もうゲームではないわよね?
部屋のすみっこにあるベットの上。
右手に包帯を巻いた親友の姿が見える。正式には、指以外を包帯に包まれているって所。
寝相が悪いのか、わざとなのか?被っていた布団がベットから落ちていて、下着姿のわがままボディが、私に向かって挨拶をしています。
私は少しだけ苛立ちを覚えましたが、起こさないようにそっと布団をかけなおして、部屋から出て行きました。
朝の光が街を明るく照らす時間。
私はコケティッシュな服装で、ある所へと足を運ばせます。
それはどこかと問います?
ふふふ。それはですね。
~ Nemesia day3_もうゲームではないわよね? ~
2017年 4月。某日、日曜日。
「おはよーしよおねーちゃん。気持ちは落ち着いた?」
「おはよう、アペリラ。ええ。あなたの力をムダに使ってしまって、ごめんなさい」
「そんな事は気にしないでいいよ。少しだけだったけど、ボクと同じになれた感想は?」
「う~ん。自分の欲望に使用する物ではなかったと反省してる」
「ウン。じゃー次の質問。今日が最後だけど、まだ過去に残りたい?」
「まさか。でも、今日こそは彼に届けられるように頑張るつもりよ」
と、言ったものの。
実はもう彼を知る情報が無いのも事実。
ノッポさんの提供してもらった情報はもう使い切ったし。
「しよぉぉぉ大変よぉぉぉ」
なんか昨日も同じような光景を見た気がするのは私だけ?
遠くから、ものすごい勢いでこっちに向かって走って来るみあ。
右手には包帯を巻いているのがわかる。
「みあ。わかったから。そんなに走ると傷に障るからやめて」
「あ、みあおねーちゃん。昨日はご飯ありがとう」
「よ!アペリラ。今日も桜餅買って来たわよ」「ほんとにー?やったぁー」
「おはよう、みあ。えっと、昨日は本当にごめ」「私は何があってもしよを見捨てない。あの時、私を救ってくれたようにね」
「みあ」
「それより聞いてくんない?朝起きたら、しのが家からいなくなってたのよ」
「ほへ?昨夜は行き先とか言ってなかったの?」
「何にも。昨夜はしのとあの話しで怒らせたくらいで」
「どう言う事?詳しく話してよ」
「そうね。あれはちょうどお互いシャワーを浴び終わった時────」
・・・
・・
・
決して日焼けではないけれど、彼女の肌は顔と同じくらいの黒さ。
黒いと言ってもほんの少しだけね。うすい小麦色と言えばいいのかしら。
「とにかく綺麗よね。しのの身体って」
バスタオル姿の彼女に見とれてしまい、素直な気持ちを口にしてしまった私。
「はう。い、いきなり何を言うのよ?しかも、とにかくって何なん?」
「細かい事は気にしなくていいわよ。ね?しの」
「な、何ですか?今度は真剣な顔をして」
ほんと、可愛い反応するのね。彼女は女3人の中では、"かなり"変わったわ。
それは決してマイナスではなくて、むしろマニア向けに。
「おい。また変な妄想しとるやろ?はよ言うてよ」
「今日は本当にありがとう。しのが来なかったら、しよは本気で消滅してたわ」
私は素直に頭を下げて、感謝の気持ちを伝えたわ。
「これも運命かも?だって、みあちゃんが連絡してくれなかったら、私はここに来なかったしね」
「運命ね。とにかくこの仮は必ずお返しするわ。そうね、毎日私の全てを見せるとか」
「はっ。や、やめてよね。昨日もう見たわよ。そんなに私を虐めて楽しいの?」
「何で?私だってあんな姿見せるのは、しのかしよくらいよ。てかなんで裸が虐めになるのよ?」
「だ、だって、ぅらやましぃもん。大きいし」
ははーん、やっぱここは女の子でも気になるのね。年甲斐も無く赤くなっちゃって。
「えー?聞こえづらかったわね?」
私は悪戯に、身体に巻き付いていたバスタオルを外し、両腕を胸に押し当て、持ち上げる用にして彼女の前に近づいてあげたわ。
「だ、だから、それをやめーな!ほんと意地悪なんやから。てか裸で近づくなや!変態」
・・・
・・
・
ある意味、この女ならやりかねない、いや。もう犯行は行われたのだけれど。
私は呆れた顔で、お決まりのセリフを言わざるを得なかったの。
「この変態アダルト鬼畜」
「な。ま、今回は認めていいわ。だっていなくなったんだし。でも決して手は出してないんだから」
「手を出してたらケガが増えてたかもよ?しのちゃんて以外と強いのよ。知ってた?」
「それは初耳ね。護身術的な物を心得てるってとこかしら?」
「ま~ね。気になるなら実際に体験してみればいいよ」
「サラッと怖い事を言ってくれるわね。私はいつも盛ってなんかいないんだから」
「ねーネー。先に桜餅食べたいよボク」
空腹のアペリラの訴えを聞いてあげて、私たちは先に食事する事にしたの。
「ほんっと、どこ行ったんだろう」
「気になるなら電話したら?もしかして連絡もつかなかったの?」
「あ。なるほど。その手があったわね」
基本的な事をやっていないなんてね。なんかみあらしいって所かな。
彼女はスマホを取り出し、しのちゃんに連絡をとってみる。
「はい、どうしたん?」
「あんた今どこにいるの?勝手にいなくなって心配してるんだから」
「あーごめんなさい。今、そっちに向かってます。詳しい事は後で話しますから、切るね」
「え?ちょ、し・・・・・・切れちゃった」
「しのちゃんの居場所は掴めたの?」「今、こっちに向かってるって」
「そう。なら、しのちゃんの分も残しといてあげなくちゃ」「残すって何を?」
「みあの買って来てくれた食事よ」
数分後。
「おはようございます。残り6時間の旅。頑張りましょう」
「おーい。来て早々に、話しを勝手に進めないでほしいわね」
「あら、美味しそうな桜餅ですね。私もいただいていいですか?」
「ウン。おねーちゃんも一緒に食べよう」
「おーぃ。しのさんや。聞いてるの?」
「所でしよちゃん。今日はどの時間に飛ぶ予定なんですか?見れば今はアペちゃんと"2人でいる"ようですし」
「あーごめんなさい。もうしのには乳を自慢しないから。ね?小さくても可愛いじゃない」
「小さいって言うなや」
「あ、はは。もう仲直りでいいでしょ?」
しのちゃんの合流で、とりあえず現状のメンバーは揃ったわけで。
私たちは食事をしながら、彼女の話しを聞く事にしたの。
「朝早くから一体どこに行ってたわけ?しかもそんな大胆な格好で」
「はう。やっぱやり過ぎ?あまりミニスカートって着ないから」
「「いや、むしろアリ」」
「あうぅ。何2人してハモってるんよ?」
「もしかして、こっちにいる大切な人と会ってたとか?」
私は冗談で言ってみたのだけれど、彼女の口元が自然にニヤけて
「さすがやね、しよちゃんは。そう。とっても大切な人や」
「「それは誰?」」
再び声がハモってしまった私たち。
彼女はどや顔でその人の名を叫んだの。
「その人の名は。ヒロくんや」
ヒロ?え?えぇぇぇぇ!?
・・・
・・
・
話しは数時間前に遡ります。
私はある目的の為、早朝の電車に乗り込み、彼の住んでる街へと出かけました。
彼の名はヒロくん。
高校生の時、まだお互いが恋愛経験を全く体験していない頃。
私と彼は、引き寄せ合いました。
でも・・・・・・
ま、世の中そんなに上手く行かない。
今思うと。お互いのステップアップの為に、神様が私達を近づけてくれたのかもしれません。
今でもいいお友達だと思っています。
ですが、今から彼に会うのは、私と彼の昔話をする為ではありません。
そんな事をすれば、しよちゃんに対して悪いし、抜け駆けはよくないでしょ?
だから。
「確かここだったはず」
家の表札を確認し、彼の家だと確信した私。
なんか緊張するなぁ。とりあえず言葉遣いを昔のままにして、決して"私だと"気づかれないようにしないと。
玄関の手前で深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
そういえば、彼の家まで来たのは初めてだよね。
住所は知っていたけど、実際に足を運んだ事はなかったのです。
約25年の時を経て、ようやく来れた場所。
って。何自分から彼と恋愛する流れに持って行こうとしているのよ。
違うでしょ。私はもういるの。そんでもって今はしよちゃんの為に頑張るの。
私は呼び鈴の前に立ち、右手の人差し指で、ボタンを押そうとする手前でした。
着慣れない短いスカートが、風の悪戯で少しだけ舞い上がり、反射的に左手でスカートの裾を押さえ込んだのです。
その時、鳴らしてない筈なのにドアが開き、ラフな格好の男性が出てきました。
私はその男性とお見合いしてしまいまして、さっきの動作で少しだけ上半身が前屈みになり、乏しい谷間が無防備に晒されている事を知り、私の体温は急上昇してしまいました。
も、もちろんちゃんと着けてますよ?ただ体制が、ちょうどその部分に視線が行く格好だったので、私はただただ恥ずかしかったのです。
男性もすぐに視線を逸らしてくれましたが、あっちからしてみれば、私が不審者扱いなので、とりあえず顔を引き攣らせながら
「あ、あの。信じてもらえないかもしれませんが、これは事故ですので」
「わ、わかりましたから。スカートも少しだけ整えて下さい。少し下がってますよ?」
はう。し、死にたい。
「大変失礼しました。あ、あの。決して怪しい者ではございません」
乱れた服装を急いで整える私。
「知ってます?怪しい人程、そう言う言い方をするんですよ?とは言え、僕も見られたくない所を見てしまったようですので、すみませんでした」
「いえいえ。所で、この家の息子さんですか?」
「はい。ヒロと申しますが、どちら様?」
ふぅー。見られたのがヒロくんでよかった。
じゃない。これで接触は出来た。後は失敗しないように"作戦開始"です。
「あの、私。ヒロさんの友達の"彼女"なんです」
な、なんですとぉぉぉ!?(byしよ&みあ)
まだ話しの途中やって、ここで中断したら意味不明やで?
で、何でそんなウソをついたの?(byしよ)
ほな続きを話すでー
「僕の友達?イマイチわからないんで名前言ってもらえませんか?」
実は私もわからないんです。だって、会った事ないですもの。
でも名前だったら昨夜、みあちゃんが食事の時に話してたので知っている。
「ハクちゃんと言えば理解していただけます?背の高い人なんですけど」
「ハクちゃん?ああ。"ハクト"だね?」
ハクトさん?これが彼の本当の名前なんだ。
「そ、そうです。ハクトさん。実はヒロさんにお願いがありまして、ここに来ました」
「お願いですか?それは何です?」
私は彼に、ハクトさんに会う為に電車に乗ったのはいいけれど、スマホを家に置き忘れてしまい、連絡が取れないので、途中。ヒロさんの家に訪ねて、連絡を取りたかったと伝えました。
当然、何で僕の家の住所を知ってると聞かれましたので、彼がよくドライブでこの道を通るんですよねー。なんて誤摩化してその場をしのぎました。
「そうでしたか。じゃ~早速アイツに連絡してみます」
「お願いします。あの。直接彼に話したいので、後で代わってもらっても」「もちろん。そのつもりです」
ヒロくんはスマホを耳に当て、ハクトさんに電話を繋いでくれています。
その横顔を、隣りで見上げて見る私。
ごめんねしよちゃん。今だけは彼の側にいさせてね。
「こんな朝っぱらから、ヤローのモーニングコールはお断りだぞ」
「ま~そう言わずに。用事は僕じゃないんだ」
「お前じゃなきゃマッハか?」
「とぼけなくていいんだよ。ほんと恋愛に関しては僕らに隠してこそこそしてるんだな」
「ん?一体何を言っているんだ貴様」
「はいはい。じゃ、そろそろ代わるから、怒らないで優しく振る舞ってやれよ」
「おい。だからなんだってんだ?」
途中。ハクトさんが、何か喋っていたようですが、無視し、彼は私にスマホを手渡してくれました。
私は彼に軽く頭を下げて、彼に声が届かない場所まで離れて口を開きます。
さぁ。ここが本当の勝負よ。
「あ、あの。理由は後でちゃんと話します。お礼もします。だからお話を聞いていただけますか?」
「・・・・・・え?女の?・・・・・・君は?」
「私はヒロくんの友達です。でも彼には貴方の彼女と言いました」
「何でそんな嘘を?俺と君はまったく接点がないと思うのだけども?」
「正論です。ですが、今回はあるんです。どうしても聞いておきたい事があります」
「・・・・・・女の子の頼みは断り辛いわな。ええよ。どうすればいい?」
「ハクトさん・・・・・・ありがとうございます」
「おっと、名前も知ってるんだな。で、君の名前は?」
「あ、あの。ごめんなさい。後でちゃんと教えます。だから」
「了解っと。話しが途中だったな。俺はどうすればいいんだ?」
私はハクトさんと会話を終え、彼にお礼を言ってスマホを返しました。
「しかし、アイツにこんな可愛い彼女さんがいたなんて」
「いえいえ。私って、何もかも小さいじゃないですか。色も黒いし」
「でも魅力的ですけどね。あ、口説いてるってわけじゃないですからね?な~んか。あなたを見ていたら、知り合いを思い出してしまって」
私は一瞬ドキッとしました。
「お知り合いですか?」
「ええ。僕にとっては恩人の用な存在なんです」
「彼が来るまで少し時間はありますし、よろしければ散歩しながら聞かせていただけませんか?」
「ええ。あれは僕が高校でバイトを始めた頃でした・・・・・」
彼は私との思い出話しを語り出します。
私は自分の記憶をなぞるようにして彼の話しに相槌をうって、思い出に浸りました。
結果的に思い出話をするような形にはなってしまったけれど、私の存在は彼にはバレていません。
正直、私だよ。って伝えたい気持ちはありましたけど。
東の方から1台の車が走って来るのが見えました。
四角いコンパクトカーから降りて来た人物。
この瞬間に、私とハクトさんは初の顔合わせをします。
「よ。ハクちゃん。彼女がお待ちかねだぞ」
事情を知らず真顔で彼に話しかける姿を見て、思わず微笑んでしまいました。
「お、おう。すまんかったな。彼女が迷惑をかけた」
若干、片言で話す彼。彼もまた、笑いをこらえているように見えたのです。
これはあまり時間をかけるとバレてしまうと思った私は
「さぁハクさん。行きましょう」
彼の腕にしがみつき、上目遣いで彼を見る私。
「そ、そうだな。じゃ、またな」
ヒロくんから逃げるように車に乗り込み、ハクトさんは車を走らせました。
・・・
・・
・
「とりあえず話はここまでや」
「ちょ。結局ヒロに会いに行った目的は、ノッポさんことハクさん改め、ハクトさんに会う為だったわけ?」
「うーん、実はそうやけど、ちょっとだけ違うんよ。多分しよちゃんならわかって来てるかもしれへんけどな。さっきから考え事しよるみたいやし」
「ほへ?あ。これは推測だけど、しのちゃんは2人からなんらかの情報を」「はいストップ」
私が最後まで言ようとしていた言葉を、しのちゃんは途中で止めさせ、私とアペリラを交互に見て口を開いたの。
「あんなーしよちゃん。今日が最終日なんは知ってる。正直あてはあるん?」
「いえ。今の所ないわ」
「んで、しよちゃんの目的はヒロくんに忘れ物を届ける。正式には想いを告げる事で間違いないよね?」
私は何も言わず静かにうなずいた。
「ならここで選択や。あてもない時間旅行に飛び込むか、今から彼に"直接会う"か。しよちゃんの好きな方を選んでええで」
「直接ですって!?それじゃーもうゲームではないわよね?」
「せやな。でもしよちゃんの胸に秘めてる気持ちって、本当にゲームの中で納まる大きさなんやろか?昨日の件を見てみあちゃんもわかったと思わん?」
「それは・・・・・・」
右手の包帯に視線を落とし黙ってしまうみあ。
「ま、単純に考えると後者を選ぶと思うけど、とりあえずしよちゃんの意見を聞かせてくれへん?」
しのちゃんの選択は、このゲームを始める前からあったの。
わざわざ過去に行ってまで想いを伝えなくても、実際に会って言ってしまえばいい。
誰しも当たり前の答え。でもあえてしなかったのは。
「確かに直接会えばいいだけよね。でもね。私とみあは彼女のゲームに乗ったわ。途中で逃げ出すって事はアペリラに失礼だしね。それに、私はあと少しだけ"過去のヒロを見ていたい"」
アペリラの頭を軽く撫でて答える私。
その答えを聞いてしのちゃんは、呆れ顔を見せると思ってたのだけど。
「なら決まりやな。あてもない時間旅行をうちが変えてみせるから」
「しのちゃん。あなた、もしかして最初からそのつもりだったの?」
「さーなんの事やろか。なーアペちゃん、質問してええ?」
「ふん。まぁに?(訳:ウン。なーに?)」
大好きな桜餅を口にほうばり答えるアペリラ。
「1度行った時間と場所は行かれへんかったよね?」
「ふぅ。美味しかった。あ、そうだよ。2度はムリ」
「じゃー同じ場所で、例えば1時間くらい時をずらして飛ぶのは可能やんな?」
「ウン。ただ、おねーちゃんたちが訪れた時間に到達すると、その時点で行き止まりになるんだ」
「ん?いまいちよくわからないわね」
「要するに。私たちが訪れた過去の更に1時間前に飛んで、1時間過ぎると、そこは存在しない時間になるからって事よね?」
「正解。だから飛ぶなら注意してね」
「よっしゃ。これで場所と時間は決まったで。さっさと行って終わらしてこよ。その後は楽しい"打ち上げや"」
「「打ち上げ?」」
私とみあが首をかしげてしのちゃんを見る。するとしのちゃんは笑顔でこう答えたの。
「せっかくみんなと会えたのに。このまま帰るのは勿体ないです」
その言葉で私とみあは顔を合わせ微笑む。
「確かに勿体ないですわね」「なら終わったら打ち上げにしますですわよ」
「あー。バカにすんなや。とくにみあちゃんの語尾に腹立つわ」
3人の笑い声が公園に響く。
それを楽しそうに見ているサクラ色の少女。片手に桜餅を持ち、口に運ぼうとした時、何かを思い出し、しのちゃんに問う。
「おねーちゃん。おにーちゃんの所に行って"今の情報"を聞いて来たの?」
「正式にはハクトさんからや。もちろん"過去の情報"もちょっとだけは聞いたで」
「そっか。ならもうakuaは始まってた事にするよ?」
突然、意味不明な事を口走るアペリラ。
「ちょ、まだ過去に飛んでないじゃない、どうしてよ?」
みあが当然のように抗議する。しかし、それを止めるしのちゃん。
「しの、何で?」「ええから。うちのわがままや」
「ええで。アペちゃんがどういう意図でそう言ったとかは不問にするから。こっちも好きなようにさせてもらうで?」
なんなの?なぜか会話に違和感を感じるのだけど。
「ウン。で、どれだけ時間を使ったの?」
「3時間って所やな。ウソやと思うなら後で調べてもらってもええで?遠慮せんと持って行き」
アペリラと会話を終え、私の所に歩み寄る彼女。
「ごめんなしよちゃん、時間をムダにしちゃった。でも、あと3時間あれば。必ず」
彼女の真剣な眼差しを受け止め、わかったとうなずく私。
「ね?しよ。私は今回・・・・・・」
弱々しい言葉で私に声をかけるみあ。
私は彼女の所まで歩み寄り、そっと両手で彼女の右手を包んだの。
「大丈夫。私の為に、こんなになるまで必死になってくれて本当にありがとう。そして・・・・・・ごめんなさい。”姉さん”」
「しよ・・・・・・ほ、ほら。早く行って今度こそアイツに全てを伝えるのよ?それに、私は姉さんじゃないわ。私の妹なら、もっとエッチな事を堂々と出来るはずよ」
「ほんま、あんたの頭ってそんな事ばっかなんか?まだまだ素直さが足りひんな」
「う、うっさいわね。いいからもう行きなさいよ」
「あはは。じゃ~行こうかしのちゃん。場所と時間を教えて」
「わかった。今から行く所は・・・・・・」
私の右手と彼女の左手が交わる。
互いの手の甲から眩しく光り出す光。
2人は視線を合わせて優しく微笑み、そして・・・・・・力強く叫ぶ。
「「mana ekahi」」




