約束を果たしとこうか
(※読み始め3行、回想&説明です。ナレーション:ヒロ)
2013年の冬。
君とお別れしたその後。僕はグランドである物を見つけた。
それは、僕と君がいた木から反対側に見える木の下にあったんだよ。
「ひょっとしてタイムカプセル?」
「ああ。"この場所へ繋がる道しるべ"だった。正式にはパズルの最後のピース」
「じゃ〜お前さんは、そのタイムカプセルに入ってた何かで、ここに来れたと言うわけだな?」
ハクトの質問にうなずく僕。
「ちょっと待って!ヒロ。挨拶は後でちゃんとするから、先に答えて」
「ちょい待ちーな。色々と順序だてて話してる途中やろ?あはは。ヒロくんごめんやで」
あの子はいつもと変わってない。すぐにケンカ口調で僕に口を挟む。
君は本当に変わったね。でも中身はあの時のまま。だからなんでも先に見抜くんだな。
「悪いが先に話させてもらうぞ。今回ここに来れたきっかけは"コレさ"」
僕はポケットから、少しくたびれた封筒を取り出した。そして中身のアンケート用紙を取り出し、そこに書かれていた文字をみんなに見せる。
- 2017年 春に思い出の公園にて待つ -
「あ!これってあの時のアンケート用紙。ほら最初に飛んだ時の」
「そっか・・・・・・無事に届ける事が出来たのね。私・・・・・・」
そうさ。
あの時、あの夜。この公園の出口で。
君は思い出したかのように、僕に手渡してくれた────
『これで私もヒロの思い出に入れたかしら?』
『ああ。十分過ぎるくらいさ』
『そう、なら帰りましょ!』
『なぁ、みあ。僕の事は忘れてもらっても構わない。けど、他の仲間たちの事は』
『バカね。私にとっては、あんたが1番忘れられないわよ。なんたって、アンタは私のライバルだし』
『僕はライバルとは思ってないがな』
『あ。そうそう。この封筒を、あんたに渡すように頼まれてたのを忘れてたわ』
『この調子じゃ、真っ先に僕は思い出から排除されそうだな』
『うっさいわね。アキトもいるし憶えてるわよ』
こうして僕は、差出人不明の封筒を手に入れたんだ────
「でもね。残念だけど、これだけじゃ僕はきっと来なかった」
「なるほど。日付か」
「そう。だからその答えとなる物があのタイムカプセルの中身。そして、それを僕に教えてくれたのが"彼"」
そう。あの時、僕の前から姿を消さなかった本当の理由は、今日、この時間に僕を来させる為。
「そうだろ?仮面の男。もう出て来たらどうだ?」
「やれやれ。そう急かすな」
どこからともなく姿を現す彼。いや、そこの木の陰に隠れていただけかもしれないが。
「仮面さん」「石油王」「アラブの人」「うわ!俺好みの仮面」
「なんか沢山名前が付いたね。時の番人」
彼の名前を使って、軽い大喜利が行われていても、おかしくない状況だった。
「これでゲストは"3人"になったな。てか彼はゲストではないのかな?」
「俺はゲストで構わない。とりあえず、お前が気づいてくれて安心した」
「ま~知らない仲でもないからな」
僕と彼の会話を、安心して聞いている人が3人。不思議に思っている人が2人。
1人はハクト。あいつはいい。今回、彼との接点はなかったはず。
となれば、僕は彼女にお礼も兼ねて、してあげられる事をするだけ。
僕は彼に、あの子の隣りに行くようにと合図する。
彼も理解し、あの子の元へ向かい、立ち止まる。
「な、何よ石油王。私に何か言いたい事でもあるわけ?」
彼はうなずき、彼女に向かってこう言ったんだ。
「お前の望みの答えかどうかは、今となっては自信がないが・・・・・・」
言葉の途中で彼は仮面を外した・・・・・・
「あ、アキト!?」
「これが答えなら、お前の望みは既に叶っていたんだよ。"みあ"」
さてさて、そこそこのメンバーが集まった。
それでは。現実世界とakua内で起っていた真実を、ゲームマスターである彼女。
アペリラに語ってもらう事にしよう。彼女曰く、答え合わせだ。
「ハイ。そもそもボクがおねーちゃんたちの前に現れた理由ってなーんだ?」
「え~と。私の忘れ物を届ける為だったよね?」
「ウン。でもこれは半分正解なんだ。続けて話すと、おねーちゃんたちはおにーちゃんの過去をいくつか見て来たよね?」
「ヒロの過去を知ってもらいたかったと言うわけなの?」
「ウン。それもあるけど、少し違うんだ。答えを言うと、ボクは依頼されたんだ。"おにーちゃん"に」
みんなの視線が僕に集まった。が、僕はそんな依頼なんてしてはいない。むしろ僕は
「今回の件はまったく無関係なんだ。そう言えば答えは出るだろ?」
「うちはわかったけど、ここはみあちゃんが答えるべきやな」
「ちょ、何で私なのよ?でもそこまで聞けばわかるわよ。あんたなんでしょ?アキト」
「ああ。そうだ。俺が"妹"に頼んだ」
「い、妹ですって!?」
「ウン。みあおねーちゃんには話したでしょ?ボクにおにーちゃんが出来たって」
「え?じゃ、じゃーアペリラの兄貴って」
「ああ。俺だな」
「な。こ、この・・・・・・ロリコン王が!せめて親子関係にしろし」
「落ち着いてみあ。言葉使いもおかしくなってるよ」
「こ、こんにちは。・・・・・・なんか盛り上がってるとこ・・・・・・お邪魔します」
ん?聞き覚えのある声が聞こえた。どうやら最後のゲストが来たようだ。
僕は、いや、僕を含め全員が、その子の方を見る。
「お久しぶりだな。"さわちゃん"」
「こんな所に来るようにと、ラブレターを送ったのは"ヒロさん"?」
「いや、コイツだ」「え?お、俺?」
僕は身に覚えのない事だったので、ハクトに冗談で振ってみた。
「はは~ん。ハクさんか~。ならとりあえず説明してもらおっと。何で私を呼んだの?」
「正直に答える。知らん」
「だよね~さすがハクさん。実はハクさんもここに呼ばれた本当の理由、わかってないんじゃない?」
「俺は今朝のお礼と思ってたけど、彼女達の打ち上げのゲストに呼ばれたらしい。が、詳しくはわからんな」
どうやら楽しい宴を行うには、まず。僕も含め、色々と説明してもらう事が必要のようだ。
~ Nemesia day3_約束を果たしとこうか ~
諸々の事情や関わった理由など。みんなが理解する頃にはすっかり日も傾いて、ようやく彼女たちの打ち上げ、要するにパーティーが始まった。
とは言え、誰かが手料理を用意したわけでもなく、ありきたりな食べ物と飲み物を、みんなで囲んで話すと言う感じ。ただ、散り際の桜の木から、ごくたまに落ちて来る桜の花びらで、季節感をかろうじて感じる事は出来た。
「ね~見て見てしよさん。私もお揃いにしてみたよ」
「似合ってるよさわさん。でも綺麗なロングヘアだったのにどうして?」
「それはもちろん、失恋したからかな。な~んて」
高校時代の仲間以外で、唯一、僕と繋がりを持ってくれている"さわちゃん"。
彼女は僕とハクトと違い、ゲームで起きた出来事を忘れていない存在。
現に、しよの事やみあの事を、ここで再会してすぐに、あの頃の事をはっきりと話していた。
「不思議だと思いませんか?なぜ彼女だけが忘れていなかったのか」
僕の視線に気づき、しのが昔の口調で僕に話しかけて来た。
「ま、そうだな。僕は部外者だから想像でしか答えれないけれど。きっと誰かが意図的にそうしたとか?」
「ふふ。私も初めはそう推理しました。でも真実は、意図的ではなく偶然にそうなってしまった」
「偶然?それは予想外と言う言い方で合ってる?」
「うん。だって本人が望んで起こした出来事ではなかったのですから」
そう言って、しよの方に視線を送るしの。
彼女の推理によると、しよの"精霊化"により、その力が影響し、僕やハクトに過去の記憶を断片的に残した。そして、発動した時間軸に、最も近いさわちゃんには、ダイレクトにその力が流れて行ったとの事。
「そうだな。そう考えるのが妥当だろうな」
僕としのの話しを聞いていたアキトが話しに加わる。
その後。あの迷宮なしの名探偵(自分の事は除く)の小学生のような推理で、謎を解いて行くしの。さすが"見た目は子供、頭脳は大人"にふさわしい・・・・・・って、しのが僕を睨んでいる。
「いくらヒロくんでも怒るよ」「あ。ごめん」
おかしいな?口には出してないと思うのだけど、何でわかるんだ?
「と。言う結果だと思いますが、実際はどうなの?真犯人のアキトくん」
真実を解き明かして推理を終える彼女が、彼に答えを求める。
「確かにしよが使った力の影響で、ヒロ達に記憶は残った。その記憶を、俺が時間を閉じる時に、少しだけ残したんだ」
「それじゃ~偶然ではなくやはり意図的になるんじゃ?」
「そうだな。でもあの子は違っていた。多分しよの想いの強さが、彼女には大きく影響を与えてしまった」
「ですから、アキトくんが、ヒロくんと同じ要領分だけの記憶を、彼女に残す事が出来なかった。意図的にしようとした行動が通用しない。そこで記憶のバランスが崩れた所が偶然なんです」
「なるほど。しのはアペリラに頼んでさわちゃんを招待したんだっけ?」
「うん。少しだけ、現実世界から時間を遡ってもらって、招待状を届けてもらったよ」
「ここに来てもらう理由は、あえて内緒にしてだね?」
「ええ。ヒロくんも相変わらずですね」
「君には敵わないけどね」
「一体何を言っているんだ?お前達"変わり者同士の世界観"ってやつなのか?」
「いや。全てを知っているさわちゃんが、ココに呼ばれた理由を知らないなんて変だろ?」
「彼女には少し試させていただきました。本当にしよちゃん達の記憶が残ってたかどうかを」
彼女の記憶が残っていないのであれば、今ここには来ていない。
いや、むしろあの髪型にはなっていないとしのは言う。
そう。しのは、招待状の内容に、しよの髪型に近づけて来てほしいと、お願いをしていたんだ。
知らない人がそんな事を実行出来るわけがない。と言うか、しないだろう。
しかし彼女は、その要望に答えて来た。差出人不明。一般人には意味不明の文面でありながらも、こうして足を運んでくれた。
「ほんと、ますます似てしまったな」
「あの2人はヒロくんの理想の女性だったんでしょ?」
「お前はほんと一途だったんだな」
「う~ん。しよはともかく、さわちゃんは友達さ。それに理想と言うなら、しの。君も入るんだよ?」
「な。な、なに言うてんのヒロくん。アホな冗談やめてーな」
「何照れてるんだ?お前はヒロの最初の彼女になってもおかしくなかったろ?」
「・・・・・・さあ、どうでしょうかね」
彼女が僕の目を恥ずかしそうに見る。彼女の緊張が僕に伝わってくる。
「な~に雰囲気に流されとるか。ヒロ」
背後から、ゆるふわショートボブの女の子に声をかけられた。
「そう言わないでくれ"さわちゃん"」
「あら?何でひっかからないのぉ?」
「あは。さわさん、もう少し声を変えようね」
僕たちの会話に、更にしよとさわちゃんが入り、賑やかさが増す。
話しの途中、僕の視界にハクトが映る。どうやら、みあとアペリラの3人で会話をしているようだ。
・・・
・・
・
左手に桜餅を掴んで、不良少女に手渡す彼女。
喜ぶ少女と一緒に微笑む彼女。なんて和やかな雰囲気だろう。
だが、右手の包帯がどうしても目に入る。そのケガは彼女の優しさ、いや。強さなのだと俺は思う。
「何か食べたい物あったら言ってくれ。俺が取るから」
「ありがと。ハクトさんて見かけによらず優しいんだ」
「そうでもないけどな。あとハクトでいいよ。同い年だし」
「そう?なら私も呼び捨てにしなさい」
「あ~悪いがそれはムリだな」
「ダメ。アイツのことを気にしてるなら余計なお世話よ。現にヒロだって呼び捨てだしね」
「でも俺は君らみたいなバイト仲間じゃないぜ?」
その言葉を聞いて、彼女はくすって笑った。
何でだ?俺は普通に言っただけだが、どこかギャグに聞こえたか?
「あーハクト。言い忘れてたけどね、私もあんたと同じで"部外者"なのよ。繋がりはしよの友達ってだけ」
「え?そうなのか?俺はてっきり、君もバイトの人間かと思ってた」
「じゃー私の事を少しだけ聞いてもらえないかしら?情けない過去の話だけど」
「ああ。アイツらに近づけるなら是非とも」
そして彼女は語り出した。
懐かしいあの頃の話しを・・・・・・
・・・
・・
・
いつの間にか、さわちゃんが会話の主導権を握っていて、話題はこんな話しになったんだ。
「みんなが働いていたバイト先って、恋愛禁止なんて事はなかったんですか?」
「さ~僕はみんなより後に入ったけど、そんな話しは聞いた事なかったかも。どう?」
僕はアキトに振ってみる。アキトも知らないと言って、しよに振る。彼女も知らないな~と言って、しのに答えを求めた。
「恋愛禁止やったら、こんな面白い事になってなかったと思うでー」
「確かにそうですよね。じゃあ、変な質問していいですか?もし、私が同じバイト先にいたら~私は恋愛対象及び恋のライバルになってました?」
4人はお互い顔を見合わせて笑う。
「な。私は論外って答えなの?」
「いや、違うよさわちゃん。僕たちの関係ってさ、以外と単純なんだよ」
「どう言う意味なの?」
「あんなーさわさん。さっきうちらの関係は説明した通り、各々が恋をして自分を見つめて来たんや」
「だから、その時に君がいたとしても、俺らの関係は変わらないかもしれないし、変わってたかもしれない」
「つまりね。自然に流されるがままに、私たちは引き寄せ合ったり離れたりしたわけなの」
「さわちゃんみたいに、この人しかダメみたいな、欲望剥き出しの恋愛なんて僕たちは知らないんだ」
あ。でも例外がいたな。ま~あの子も元は純粋な子だからな。
僕は、向こうでハクトと話している彼女に視線を向けた。
「私は獣か!でもでも。ヒロさんは恋愛対象には入るでしょ?同じ顔だし。ま、アキトさんも少しはそう思ってくれないのかな?」
僕とアキトは少し困った顔をする。出来ればその話しはしたくないと言うのが本音。
でもこれはあくまでも"もし"って事の話。だからそんなに悩む事もないのだけれども。
「せやな。うちはこの際なしにして、しよちゃんとさわさん。2人はどちらを選ぶかを聞いて、この話しはしまいにしようや」
さわちゃんの求めている答えの本質を見抜いて、話のまとめに入るしの。
「俺はさわさんを選ぶ。そしてヒロはしよを迷わず選ぶぞ」
「そうだね。さわちゃんには悪いけど、僕はしよを選ぶ」
「ほー。見事に分かれた、いいえ。解れたようやけど、アキトくんがさわさんを選んだ理由は?」
「そうだな、性格がみあに似てるのと、料理が上手だからかな」
「うぅ。納得出来ます。あの時アキトがみあを選んだ理由も、きっとそれなんだね」
「しよさん料理苦手なの?」
あの~。なぜに僕を見て聞くのかね?
「苦手というかな」「個性の固まりやね」「ぼ、僕は気にしないよ」
「そっか~。負けてると思ったけど、勝ってる所もあったんだ、私」
独り言のように自分に言い聞かせるさわちゃん。
どうやらしよと自分のステータスを比べてたらしいが、僕からしてみれば、どちらも魅力のある女性なんだけどね。とは言え、そんな事を言っていると、しのもみあも該当するのだが。
要するに。今このメンバーの中で、誰かと比較しようだなんて事は、僕には恐れ多い。
「それって、女なら誰でもいいって言ってるように聞こえるんだけどなあ?」
こっそり僕の耳元で囁くしの。
「君は僕の心の中を見過ぎだぞ?何でわかるかは問わない事にするけど」
「ふふふ。ごめんなさい。でもヒロくんの事なら、今でもわかっちゃうんだ」
「それはしのが特別頭いいからか、僕が単純なだけなんだな」
「ねぇヒロくん。今、後悔してたりする?」
しのが伝えようとしてた意味は、なんとなく理解した。
後悔していないと断言したいが、素直な意見を言っていいのであれば、後悔はしている。
でも、僕は今の生活を、後悔して生き続けているわけではないんだ。
今は守るべき人がいる。だから迷わず僕はこう言える。
「大丈夫。今は僕を選んでくれた人に尽くすよ。しのと同じようにね」
「あら。ヒロくんに全てを見られた気がしたかも」
「おいおい、みあみたいな事言うなって」
僕と彼女は静かに笑う。
そんな視線の目の前では、まるで本当の双子のような彼女たちの会話が続く。
「ねえ"しよ姉"。お料理教えるから、おっぱいの大きさの秘訣を教えてよ」
「ほへ?そんな秘訣なんてないから~」
「うそだぁ。何かあるんでしょ?何を使ってるのかな?」
「やだ。しのちゃんどうにかしてよ」
「わ、私に、うちにそんな話題を振らんといてくれへん?」
顔は笑っているけれど、ものすごい圧を感じた気がした。
・・・
・・
・
みあさんの過去の話しは、決して笑える話しではなかったんだけれども、彼女は今も、罪を忘れず、彼女達の前では道化を演じている。が、仲間は真の彼女を知っている。それを理解し、今も繋がりを持ってくれている。
彼女の強さは、仲間への想いと根強い絆。俺はそんな彼女を尊敬する。だから。
「な~みあさん」「み・あ。次に同じ事言ったらデートはなしよ」
「そのデートなんだがな。やっぱいいや」
「どうしてよ?約束は守るわ。ハクトにはお世話になったんだし」
「いやな、何と言うか。君はアキトがいるだろ?」
俺は向こう側で話している彼の姿を目視し、彼女に伝えた。
「確かに私はアキトが好きよ。でもね、私も彼も今は距離を置いたの。1度くらいデートしても何も言わせないわよ」
「だからってなぁ~」
「何?もしかしてハクトの思うデートって、一線を超えるまで行けると思ってるわけ?」
「それは願ったり叶ったりだな。でもそこまで俺は鬼畜でもない。君に失礼だしな」
「あー君も禁止。名前で呼んでよ。簡単でしょ?」
なぜに俺が呼び捨てにしないのか?それは"しない"ではなく"出来ない"んだ。
答えは簡単。ただ恥ずかしいってだけ。
その事を正直に伝えようか悩んでいた時、不良少女が意味不明な事を口にする。
「みあおねーちゃん。この大きいおにーちゃんに、おにーちゃんと同じ事をしてあげればいいよ」
「アペリラ、同じ事って何?」
「それはね、おっぱいで顔を挟んであげるやつ。おにーちゃんにやってあげたら、素直に言う事を聞いてくれたよね」
「「なっ」」
「み、みあさんや。あんたは見境無しに身体を売ってるのかい?」
「ご、誤解よハクト。お願い、そんな顔しないで。これはこの子の冗談、そう冗談なのよ」
明らかに動揺をしている彼女。
そんな彼女を見て不良少女が更なる追い打ちをかけやがったんだ。
「おにーちゃん。しよおねーちゃん連れて来てくれない?」
「はいよ。今から行く」
ゆっくりとヒロとしよさんがこちらに向かって来る。
気のせいだろうか?2人の距離が近い気がするな。
「楽しくやってるようだなハクちゃん」「まーな」
「どうしたのみあ?落ち着かない様子だけど?」「そ、そうかしら」
2人が揃った所で、不良少女が左手の掌を上に向け、宙に浮かぶ球体を作り出した。
「覚えてる?おにーちゃん。みあおねーちゃんがコーヒー店でしてくれた事」
ヒロは何かに気づいてみあさんを見る。みあさんも少しだけヒロを見て、視線を逸らす。
「ほへ?どうしたの2人して・・・・・・」
しよさんの言葉が途切れたのは、説明しなくてもわかるよな。
しっかし、羨ましいやつだな。
「みあ?・・・・・・説明出来るんでしょうね?」
「ちょ、違うの。誤解なの。ね?よく見てよ。公衆の面前でヒロを誘惑していると思う?てかあんたの彼に手なんて出さないから」
「手じゃなく胸を出したでしょうが」
「しよおねーちゃんもおにーちゃんにしてたの?」
「知りません。子供はそんな事に興味持たないの」
「ま、まぁしよ。落ち着いてよ」
「ヒロ・・・・・・あなたもしっかりしないからこうなるのよ」
「す、すみません」
「この際はっきり言っとくわね、みあこっち来なさい」
しよさんがみあさんを呼んで一列に並ぶ。その対面にヒロがいる。
しよさんがみあさんの耳元で何かを囁いている。
「え!?ホントなの?」
驚きのあまり声に出してしまったみあさん。しよさんが右手で彼女の口元を塞ぐ。
そして先程の言い合いがウソのように静まり返る空気。
2人は一瞬、お互いを見てうなずき。
「「ヒロ。遅くなったけど、ご結婚、おめでとう」」
ほんと・・・・・・この人達は・・・・・・
俺には踏み込めない世界がそこにはあったんだ。
ただはっきりと言える事、それは・・・・・・この人達の繋がりは本物だ。
どんだけ傷つき傷つけられても、お互いを理解出来ている。
いい人ばかりじゃないか。お前が出会った女性は。
「ありがとう。しよ。みあ」
「大きいおにーちゃん。みあおねーちゃんはご褒美がほしいんだよ」
「ご褒美?」
「甘えているって言ったら伝わる?ボクあまり話すの得意じゃないから自信ないけど。みあおねーちゃんは大きいおにーちゃんに呼び捨てにされたいんだと思うよ」
なるほどな。友達のために自分を傷つけてまで頑張ってたんだもんな。
「なあみんな。ここからは遅めの結婚祝いと行こうじゃないか」
「賛成や、ならうちもついでに祝ってもらうでー」
俺の背後からしのさんが割り込んで来た。
「あ。ずるいよ。なら私も祝ってほしいな~」
続けて店長さんも入って来る。
「え?えぇぇぇ!?しのもさわっちも結婚してたの?」
「私も知らないよそんな事」
こりゃまた。仕切り直すには、また説明が必要になりそうだな。
その前に。俺は先に約束を果たしとこうか。
俺はみあさんの前まで歩いて行き、手を差し伸べた。
「祝いをするには、ちょいとばかし飲み物が足りないんだ。買い出しに付き合ってくれ。"みあ"」
「ま。仕方ないわね。付いて行ってあげるわ」
満足気のある表情を魅せ、俺の手を握ってくれた。




