表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Nemesia  作者: 五流工房
Nemesia本編
2/18

akua

桜の散り際に出会った、サクラ色の髪の子、アペリラ。

その子は突然、いや、唐突に、私の心の本質を見抜いたのか?それとも知っていたのか?

どちらにしても、この子は何か目的があってココに現れたのだと

この時、気づいたの・・・・・・




Nemesia(ネメシア) day1_akua ~




ボクは軽く挨拶を済ます。まだ状況が掴めていないおねーちゃんたち。

ま、無理もないよね。とりあえず先に誤解を解いとくか。


「最初に言っとくけど、ボクは"心を見抜く"なんて出来ないよ"しよおねーちゃん"」


その言葉に更に警戒心を強めたしよおねーちゃん。

うーん、ボク話すのあまり得意じゃないからどうしようか・・・・・・

それに、"みあおねーちゃん"もボクに敵対心剥き出しだなー。


しばらくボクらの時間が止まったように静かになる。

でも数秒後、みあおねーちゃんが口を開いたんだ。


「さっきから何言ってるかわっかんないけれど、どうやら私らを知ってるようね?」

「ウン、知ってるよ。だって"見て来た"んだもん」

「見て・・・・・・来た?ごめんアペリラちゃん。もっとちゃんと説明出来る・・・・・・かな?」


あ。いけない。ボクが"当たり前"の事は、おねーちゃんたちには"当たり前じゃない"か。


「あーごめん。おねーちゃんたちにわかるように話すよ。でも話すの苦手だから怒らないで聞いてくれるかな?」


ボクが素直に返事をした事で、少し警戒心、敵対心が薄れるおねーちゃんたち。

さて、では話して落ち着いて来た所で、"本題"へと持って行こうっと・・・・・・でも伝わるかな?


・・・

・・


「「時間移動!?」」


アペリラちゃんが説明した内容は、時間を遡り、過去の私たちを観察し、会ってみたくなったからココに来たと言うのだけれど・・・・・・


「そんな事を信じろと言う方がおかしいわね」

みあの言う事は正論だよね。私も正直信じられないし。

仮に信じて、どうして私たちなのかしら?

「ねぇアペリラちゃん、どうして・・・・・・」「アペリラでいいよ、しよおねーちゃん」

「そう?じゃ~アペリラ。どうして私たちの所に来たの?」

「それはね(ぐぅ~)」

話し始める手前、どうやらお腹を空かしているアペリラ。

「あんたお腹空いてるの?何か買って来てあげようか?」

「ホントに?なら桜餅がいいな。みあおねーちゃんのおごりなの?」

「ええ。ついでに私らも食べる?桜餅」

「そ・・・・・・だね。じゃ~話しは食事の後に聞かせてくれるかな?」

「ウン」


数分後。


アペリラを中心に、右に私、左にみあがベンチに座る。

そして、みあが買って来た桜餅を夢中でかぶりつくアペリラ。

「中坊くらいの"男の子"はさすがに食欲旺盛よね」

「でもさ。髪はショートっぽいけど、服が白いワンピースじゃない?」

「きっとあれよ。女装癖があるのかもよ?ね?アペリラって男?」

「ン?ボクはこの世界では"女"らしいよ。おっぱいも少しだけあるって言ってたし」


そう言って左手に持ってた食べかけの桜餅を口に押し込み、両手で自分の胸を揉むアペリラ。


「「揉まんでいいから」」


しかもこの世界って・・・・・・ほんと、謎が多すぎる。理解に苦しむとはこの事よね。


「「「ごちそうさまでした」」」


さて、それではさっきの話の続きを聞きましょう。

「どうして私たちの所に来たの?」

「さっきも言ったと思うけど、しよおねーちゃんは過去に忘れ物をしちゃってるよね?」

「忘れ物?さっきアペリラは"心の奥に隠してる痛み"と言い直さなかった?」

私には思い当たる節がある。みあが理解出来ないのは当然なの。


そう

私はやはり"誰にも知られていない本当の気持ち"を今も心の奥に隠している。

この場所に来て、あの人を思い出して、心が痛んだの。

だから。


「・・・・・・みあ。正直に話すね」


私はアペリラが私に伝えたかった言葉の意味を、自分なりの解釈で説明したの。

間違ってたらアペリラが割って入ると思ったけど、どうやら正解だったみたい。

みあも理解した上で、再び話しを進める。


「じゃあ、私が忘れ物をしてたとして、それを気づかせるためにここに現れたの?」

「ウーン。そうじゃないんだよ」

そう言って勢いよくベンチから立ち上がるアペリラ。少し歩きながら再度語り出す。

「ボクはおねーちゃんたちと、ちょっとした"ゲーム"をしようと思ってね」

「「ゲーム?」」

私たちのハモった問いで歩みを止め、振り返るアペリラ。


「ウン。ボクの目的はね。おねーちゃんたちの"手助けと過去の清算"」


「要するに、私らに過去に飛べと言いたいのだろうけど、残念。現実にありえない事は信用しないのよね私」

「・・・・・・じゃー、実際に体験してみるといいよ」


どうしても現実を押し通すみあに、しびれを切らしたアペリラが左手を私たちの前に向け、ちょうどいい声のトーンで囁く。


mana ekahi(マナ エカヒ)


アペリラの言葉とともに左手が眩しく光り出す。

突然、辺り一面が灰色になって行く。

それとほぼ同時に足下が急に無くなり、まるで落とし穴に落ちた感覚になる。(落ちた事ないけどね)

思わず閉じた両目。

が、次の瞬間に足場が戻ってるのを感じ。

そして、ゆっくりと両目を開く。


・・・

・・


さっきまで確かに公園のベンチに座ってたはずなのに。

私の、私たちの目に飛び込んで来た光景は"家の正門"

しかもその場所は私がよく知っている所。


「ね?ここって確か・・・・・・」「・・・・・・私の家だね」


何が起こったかなんて2人に答えは出せない。

でもね、ここは間違いなく私の家の前だったの。


「さて、今から2時間前。しよおねーちゃんは何をしていたか思い出せる?」


思考が追いつかない私たちにアペリラがヒントをくれる。

「2時間前?確か出かける前に鏡の前で立ち止まってたかも」

「ウン。じゃー答え合せをしに行こうよ。あ、でも見つかったらダメだよ?」

アペリラの言葉でそっと家の外から鏡のある部屋に向かう。

窓越しにそっと部屋を覗き込む私たち。

するとそこに映った光景は────


「ちょっとやり過ぎたかな?」


鏡の前に立ち、独り言を言いながら髪を撫でる、"私"の姿があったの。


「ちょっとこれはどう言う事なのよ?」

みあが思わず声にしてアペリラに問う。

「シー。見つかったら色々とやばいから黙ってよ」


「誰?まさか覗きなの?」


「ホラ、早く隠れてよ!」

アペリラの言葉に条件反射的に体が動き、各々は身を隠す。


「ほへ?気のせいなのかな」


どうやら見つからなかったようだけど。あの子は間違いなく私。

しかも本当に2時間前の出来事(覗きの件は含まず)のままだった。

頭の中で少しずつ理解して行こうと努力しながら、視線をアペリラに向ける。

見ると、みあに向かって説教している姿が見える。

時折みあがアペリラに反論しているのかしら?ここからは聞き取れないけれど。

とにかく私たちは、本当に"時を遡っていたの"────


・・・

・・


時は戻り現在。


「どう?これで信じてくれた?」

アペリラの自慢げな顔が2人に近づく。

「ま、信じるしか」「ないわよね」

お互い顔を見合わせてアペリラに答える私たち。


「ウン。素直になった所で、もう1度聞くね?おねーちゃんたち、ゲームする?」

「アペリラ。具合的にどうすればいいの?返事はそれを聞いてからにしたいの」

「ウン。じゃー簡単に説明するね。まず目的は、しよおねーちゃんの忘れ物を届ける事。でも、過去に飛ぶにはそれなりのリスクを背負ってもらう事になるんだ」

「ほーう。ただの時間旅行ではないって事ね?」

「何か私たちがしなきゃいけないとかかな?」

「えっと、守ってもらいたい事はあるんだよ。ゲームだから楽しみながらじゃないとね」

アペリラが満面の笑を私たちに見せつける。

その顔を見て、難易度は決してやさしくはないのだと思ったの。

当然、私は守ってもらいたい事は何?と確認する。

そうしたらアぺリラが過去での約束事(ルール)を伝えて来た。


アペリラの説明を簡単にまとめると。


1.自分の名前を名乗ってはダメ。

2.質問した人に"尋ね人"の名前を聞くのもダメ。

3.他人から、もしくは質問した人に、"尋ね人"の名前が出れば、その言葉が使用可能になる。


ここまででも結構な難易度だと思ったのだけど、実はこの先告げられるアぺリラの発言が、

"リスクを背負う"の本当の意味だったの。


「おねーちゃんたちが過去に飛んで"15分後"。おねーちゃんたちの"身体の一部"が失われるんだ。あ、失うと言っても痛みはないし、身体の機能がなくなるだけだから、外見は何も変わらないよ」

「ちょっと待って。それは1度飛ぶ度に失うってわけ?」

「ウン。みあおねーちゃんが言った事は正解。とりあえずもう少し詳しく話すと、時間移動を繰り返す度に身体の一部が失われる。で、何が失われるかはランダムなんでボクにもわからない。ただし、"15分以内"に別の時間に飛べば、その時間でのリスクはなくなる」

「それはつまり、1回の過去に飛ぶ時間を15分以内にして別時間へ飛べば何も失わないって意味なのかな?」

「ウーン。確かにそうだけどね。でもね。短時間の時間移動を繰り返せば何も失う事はないけども、1度飛ぶ度に失うルールは継続しているんだ。要するに、最後に15分滞在した場所(時間)でまとめて失う事になる。あとは・・・・・・」

「ね?失うって事はアぺリラが直接奪いに来るってわけなのかしら?」

「ン?あーそれは違うよ。ボクではく"時の番人"さ。ま、失う事や時間のルール関係で気になる事があればその人に質問すればいいよ」


みあの質問で、さっきアぺリラが何かを伝えようとしてた事を、伝えてくれなかったのが気になるけれど、大体は理解した。

それを踏まえて私はこのゲームに乗るかどうかを考える。

「ね、どうするの?一緒に時間旅行に行ってみる?忘れ物届けに行きたいでしょ?」

「みあ・・・・・・なら、ついでにみあも忘れ物届けに行く?」

「ま、ついでがあればね。て事でアペリラ」

「私たちはそのゲームに乗るわ」


まるで小学生のように両手を上げて喜ぶアペリラ。

それを見てなぜか微笑ましく思えたけれど、これから課せられる私たちの旅は・・・・・・

出だしから笑顔が消えると言うオチが待っていたのです。


「で、ゲームって言うからにはタイトルとかないのかしら?」

と、みあが聞くとアペリラはドヤ顔とともに答える。



「フフフッ。ゲーム名はね・・・・・・akua(アクア)だよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ