akua
桜の散り際に出会った、サクラ色の髪の子、アペリラ。
その子は突然、いや、唐突に、私の心の本質を見抜いたのか?それとも知っていたのか?
どちらにしても、この子は何か目的があってココに現れたのだと
この時、気づいたの・・・・・・
~ Nemesia day1_akua ~
ボクは軽く挨拶を済ます。まだ状況が掴めていないおねーちゃんたち。
ま、無理もないよね。とりあえず先に誤解を解いとくか。
「最初に言っとくけど、ボクは"心を見抜く"なんて出来ないよ"しよおねーちゃん"」
その言葉に更に警戒心を強めたしよおねーちゃん。
うーん、ボク話すのあまり得意じゃないからどうしようか・・・・・・
それに、"みあおねーちゃん"もボクに敵対心剥き出しだなー。
しばらくボクらの時間が止まったように静かになる。
でも数秒後、みあおねーちゃんが口を開いたんだ。
「さっきから何言ってるかわっかんないけれど、どうやら私らを知ってるようね?」
「ウン、知ってるよ。だって"見て来た"んだもん」
「見て・・・・・・来た?ごめんアペリラちゃん。もっとちゃんと説明出来る・・・・・・かな?」
あ。いけない。ボクが"当たり前"の事は、おねーちゃんたちには"当たり前じゃない"か。
「あーごめん。おねーちゃんたちにわかるように話すよ。でも話すの苦手だから怒らないで聞いてくれるかな?」
ボクが素直に返事をした事で、少し警戒心、敵対心が薄れるおねーちゃんたち。
さて、では話して落ち着いて来た所で、"本題"へと持って行こうっと・・・・・・でも伝わるかな?
・・・
・・
・
「「時間移動!?」」
アペリラちゃんが説明した内容は、時間を遡り、過去の私たちを観察し、会ってみたくなったからココに来たと言うのだけれど・・・・・・
「そんな事を信じろと言う方がおかしいわね」
みあの言う事は正論だよね。私も正直信じられないし。
仮に信じて、どうして私たちなのかしら?
「ねぇアペリラちゃん、どうして・・・・・・」「アペリラでいいよ、しよおねーちゃん」
「そう?じゃ~アペリラ。どうして私たちの所に来たの?」
「それはね(ぐぅ~)」
話し始める手前、どうやらお腹を空かしているアペリラ。
「あんたお腹空いてるの?何か買って来てあげようか?」
「ホントに?なら桜餅がいいな。みあおねーちゃんのおごりなの?」
「ええ。ついでに私らも食べる?桜餅」
「そ・・・・・・だね。じゃ~話しは食事の後に聞かせてくれるかな?」
「ウン」
数分後。
アペリラを中心に、右に私、左にみあがベンチに座る。
そして、みあが買って来た桜餅を夢中でかぶりつくアペリラ。
「中坊くらいの"男の子"はさすがに食欲旺盛よね」
「でもさ。髪はショートっぽいけど、服が白いワンピースじゃない?」
「きっとあれよ。女装癖があるのかもよ?ね?アペリラって男?」
「ン?ボクはこの世界では"女"らしいよ。おっぱいも少しだけあるって言ってたし」
そう言って左手に持ってた食べかけの桜餅を口に押し込み、両手で自分の胸を揉むアペリラ。
「「揉まんでいいから」」
しかもこの世界って・・・・・・ほんと、謎が多すぎる。理解に苦しむとはこの事よね。
「「「ごちそうさまでした」」」
さて、それではさっきの話の続きを聞きましょう。
「どうして私たちの所に来たの?」
「さっきも言ったと思うけど、しよおねーちゃんは過去に忘れ物をしちゃってるよね?」
「忘れ物?さっきアペリラは"心の奥に隠してる痛み"と言い直さなかった?」
私には思い当たる節がある。みあが理解出来ないのは当然なの。
そう
私はやはり"誰にも知られていない本当の気持ち"を今も心の奥に隠している。
この場所に来て、あの人を思い出して、心が痛んだの。
だから。
「・・・・・・みあ。正直に話すね」
私はアペリラが私に伝えたかった言葉の意味を、自分なりの解釈で説明したの。
間違ってたらアペリラが割って入ると思ったけど、どうやら正解だったみたい。
みあも理解した上で、再び話しを進める。
「じゃあ、私が忘れ物をしてたとして、それを気づかせるためにここに現れたの?」
「ウーン。そうじゃないんだよ」
そう言って勢いよくベンチから立ち上がるアペリラ。少し歩きながら再度語り出す。
「ボクはおねーちゃんたちと、ちょっとした"ゲーム"をしようと思ってね」
「「ゲーム?」」
私たちのハモった問いで歩みを止め、振り返るアペリラ。
「ウン。ボクの目的はね。おねーちゃんたちの"手助けと過去の清算"」
「要するに、私らに過去に飛べと言いたいのだろうけど、残念。現実にありえない事は信用しないのよね私」
「・・・・・・じゃー、実際に体験してみるといいよ」
どうしても現実を押し通すみあに、しびれを切らしたアペリラが左手を私たちの前に向け、ちょうどいい声のトーンで囁く。
「mana ekahi」
アペリラの言葉とともに左手が眩しく光り出す。
突然、辺り一面が灰色になって行く。
それとほぼ同時に足下が急に無くなり、まるで落とし穴に落ちた感覚になる。(落ちた事ないけどね)
思わず閉じた両目。
が、次の瞬間に足場が戻ってるのを感じ。
そして、ゆっくりと両目を開く。
・・・
・・
・
さっきまで確かに公園のベンチに座ってたはずなのに。
私の、私たちの目に飛び込んで来た光景は"家の正門"
しかもその場所は私がよく知っている所。
「ね?ここって確か・・・・・・」「・・・・・・私の家だね」
何が起こったかなんて2人に答えは出せない。
でもね、ここは間違いなく私の家の前だったの。
「さて、今から2時間前。しよおねーちゃんは何をしていたか思い出せる?」
思考が追いつかない私たちにアペリラがヒントをくれる。
「2時間前?確か出かける前に鏡の前で立ち止まってたかも」
「ウン。じゃー答え合せをしに行こうよ。あ、でも見つかったらダメだよ?」
アペリラの言葉でそっと家の外から鏡のある部屋に向かう。
窓越しにそっと部屋を覗き込む私たち。
するとそこに映った光景は────
「ちょっとやり過ぎたかな?」
鏡の前に立ち、独り言を言いながら髪を撫でる、"私"の姿があったの。
「ちょっとこれはどう言う事なのよ?」
みあが思わず声にしてアペリラに問う。
「シー。見つかったら色々とやばいから黙ってよ」
「誰?まさか覗きなの?」
「ホラ、早く隠れてよ!」
アペリラの言葉に条件反射的に体が動き、各々は身を隠す。
「ほへ?気のせいなのかな」
どうやら見つからなかったようだけど。あの子は間違いなく私。
しかも本当に2時間前の出来事(覗きの件は含まず)のままだった。
頭の中で少しずつ理解して行こうと努力しながら、視線をアペリラに向ける。
見ると、みあに向かって説教している姿が見える。
時折みあがアペリラに反論しているのかしら?ここからは聞き取れないけれど。
とにかく私たちは、本当に"時を遡っていたの"────
・・・
・・
・
時は戻り現在。
「どう?これで信じてくれた?」
アペリラの自慢げな顔が2人に近づく。
「ま、信じるしか」「ないわよね」
お互い顔を見合わせてアペリラに答える私たち。
「ウン。素直になった所で、もう1度聞くね?おねーちゃんたち、ゲームする?」
「アペリラ。具合的にどうすればいいの?返事はそれを聞いてからにしたいの」
「ウン。じゃー簡単に説明するね。まず目的は、しよおねーちゃんの忘れ物を届ける事。でも、過去に飛ぶにはそれなりのリスクを背負ってもらう事になるんだ」
「ほーう。ただの時間旅行ではないって事ね?」
「何か私たちがしなきゃいけないとかかな?」
「えっと、守ってもらいたい事はあるんだよ。ゲームだから楽しみながらじゃないとね」
アペリラが満面の笑を私たちに見せつける。
その顔を見て、難易度は決してやさしくはないのだと思ったの。
当然、私は守ってもらいたい事は何?と確認する。
そうしたらアぺリラが過去での約束事を伝えて来た。
アペリラの説明を簡単にまとめると。
1.自分の名前を名乗ってはダメ。
2.質問した人に"尋ね人"の名前を聞くのもダメ。
3.他人から、もしくは質問した人に、"尋ね人"の名前が出れば、その言葉が使用可能になる。
ここまででも結構な難易度だと思ったのだけど、実はこの先告げられるアぺリラの発言が、
"リスクを背負う"の本当の意味だったの。
「おねーちゃんたちが過去に飛んで"15分後"。おねーちゃんたちの"身体の一部"が失われるんだ。あ、失うと言っても痛みはないし、身体の機能がなくなるだけだから、外見は何も変わらないよ」
「ちょっと待って。それは1度飛ぶ度に失うってわけ?」
「ウン。みあおねーちゃんが言った事は正解。とりあえずもう少し詳しく話すと、時間移動を繰り返す度に身体の一部が失われる。で、何が失われるかはランダムなんでボクにもわからない。ただし、"15分以内"に別の時間に飛べば、その時間でのリスクはなくなる」
「それはつまり、1回の過去に飛ぶ時間を15分以内にして別時間へ飛べば何も失わないって意味なのかな?」
「ウーン。確かにそうだけどね。でもね。短時間の時間移動を繰り返せば何も失う事はないけども、1度飛ぶ度に失うルールは継続しているんだ。要するに、最後に15分滞在した場所でまとめて失う事になる。あとは・・・・・・」
「ね?失うって事はアぺリラが直接奪いに来るってわけなのかしら?」
「ン?あーそれは違うよ。ボクではく"時の番人"さ。ま、失う事や時間のルール関係で気になる事があればその人に質問すればいいよ」
みあの質問で、さっきアぺリラが何かを伝えようとしてた事を、伝えてくれなかったのが気になるけれど、大体は理解した。
それを踏まえて私はこのゲームに乗るかどうかを考える。
「ね、どうするの?一緒に時間旅行に行ってみる?忘れ物届けに行きたいでしょ?」
「みあ・・・・・・なら、ついでにみあも忘れ物届けに行く?」
「ま、ついでがあればね。て事でアペリラ」
「私たちはそのゲームに乗るわ」
まるで小学生のように両手を上げて喜ぶアペリラ。
それを見てなぜか微笑ましく思えたけれど、これから課せられる私たちの旅は・・・・・・
出だしから笑顔が消えると言うオチが待っていたのです。
「で、ゲームって言うからにはタイトルとかないのかしら?」
と、みあが聞くとアペリラはドヤ顔とともに答える。
「フフフッ。ゲーム名はね・・・・・・akuaだよ」