでおしまいだとばかりに、
、、、目の前がポカポカ温かくなり、睡魔が襲ってきた。
激しく眠い・・・
もう何も、、、
考えられなくなり、、、自然と体が寝室へ行こうと扉を開く。
”おやすみっ♪リン。
またねぇ~っ♪”
柔らかい風が頬を通り過ぎ、
彼女が私のそばから離れていったことがわかった。
翌日、、、リンデルから妖精を部屋へ招き入れたことを知られ怒られてしまうのだが、
そんなことになるとは思いもせず、この時は深い眠りにつくのでした。
7話目でやっと、すずさんの異世界初日が終わりました!
長い初日を読んでくださりありがとうございます!