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Nemesia  作者: 五流工房
Nemesia本編
7/18

頼ればいいんじゃない?

カーテンの隙間から、優しい光が私を照らす。

目覚ましのアラームより早く目が覚めた朝。

着衣の乱れを気にしないで、カーテンを開ける私。


「はう~。朝は弱いわね・・・・・・」


若干すっきりしない頭を回転させるため、顔を洗いに洗面所へ向かう。

窓の外から鳥の歌声が聴こえてくる。

まだ眠い目を覚ますため、両手いっぱいにすくった水で顔を洗い、いつのも私がようやく目覚める。

そして右手を胸まで上げて手の甲を見る。

軽く意識を集中させ、手の甲の中心が光り出す。

その光を確認した所で、手の意識を解放させ、光をしまう。


「今日こそは、必ず・・・・・・」


決意を新たに、拳を固め歩き出す。


・・・

・・


「あー眠い・・・・・・今何時なのよ?」


眠い目をこすりながらベットに置いてあるスマホを探す。

被っていた布団がベットから滑り落ち、ほぼ肌色の私が姿を現す。

要するにほぼ全裸だって事よ。

寝ぼけているから何を口走っているかわからないけれど、とにかくスマホは見つけたわ。

そして時間を確認する私。


「まだ早いわね・・・・・・少し走ってこようか」


とりあえず眠気を吹き飛ばすため、近所を軽く走る事に決めたのよ。

軽装で家から飛び出し、スマホを片手に走り出す。


「そういや、昨日の写真をしよに送ってあげなくちゃ」


軽快に風を切りながら、画像を確認していたのだけれど。

あれ?おっかしいなー?昨日はちゃんと撮ったはずなのに。

何度も何度も確認する。なんども、なんども、なんど・・・・・・


「何で画像が消えてるわけぇぇぇ?」


早朝に響く叫び声。

気づけばのんびり電線に止まっていた鳥たちも、勢いよく羽ばたいていたわ。




Nemesia(ネメシア) day2_頼ればいいんじゃない? ~




2017年 4月。某日、土曜日。


「おっはよ~アペリラ。お腹空いてない?あそこなら座って食べれそうなんで行こ」

「しよおねーちゃん。空いてるー。桜餅くれるの?」

「桜餅はないんだけどね、おにぎり作って来たよ」

「ワーイ・・・・・・ってナニコレ?」

アペリラの前にラップに包まれた7つの丸いおにぎりを置く。

のりで顔を作り、髪の毛をふりかけで表現しているの。

「どう?可愛いでしょ?こっちのピンク色の髪はアペリラだよ」

「これが・・・・・・ボク?・・・・・・あはは、う、うれしいなぁ」

あれ?自信あったのにな~何がダメだったのかな~?

作ったおにぎりを手に取り、改めて確認する私。

そんな中、遠くから、ものすごい勢いでこっちに向かって走って来る女性がいたの。


「大変よぉぉぉしよぉぉぉ」


公園に着くなり、スマホを取り出し私に見せる彼女(みあ)

「な~に?みあの自撮り画像がどうかしたの?しかも着てないし」

私は少し気を遣って、画像から目を逸らす私。

「違うわよ。よく見なさいよ」「もう見たよ。みあが変態なのは知ってるから」

「だぁぁ、そうじゃないし、何で私が変態なのよ?」「なら私に裸を見せてどうしたいの?」

「だからー他の画像もちゃんと見てよ」「だから~見てるけど、みあしか・・・・・・ってあれ?」


出会って早々に、彼女の変態アピールかと思っていたけれど、よく見ると確かに違和感を感じたの。


「みあおねーちゃんって、しよおねーちゃんに負けず大きいんだね」


2人のやりとりの真ん中から画像を覗いていたアペリラ。

「おはようアペリラ。お腹空いてると思って、ご飯作って来てやったぞ」

「ワーイ、桜餅もあるの?」

「そう言うと思って、桜餅も用意したわよ」

そう言って、私の置いてあったおにぎりの横に、お弁当箱と桜餅を置く。

「ん?見た感じ願いが叶いそうな丸い食べ物があるんだけど?しよが作って来たの?」

「ええ。可愛いでしょ?みあも食べていいから」「やったぁー桜餅だぁ」

「もしかして・・・・・・顔のつもりなの?」「いっただきまーす」

「つもりじゃなく顔だよ~ほら、髪もついてるでしょ?」「やっぱ美味しいなぁ」

「ねーしよ?あんた就職してから料理はしてた?」「ねー全部もらっていいの?」

「さ、さぁ~なんの事かしら~」「やっぱダメ?」

「全部食べなさい。でもこっちの食べ物も食べるのよ」「ハーイ」


嬉しそうに食事をしているアペリラを見ながら、私たちも軽く食事をする。

「もしかして桜餅も手作り?」

「いえ、さすがにこれは買って来たわよ。それより、あんたはもう少し料理出来るようになりなさい。全然変わってないというかむしろ酷いわ」


「うう・・・・・・頑張ります」


「まー味は悪くないのよ?おにぎりだから不味くなる要素があまりないけども」


お察しの通り、私は料理が苦手です。と言うか不器用なの。

不思議な事に、料理をする時だけ不器用になるの。

それは学生の頃から変わんなくて、練習しようと思ったけど、仕事に追われてて、料理なんてせずに過ごしていたのね。ま~結果はご覧の通り。


「やっぱみあには敵わないわね」

「何言ってるの?変態呼ばわりしたくせに」

「あは。それは一生敵わない所かもね。あ、そうそう。さっきの画像の話しなんだけど」

「わかってくれた?撮ったはずの画像がね・・・・・・」

「「消えてた」」


「そんな事よりみあおねーちゃんは何で裸なの?」


少女の純粋な疑問が変態に突き刺さる。

「あれはね、友達にちょっとした悪戯と言うか、ご褒美?そう感謝の気持ちなのよ」

「ほ~う。それにしても結構撮ってたわね。一体誰に送ろうとしてたんだか」

「まーいいでしょ?こんな画像なんて男に送れるわけないでしょ?」

「ン?別におにーちゃんに見せてもいいんじゃない?友達なんでしょ?」

「「おにーちゃん?」」

「ウン。ヒロおにーちゃんだよ。今おねーちゃんたちの中では、指名手配的扱いになってるけど」


「ば、バカ言わないで!誰がアイツなんかに」「ダメよ!この変態アダルト鬼畜」


「な、酷いじゃない。私がいつアイツに手を・・・・・・と、とにかく私はそんな事しないから」

アペリラの口元が一瞬ニヤリとしたのがわかった。

もしかして、あの子は何か知ってる?それともからかってる?

その答えを知るのはもう少し先になるのだけれど・・・・・・

「ま~いいわ。画像の事はアペリラが教えてくれるよ。ね?」

私は答えを知ってると思われる彼女に、わざと質問をしてみたの。

「ン?答えは簡単さ。おねーちゃんたちが時間移動している場所はゲームの世界なんだ。だからゲーム外での情報は持ち出せないんだよ」

「だから私が撮った画像が、今の時間では削除されてるって事なのね」

「残念だったね。あんなに楽しそうに撮ってたのにね」

「ま、仕方ないわよ。それより今日の作戦会議をするわよ。目的を忘れちゃダメなんだから」


なんか朝からずっとみあのターンな気がするんだけど・・・・・・

とにかく私たちは、今日向う先の、時間と場所を決める事にしたの。


「こんなのはどう?しよは昨日ヒロには会えたのね?」

「うん。でも話は出来なかったの」

「ならさ、その時間にもう1度飛べばいいんじゃない?空港に着いたくらいの時間帯に行けば、間違いなく会えるし、話出来るじゃない」

確かに。それなら探さなくてもいいかも。

しかし、それを聞いていたアペリラが首を左右に振りながらこう言ったの。

「それは出来ないよ。おねーちゃんたちが過去に立ち寄った時間は、時の番人によって消去されるんだ」

「何で?ズルはダメって事なの?」

「ズル?あのね、時の番人はおねーちゃんたちから奪う事しかしないよね?」

「あ。もしかして私たちが辿った時間帯は全て奪われてるって事?」

「さっすがしよおねーちゃん。そう。だから同じ時間に2度訪れる事は不可能って事」

「おのれ石油王め。アイツはほんとムカつくヤツね」

「じゃ~それがダメならノッポさんの残してくれたもう1つの情報に頼りましょう」


あの時、ノッポさんが私たちに話してくれた内容は2つ。

1つは、昨日訪れた東京の件。

そしてもう1つの内容は────


『今から6年前に、ある店によく食べに行ってた事があってな、その店の店長さんが俺らの事を覚えていてくれてたんだ』

『つまり、常連さんに』『なったと言うわけね?』

うむりと頭を下げるノッポさん。

『その頃は、俺もアイツとよく会ってたからよく覚えてる。だから確実に会える可能性があるとすればその店なんだけど・・・・・・東京の件も、今の件も、どちらも過去の話しだが、こんなんでほんと役に立ってるのか?』

『はい、かなり。ちなみにその店はどこにありますか?』

『んじゃ、詳しく説明すると・・・・・・』


それからノッポさんは、場所とよく行く時間帯を教えてくれたの。


『と、まぁこんな所だな』

『ありがとうノッポさん。ちなみにどうしてその店によく行くようになったのかしら?』

『まー料理の内容がよかったからだけど、アイツが妙に店長さんと仲良くなってしまってな』

『もしかして、その店長さんって・・・・・・』

私が言いかけてた言葉を先に理解した彼は、軽くうなづいて話を続けてくれたの。

『でだな。今日君と会って、驚く程に似てたもんだからさ。今になってもう1つ理由を付け加えると、昔が懐かしかったんじゃないかな?あ。これはアイツ限定だけどな』

『昔が懐かしいね。ま、考える事は同じみたいね』

みあが私の顔を見る。その言葉に何か気づいたノッポさん。

『ひょっとして、君も昔の思い出を?』

『ほへ?あ、ええ。そうかもしれません』


もし彼が、店長さんを見て私を思い出してくれたとして、彼は、キミはこの先どうしたの?


・・・

・・


「じゃー今回は6年前のお店が舞台と言う事だけど、仮にそこでヒロを見つけたとして、どうやって接触するの?本人の目の前で名前を聞けないし言えないし」

「そうよね。昨日みたいに、誰かを間に挟んでからなら、話しはいい方向に進むかもしれないけど・・・・・・」

「なら、店にいるノッポさんにまた協力してもらうってのは?ヒロと一緒に店にいるはずだよね?」

「いい考えなのだけど、今回はやめておいた方がいいわ」

「どうしてよ?」

「店内でノッポさんと会話出来るチャンスがあったとしても、近くに彼がいるはずでしょ?話す内容によっては警戒されないかな?」

「あーね。じゃ、どうしよう・・・・・・」


しばらく考える2人。昨日はたまたま誰もいない所でノッポさんに会ってチャンスをもらえた。

けれど、今回は狭い空間での勝負。しかもそ中で頼れる人なんて、私たちが考える中では誰もいない。

なかなか答えがまとまらない。そんな中、アペリラが最後の桜餅を食べきって、私に向かってこう言って来たの。


「なら"あのおねーちゃん"に頼ればいいんじゃない?しよおねーちゃんはそのおねーちゃんとお話したそうだし」


あのおねーちゃん?お話したい?

私は頭の中で該当する人物を検索する。が、答えを導き出したのは、私ではなく彼女(みあ)だったの。


「そうよ。いるじゃない、頼れる人がもう1人」

「それは誰なの?」


彼女の口から自信たっぷりに出た人物の名は・・・・・・


「"もう1人のしよ"に頼めばいいのよ」


もう1人の私?

すなわち店長さんに頼むって事よね?別にそれでも構わない。でもね。当然の質問だけど

「みあはその人の事、知ってるの?」

「いや。でも大丈夫じゃない?」

そう言って私にまっすぐな眼差しと笑顔をくれる。

「何でそうやって自信を持てるの?」


「だって、しよに似たヒロの"知り合い"なんでしょ?ノッポさんといい、悪い人ではないでしょ」


私に似たってとこはあまり意味がないと思うんだけどなぁ~。

でも、頼れるなら力になってもらいたい。だけど・・・・・・


あなたは本当に彼の知り合いなの?


「だといいんだけどね。私に似てるのなら苦労するかもよ?」

「その時は責任とってあんたがなんとかしなさいよ」


みあは右手に意識を高め、手の甲の中心が白く光り出す。


「何で私が責任とらなくちゃならないのよ?」


私も遅れながら意識を右手に持って行く。

「だって、もう1人のあんたなんでしょ。自分の事くらいはどうにか出来るでしょ」

「もう。意味わかんないし。先に行くからね」

意識を加速させ先に飛ぼうと思った時、私の右手を両手で包んで来たアペリラ。

「いい?おねーちゃん。焦っちゃダメだよ?今のおねーちゃんは少し"知りすぎてるんだ"」

「アペリラ?ええ。大丈夫よ、心配してくれてありがとう」

「ま、今日も私が奪われてあげるから。あんたはクリアする事だけ考えればいいのよ」

そう言いながらアペリラの手の上に彼女の手が乗っかる。


私の手の上にアペリラの想いと、みあの想いが乗っている。

その想いの重みを感じながら、彼への想いの重みを心で感じる。


「ありがとう、みんな。じゃ~そろそろ行こうか」

「アペリラ。お腹空いたらお弁当食べるのよ?」

「ウン。じゃー気をつけて」


2人はお互い顔を合わせ、軽くうなずく。


「「mana ekahi(マナ エカヒ)」」



想いは念いへと成長し。私は彼の元へ旅立つ。

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