やっとわかったよ
「これで大体の準備は整ったで」
「でも、どれだけ集まるかしらね?」
「それは後のお楽しみっちゅーわけや」
「てかさ。肝心のアイツは呼ばなくていいの?」
「あー大丈夫や。後でこっちから、無理矢理でも連れて来る方向やから」
「少しでも知らせてあげたらいいのに」
「お。みあちゃん、やっぱ彼の事は気になるんだ」
「ば、バカ言わないでよね。私は可愛い"妹"の為に言ってるの」
「ほんま素直やないんやから。でもそこが可愛いですよ」
「な。あんたねー」
「おねーちゃんたち。しよおねーちゃんが動くよ。見る?」
「「遠慮の方向で」」
「そ。ならボクだけ見るね」
akuaはいよいよ最終局面。
彼女は忘れ物を無事に届けられるのか?
その真実を知った時、彼の気持ちはどう動く?
全てを理解している彼女は静かに見守る。
これは。2人の男女が、後悔と真実を語る物語。
~ Nemesia day3_やっとわかったよ ~
私はあなたに忘れ物を届けに来ました。
忘れ物?僕が何かを忘れてたから届けに来たって事?
私は首を左右に降り、言葉を続ける。
正式には、私が忘れ物をして、あなたに届けに来たの。
ん?それって、しよのいる時代の時間でも、僕に届けられたんじゃない?
そうだね。だけど私は過去を選んだ。だって見てみたかったんだもん。過去のあなたを。
それは僕の過していた時間を知りたかったと言ってるように聞こえるけどな。
ま~そうだね。もしかして怒った?
何でさ?別に気にはしないよ。法を犯すような事はしていないしな。
ふふふ。おかげさまで、あなたを探しているうちに、色んな人にも出会ったの。
それは僕の友達とか?
ハクトさんにはお世話になったの。彼に出会っていなければ、あなたに会う事も出来ていなかった。
ほう。アイツがそんな重要な役割をね。でもそんなに出会う人っていなかったでしょ?ほら、僕って友達少ないんで。
その割にはきっちりいい女捕まえたでしょ?例えば"私にそっくりな人"だったかな。
さ、さわちゃんに会ったんだ。誤解しないでほしいんだけど、僕はあの子には手を出していない。
でも好きだったんじゃない?
私は、彼が文字で返信する事を止めさせて、頬を膨らませ彼を見つめたの。
「それも全部見て来たんだろ?そんなにいじめないでくれって」
私の頭に彼の右手が軽く乗っかり、軽く2回、ポンポンと叩き、彼は優しく笑う。
私はそんな彼の右手を左手で掴んで、自然に手を握り合ったの。
私はね、後悔していた。いつからと聞かれたら、きっとあの時から。何をと聞かれたら、あなたの事を。私は大切な人に甘えて、大切な人を捨てて、大切な人を忘れようとしていた。でも実際には違ってたの。私にとって大切な人は大切。だから昔を思い出すと心が痛かった。過ぎた日の事は仕方ないと思ってる。でも、どうしてもあなたに知ってほしかった事・・・・・・それを届ける為に私はやって来たの。
「それが、しよの忘れ物・・・・・・伝えたい想いってわけ?」
私はゆっくりうなずき、伝えたい言葉を送信せず、右手でスマホを握りしめて胸の所で画面を隠したの。
繋いだ左手に力を込めて・・・・・・声なき声で想いを形にする。
・・・
・・
・
君がここに来た理由。それは僕に隠していた"真実"。
彼女は後悔とも言っていたけれど、それなら僕も伝えなくちゃいけない事があるんだ。
だけど今は彼女の想いをしっかりと受け取ろうと決めた。
繋いだ右手に彼女の力が伝わる。
真っ直ぐこっちを見て、出るはずのない声で、口パクで、僕に伝えて来た言葉・・・・・・
私は・・・・・・あなたの傍にずっといたい・・・・・・
言葉を言い終えたと同時に、胸に当てていたスマホの画面を、僕に見えるようにして右手を差し出す彼女。
それを知るにはあまりにも長く、そして遅い。
いつかの僕が君に伝えた時よりも遠く、そして儚い。
けれど、想いは伝わった。
君の想い。だから、今度は僕の番だ。
僕は彼女に返信する言葉を打ち始める。
いつか君が言った言葉は、今でも憶えているんだ。その言葉は確か、もし夢が叶ってお互い変わってないなら、手を差し伸べるから離さないでくれる?って。今、お互い繋いでる手はこの言葉と行動が一致しないかもだけど、お互いが繋ぎたいから自然とそうしてる。正直な気持ちを言えば、この手は離したくはないんだ。
「あ、充電が」
僕はスマホの充電が切れそうな事に気づき、とっさに彼女に送信してしまった。
それと数秒遅れで電源が切れた。
中途半端な文面を彼女は読む。
そして、嬉しそうな顔つきになり、彼女はこう書いたんだ。
お互い気持ちは同じだったんだね。
彼女の事は別れてからもずっと好きでいた。それは今も変わらない。でも、僕にはどうしても伝えなくちゃいけない事があるんだ。だけど彼女は、僕の”全てを知って”ここに来たのか?だとすれば、まずは確かめてからにした方がいいか。
「なぁしよ。君は東京で僕と会ったけど、僕が何をしていたか知ってる?」
彼女は首を左右に振った。
なるほど。どうやら彼女は純粋に忘れ物を届けに来てくれたんだ。
・・・・・・ならこの時間が君に届けなくちゃいけない真実・・・・・・それは。
「気持ちは同じだったのはすごく嬉しいよ。でも・・・・・・あと少しだけ、君と早く再会出来ていたのなら・・・・・・"僕は君を幸せに出来ていたのかもしれない"」
・・・
・・
・
『・・・・・・あのな、しよちゃん。アペちゃんがゲームの時間を短くした本当の意味、知りたい?』
『ほへ?ええ。知ってるなら聞きたい』
『それはな・・・・・・"この時間に必ず来る"って事がわかったからなんよ』
『な、何を言ってるの?』
『その答えは、これから来る彼とちゃんと話してみればわかる。今はこれだけしか言えないけれど』
『・・・・・・うん。わかった』
あの時。しのちゃんが言っていた事。
『アイツが店長さんと仲良くなった理由には、間違いなく君がいたからだと思う。アイツは何年も何年も、君をずっと好きでいたんだなって俺は思うんだ。だから今から飛ぶ時間ってのは、多分お互いのこれからを決める大切な所』
『お互いのこれから?』
『なーんて、真面目なのは俺には似合わないか。ま、要するに、自分の想いは素直に相手に伝えろって事さ。これで未来が変わるとかじゃなくても。お互いの気持ちをもう1回見つめ直せるだろうしな。頑張ってくれ』
あの時。ノッポさんが悟らせようとしてた事。
『なら最後に一言送りますね。"本当に好きなら、奪う勢いで押して行く"。私が彼にやっている事です』
『へ、へぇ~。さわさん以外と大胆な子なのね』
『そうでしょ。愛なんて所詮は奪い合いなんですよ。私なんてしょっちゅうです』
あの時。さわさんが本当に伝えたかった意味。
全てが1つに繋がる。
そうか・・・・・・やっとわかったよ・・・・・・
他に好きな人が出来たんだ?
私は彼に質問すると、彼は東京の一件の事とともに、説明してくれたの。
「あの時、東京に行ってたのは、結婚式の打ち合わせだったんだ。彼女の住んでいる所がそこに近いという事で、僕がそっちへ行って式を挙げる予定にしていたんだよ。で、君が来てくれた今という時間。実は、僕が独身最後の日なんだ。意味は伝わったかい?」
独身最後の日。
と言う事は。明日は彼の結婚式。
だからしのちゃんは、最後の行き先だと言ってたわけね。
おそらく彼女は、本当の事を知ってしまい、私の為に、彼から直接伝えてもらえる場所を選んだんだわ。そしてこの場所に来るって事は、アペリラは理解していたのね。だから時間を短縮させたんだ。どこに飛んでも、最後はこの時間へ辿り着くようになっていたから。
結婚するんだね?
「ああ。せっかく、しよに会えたのに、想いを届けてくれたのに・・・・・・・・・・・・すまない」
沈黙の時間が数秒続く中、私の右手の甲が”紅色”に光り出した。
その光で、右足付近にある物を発見したの。
「この光は?君の手から?」
私は落ち着いてと右手でジェスチャーし、スマホに説明文を書いて彼にスマホを手渡したの。
彼が説明文を読んでいる中、私はさっき見つけた物を手に取り、右足近くの地面に突き刺し走らせる。
「要するに、もう帰る合図なんだね?」
彼が読み終わり、こちらに顔を向けた事に気づき、急いで右手に持っている物を地面に置く私。
そして。繋いでいた手を自ら解き、両手を広げて、彼に体重を預けるようにもたれたの。
慌てて彼も両手を広げて、上半身を抱き合う形で支えてくれた。
背中から滑り落ちるジャケット。
互いの温もりと胸の鼓動を感じ、自然と見つめ合った瞳。
紅に光る右手で彼の頬を撫でて、私は瞳を潤ませて、唇を小さく開く。
その行為は決して正しくはない、むしろ間違っているの。
でも彼は全てを理解してくれて、開いた唇に軽く重ねる。
2人は目を閉じ、強く抱きしめ合ったの。
ありがとう・・・・・・最後に一瞬でも愛してくれて。
どこからともなく足音が近づいてくる。
「あんたは、誰なんだ?」
彼が先に気づき、その人に向かって問う。
私も彼の視線を辿り、その人を確認したの。
「・・・・・・仮面さん?」
・・・
・・
・
「仮面さん?どう言う事・・・・・・て、しよ。声が出るのか?」
「え?あ、お。ホントだ!でもどうして?それより時間が止まってないの?」
「色々と気になっているようだな。まずは落ち着け」
僕たちは少し冷静になって、仮面の男に視線を向けた。
「では端的に説明しておこう」
仮面の男は語る。どんな内容かと言えばこう。
まず、僕には、正式にはプレイヤー以外に、彼の姿を見る事はないが、こうして姿を現した件。それは、akuaが終了し、この時間を閉じる為に現れたと言う。本来は、彼女を元の時代に戻してから行うようだが、今回は特別らしい。
次に、彼女の声が、付け加えると両足も戻っている件。これも、本来なら元の時代に戻ってから戻るはずの身体を、一時的に彼女に返したと言う。
では、なぜそんな事をする必要があるのか?
当然僕たちは彼に問うと、"彼女はゲームをクリアしたからだ"と答えが返って来た。
そう。彼女は見事、この僕に忘れ物を届けて目的を達成していたんだ。
「とは言え、時間はあまりないと思え。本来ならゲームは終了しているんだ」
彼の言葉で、本当に別れの時が来たのだと実感した僕。
「しよに会えて本当によかった。現在の僕に会ったらまた仲良くしてくれるかい?」
僕は立ち上がり、彼女に手を差し伸べる。
「うん。それまでに別れてる事を期待しておくわ」
「おいおい、そう言うなって」
悪戯に笑って、手を握る彼女。
グランドの木の下で2人の男女が手を繋いで笑顔を魅せる。
その木には、これと言った伝説なんてないのだけど、勝手に伝説をつけるとすれば
"時を超えた女の子が告白する場所"
って事になるのだろうか?ま、ゲームの世界だとそうなんだろうな。
僕には彼女がやっていたゲームが、どこまでゲームだったのか?と言う方が気になるけれど、とにかく僕は、この世界での役割はこれでおしまいのようだな。
「はい。しよの声。ちゃんと持って帰れよ」
僕は彼女から預かっていたスマホを手渡す。
「うん。本当は自分の声で伝えたかったけど、同じ答えを2度聞くのは辛いから」
「なぁ・・・・・・も」「やめよ・・・・・・ね?明日から奥様になる人に失礼だよ」
僕の言いたかった事を理解し、すぐに言葉を重ねて来た彼女。
「名残惜しいが・・・・・・限界だ」
僕たちの会話を何も言わず見守ってくれていた彼が口を開く。
「はい。これで本当におしまい。さよならね"ヒロ"」
「ああ。君の事はこれからも忘れない。絶対だ」
仮面の男が彼女に右手を向け、彼女は消えた。
その笑顔は昔も今も変わらない。
元気いっぱい胸いっぱいの笑顔だったんだ・・・・・・
「で、なぜあんたはココにいるんだ?」
彼女が帰って数秒。仮面の男はまだこの時間にいた。
「言っただろ。私はこの時間を閉じる為に来たと」
「なるほど。じゃあ僕は消滅するって事なのかな?」
「安心しろ。お前はこれからも生き続ける。閉じるのはゲームの方だけだ」
「そうか。理解出来ない事が多過ぎるけれど、そう言う事にしとくさ」
仮面の男は静かにうなずき、グラントにある"もう一本の木"に向かって何かを投げた。
「この場所は懐かしい。お互い、"想い人とは"上手く行かない未来だったと言うわけだな」
「なぁ。もしかしてあんたは・・・・・・」
言葉むなしく、仮面の男はすでに消えていた。
独りグランドに残された僕。
彼女に預けていたジャケットを拾い上げると、地面に何か書いてあるのが見えたんだ。
その位置は確か彼女の座っていた所。
文字に近づき、僕は自然と微笑んだ。
「ありがとう。僕の愛した人」
その文字は、彼女らしいポップな書体でこう書かれていた。
"お幸せに!" と────
・・・
・・
・
時は現在。
無事に帰ってきた私を、彼女たちが出迎える。
「「「お帰りなさい」」」
「ただいま、みんな。無事に届ける事が出来ました。ありがとう」
私はみんなの前で深く頭を下げると、下げ切った顔の正面にアペリラが見えたの。
「うわぁ、な、何?」
私は驚いて顔を上げようとすると、私の首に両手でしがみつき小さく呟いたの。
「ごめんね、しよおねーちゃん」
「ん?何でアペリラが謝ってるわけ?しよはちゃんとクリアしたんでしょ?」
「ほへ?みあは私の状況は見てなかったの?」
「あーうちとみあちゃんは遠慮させてもろうたんよ」
妙に苦笑いで私を見るしのちゃん。
今の私なら彼女が謝った理由はわかるの。
むしろこの状況をわかっていないのは"彼女だけ"。
それは友達としてどうなの?言うべきではないの?と思いながら、しのちゃんの顔を見てみると、"ネタばらしは後や"と言う顔をする。
なんだかよくわからないけれど、合わせた方がいいのかな?
「アペリラは、今日のゲーム時間を短くした事に謝ったんだよね?でも、私はそれを乗り越えたよ」
「でも何で時間を短くする必要があったのかしら?そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
「その話しはみんなが集まってからにせーへん?せっかくの打ち上げやし」
「他に誰か呼んだの?」
「まー声だけはかけたと思うけどな。果たして来るかどうかはわからんのよ」
「そうなんだ。なら私も何か手伝うよ?」
「何言ってるの?あんたは少し休憩しなさい。もう若くないんだから」
「な。いいもん。アペリラ、少しだけあっちで話そうか」
「ウン」
私とアペリラは、声の届かない場所まで歩いて行き、さっきの続きを話す事にしたの。
「私は怒ってないよ?むしろ感謝してる。だって、こんな体験をしなければ、本当の彼を知る事はなかったと思うのね」
「そう言ってもらえたらウソでも嬉しいかな」
「何でウソだと言うのかな?」
「だって、本当は真実なんて知りたくなかったんじゃない?」
「あ~。そ、そだね。まさかこんな結末だなんてね。正直あまり頭になかった結果だったよ。でもね。私も彼も、もういい歳なんだし、これが真実でもアリなのよ。うん。悔しいけどスッキリした感じ。だから・・・・・・ありがとう。アペリラ」
「しよ・・・・・・おねーちゃん。ならいいや。じゃあ右手を出して」
私は彼女の前に右手を差し出す。
彼女の左手が優しく滑り、右手の玉が消えて行く・・・・・・
「これでしよおねーちゃんは、ただの人間になった。ボクのゲームに付き合ってくれて、ありがとう」
「ええ。あ、そうだ。仮面さんの事なんだけどね」
「ウン。もうわかったようだね。なら全ての答え合わせをしよう。その前に少しだけ休んだ方がいい」
「そう?なら、少しだけ目を・・・・・・あれ・・・・・・」
「大丈夫。ほんとに仮眠程度だから。おやすみ。そしてお疲れさま」
・・・
・・
・
『ここらでいいです。ほんまおおきに』
『いや、気にしなくていいよ。所で、アイツの事は今も信じられないか?』
『え?私は大丈夫なんやけど、友達が心配かもです』
『なるほど、でも話すんだろ?』
『ええ。本人から直接話してもらうつもりです』
『アイツから?ならその友達も連れて来たらよかったんと違う?』
『そこらがややこしいとこでしてね。あ。ハクトさんコレを』
『ん?何やこれは?』
『招待状です。出来れば私がいなくなった時に開けてもらって、出来れば参加して下さい』
『了解っと』
と、ま~騙されたつもりで来ては見たけれどもだな。
「お、ハクトさん。こっちや」
「何?お、ハクトさんだ。そんなとこで突っ立ってないで、こっちおいで」
な、何なんだ?
ここは寂れた公園とは知っていたけれど、今朝会った彼女さんと、もう1人。
どこかで会った事があるようなないような。
ま~とにかくだ。綺麗どころが2人もいるし、俺もとうとう主役パートを手に入れた。
ここは誘いに乗らなきゃ男がすたるぜ!
「おお。今行くぞ」
これが彼女の言っていたお礼と言うやつなら、俺はお前に感謝するぞ。ヒロ。
俺はよこしまな期待を胸に、彼女達の所へ足を運ばせた。
「よ。今朝ぶり。今度は名前を教えてくれるのか?」
「あ、そうやね。今ならもう話せるから。改めましてこんにちは。この度は、うちのわがままに付き合ってくれて、ほんまおおきに。私の名前はしのと言います。そして、こちらが私の親友のみあちゃん」
「ま、よろしくって事ね、ハクトさん。ちなみに私はあんたの事を知ってるけど、覚えてるかしら?」
スレンダーなしのさんは知ってる。が、みあさんの方はいまいち記憶に、いや待て。確かアイツのバイト先の跡地で?
「すまん。君の事は知ってるんだが、なぜか記憶が曖昧でな」
「ほんと素直な人なのね、ハクトさんは。その答えで合ってるわ」
「どう言う事だ?そういやあと1人、みあさんと一緒にいた人がいなかったか?」
2人はクスクスと笑う。
まるで、答えを先に知ってるかのように。てか、実際は知ってるようだ。
「ハクトさん」「すまんが彼女の様子を見て来てくれへん?」
俺は、彼女達の指さす方向へ歩いて行けと言われたので、その先へ向かった。
そこには2人の女の子が倒れている。いや、寝ていたのだ。
1人は少女。しかも髪の色がサクラ色だなんて、とんだ不良娘だな。
驚いたのはもう1人の女性の方だ。
俺はこの人を知っている。この子はアイツのお気に入りだからな。俺の友達でもある。
「店長さん?何でここに?」
俺は思わず、声を出してしまっていた。
「ほ、へ?ぅ~ん。あれ?寝ちゃってた?」
「すまん。起こしてしまったな、店長さん」
「あ、は。違いますよノッポさん。私は彼女のそっくりさん」
「な、なんですとぉぉぉ!?」
店長さんじゃない?いや、確か似てた人に会った事があるな。この人が、みあさんといた人なのか?
そんな事を考えていたら、隣で寝てた少女も起きた。原因は俺の大声のようだ。
「うるさいよ」
「よ!不良少女。おはよう」
「なんだ、おにーちゃんの友達か」
「ん?俺の事知ってるのか?」
こんな少女まではさすがに知らない。ロリは好まない俺に、こんな知り合いなんかいてたまるかコンチクショウ。
「あー騒がしくしてしもーたな」
「予想道理のリアクションで楽しかったわ」
2人がこちらへと駆け寄って来る。
これで女は4人と男が1人。まさにハーレムではないのか?だがロリは断る。
そんな妄想を頭の中で描いているが、真面目な話。この集まりは何なんだろう?
俺はとりあえず質問してみると。どうやら彼女達の打ち上げにゲストとして呼ばれたらしい。
「ちなみに、ハクトさんがゲストの中で1番に来たわ。喜びなさい」
「ん?て事は、あと何人か集まるのか?」
「すでにお楽しみのようだね。ハクちゃんがいるって事は、僕は"2番目"の招待者かな」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
うすうすは感じていたのさ。俺が呼ばれていて、アイツが来ないわけがない。むしろアイツがいるから俺が呼ばれてるって事はさ。あ~世知辛いね。
「あ、おにーちゃん来た」「え?ウソやろ?」「まだ呼んでなかったわよね?」
不良少女としのさんとみあさんがほぼ同時に口を開く。
しかし店長さん似の彼女は、彼に向かって歩き出していた。
彼もまた少しずつ歩み寄る。
2人が程よい距離で立ち止まり、彼女は優しく笑ってこう言ったんだ。
「・・・・・・君は今も幸せ?」




