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Nemesia  作者: 五流工房
Nemesia本編
11/18

最後の言葉

「どうせ無くなるのなら・・・・・・ワタシはこの時で彼と一緒に・・・・・・」



『時の番人が言った通り、彼は奪うだけの存在って事は理解したよね?』

『ええ。仮面さんは与える事は出来ないと言っていたのは覚えてるわ』

『ウン。だから条件を満たした時、その力を与える事が出来れば、過去には残れるんだ』

『条件と力?それはアペリラが与えてくれるの?』

『半分正解。ボクは条件を作るだけ、与えるのはおねーちゃん自身。でもそれを使うとおねーちゃんはもう戻れない。意味わかるよね?』



もう、戻れなくていい。

右手の甲に力を込め、条件を発動させる。



『ハイ。色々と説明しちゃったけど、それを知っても過去に残りたい?』

私に向けられたアペリラの左手が光り出す。

『・・・・・・残るかどうかはわからない・・・・・・でもここまで聞いといて後にも引けないわ』

私は右手の甲をアペリラに向ける。

『なら教えてあげるよ。後の事はおねーちゃんが決めればいい』

アペリラが私に向かって光を放つ。

その光はまっすぐ私の右手へ飛んで来たの・・・・・・

『ゼッタイ動いちゃダメ!ボクを信じて』

光が右手の甲にある小さな玉に当たり、その光を玉が吸収して行く。

『な、何?どうなって』『大丈夫。すぐに終わるから』

光を全て吸収し終わると、アペリラが何かを唱えているのがわかったのだけど、言葉が聞き取れなかったの。

『これで準備はできたよ。後は発動方法の言葉と、この力の使い方を教えるね』



ワタシはあなたと、この時を過ごすの。そう。永遠にね・・・・・・

力強く立ち上がり、紅色に光る右手を胸の位置まで上げた所で、黒い炎が右腕に灯る。



そして勢いよく右手を払い、瞳の色(こうさい)を"金色(こんじき)"に変化させ、私は叫ぶ。


welina(ウェリナ)




Nemesia(ネメシア) day2_最後の言葉(トリガー)




あの光と黒い炎。何が起きたかわからない。

けれど、そんな理由はどうだっていいのよ。

ただ1つだけ理解出来るのは、あれはきっと彼女が知りたがっていた事。


「答えて石油王。しよはこの時に残るつもりなの?」

「ああ。自分の魂を引換にしてな」

「魂ですって!?助ける方法はないの?」

「彼女はもう発動してしまったのでな。手遅れだ」

「手遅れ?あんたそれでも時の番人なの?」

「すまないがこちらも条件が必要なんでな。今のままでは無理だ」

「ならどうすればいいの?手短に教えなさいよ」


「ワタシの邪魔をしないで」

彼女は右手をこちらに向けた時、私と石油王は見えない何かに吹き飛ばされたわ。

地面に叩きつけられる手前、石油王が私を抱いて助けてくれた。

「あ、ありがとう」

「礼はいい、それよりこのまま説明する。聞いておけ」


吹き飛ばされたおかげで彼女との距離が相当離れたわ。

でもおかげで彼女には声は届かない。

さっきみたいに話しを聞かれて攻撃されても困るし。

とりあえず私は、石油王から彼女を止める方法を教えてもらったのだけれど。


「リセット?つまり15分以内のあれ?」

「そうだ。今の彼女はもちろん、お前でも不可能だ。時間の上限が来ている」

「でも、止める為にはそれしかないのよね?だったら私を元の時間に戻して」

「何をする気だ?」

「正直わからない。けどあれがアペリラの力なら、本人に直接頼めばいいんでしょ?」


「だから、ワタシの邪魔をするなと言ってるの」

会話の途中。音も立てず、まるで瞬間移動をしたかのように、彼女が目の前に現れる。

「あなた、もう意識はないの?私が誰なのかも理解出来てないの?」

私は驚かず、彼女に強い視線を送り質問する。

「フフフ。何を言ってるのみあ。私は、ワタシ」

「危険だ。下がれ」

石油王が右手を彼女に向ける。

「待って、しよを傷つけないで。ね?しよ。今やってる事があなたの望みなの?」

「望み?そうね~ワタシは彼とここで永遠に過ごすの。素敵だと思わない?」

そう言いながら私に右手を向ける彼女。


「私はね、あんたを必ず助けるから」

人間(いま)希望(ちから)じゃ、精霊()の私には敵わないわよ?みあ」


私は石油王に合図を送る。


「なら、精霊の力を借りるまでよ」


彼女の目の前で私の姿が消える。


「仮面さん、何を企んでいるの?」

「さて、それは彼女を追いかけて聞いてみるといい」

「・・・・・・その必要はないわ。ワタシは目的を果たすまで」

「ならば、しばし時間稼をさせてもらう」

「まだワタシの邪魔をするつもり?」

「ああ。"お前"と"みあ"のためだ」


互いの右手が狙いを定める。

『しよを傷つけないで』

「さて、難しい注文だな・・・・・・だが、やってみるさ」


・・・

・・


akua(ゲーム)から"みあおねーちゃんだけ"が元の時間に戻って来た。

さっきまで見ていたから状況はわかるんだけどね。結論から言ってしまえば。

「何で無理なのよ?力を借してよ」

「あのね、今のおねーちゃんに力を与えても、今日はもう飛べないの」

「だったらアペリラが行って助けてよ。お願いだから」

「そうしてあげたいんだけど、しよおねーちゃんを助ける方法は、時の番人から聞いたでしょ?」


それに、その力を使うには"精霊(ボク)"じゃダメなんだ。

彼女は人間。それに精霊の力を混ぜた存在。その力を無効化するには同じ条件の"人間"が必要なんだよ。それに当てはまる唯一の存在は、みあおねーちゃんだけ。


「もういいわよ。もう1度飛んで、私がなんとかする」


みあおねーちゃんの右手の甲が白く点滅するのが見える。


「ダメだ、みあおねーちゃん。限界を超えた時間移動なんてムリなんだって」

「でもやらなきゃしよを助けられないでしょうに」

「だからダメだって、それ以上は精霊の玉(それ)が持たない」


彼女は右手に意識を集中させ、強引に飛ぼうとしている。

でも、限界を超えた手の甲の玉(精霊の玉)は悲鳴をあげる。


「い、痛い!」


みあおねーちゃんが苦痛を訴える。

ボクは無理矢理おねーちゃんとの繋がり(リンク)を解除した。

「ぅ。・・・・・・やれやれ。こっちまで流れて来ちゃったよ。それより、みあおねーちゃん大丈夫なの?」

見れば、みあおねーちゃんの右手の甲は赤く染まっていたんだ。

その中心にあった精霊の玉も、付加がかかり過ぎてひび割れていた。


「痛いわよ。でもね、しよを救えないのはもっと痛いの!だから・・・・・・お願いょ・・・・・・」


彼女は地面に力なく崩れ落ちて、大粒の雫が零れる。

「とにかく今はそれを治さなきゃ。って言ってもボクは治し方知らないし」

どうしよう?とりあえず精霊力(ちから)で部分的に時間を止めようか?



遠くの方から小さな足音が近づいて来る。

ボクはそれに気づき、精霊力を使うのをやめた。


・・・

・・


「いい加減にしてよ!」


右腕の炎が全身へと飛び移る。

あの黒い炎は彼女の魂。それが燃え尽きた時、彼女の望みは果たされる。


「やめろ。それ以上の力は、お前を本当に消滅させてしまう」

「フフフ。いいじゃない。それで願いが叶うなら」


彼女が右手を上に掲げ、掌の上に大量の精霊力(ちから)を球体へと具現化させる。

な。まったく、お前はどれだけ彼女に"与えた"のだ?

これは悪戯にしてはやり過ぎだぞ?アペリラ。

放つ前に撃つか?いや。傷つけるなと頼まれた。なら。


全速力で彼女に向かって走る。

そして具現化された球体に向かって飛び、右手を伸ばす。

球体に掌が触れた途端、球体が小さくなり、やがて消えた。


「何?どうして?」

「忘れたのか?私は、いや。俺は"奪う者"だ」

「確かにそうだよね。でも」


彼女が距離をとり、再び同じ動作を行うのが見えた。

次はどうする?同じ手を使うか?それとも


「次は外さない」


彼女が不気味に笑うと同時に視界から消えた。

「瞬間移動か」「そう言う事よ!」

言葉を被せるようにして背後に現れた彼女。

それと同時に球体を放つ。

さすがに今回は間に合わない。背中に直撃し、約50メートル吹き飛ばせれ、球体が破裂した。


「フフフ。粉々になった?ねぇ?それとも逃げたの?かくれんぼなら私は付き合わないからね」


・・・

・・


私の放った一撃は、仮面さんの背中を捕えた。

あれから仮面さんは姿を見せなかった。

消え去ったのか?逃げたのか?

今の私にはどうだっていい事なのだけれどね。

とにかく、これでやっと望みが果たされるの。


「あれ?・・・・・・ちょっと・・・・・・疲れたかも・・・・・・」


慣れない精霊の力を使いすぎて、地面に倒れ込む私。

身体に纏っている黒い炎も少しずつ消えて来ているのがわかる。


「あと少しだよ・・・・・・ヒロ」


動かなくなった身体、見えなくなる視界。終わりが近づいて来ている。

後は、アペリラの言っていたあの言葉を言えば・・・・・・過去に残れる。

残り少ない意識を右手の甲に集中させ、私は呟く。


さよなら・・・・・・"これからの私"


wailua(ワイルア)


全身に纏っている黒い炎が消えて行く。

右手の甲の光も小さくなり、やがて光も消えかけた時。


「悪いけど、あんたの望みは却下や。彼女も"うち"もそんなん望んでないからな」


うっすらと誰かの声が聞こえる・・・・・・

私は無意識で"あなたは誰"と言ったような気がしたけれど、覚えていない。

なぜなら。私は意識を失っていたの。


「ごめんな、しよちゃん。ほな行くでー。mana ole(マナ オレ)


・・・

・・


昨夜の事。

私の所に、懐かしい友人から着信が入ったんです。


『久しぶりやねーみあちゃん、こんな時間にどないしたん?』

『ほほう。あんたもすっかりそっちに染まったわね』

『え?あ、うーん。やっぱ変かな?』

『別に変じゃないし、そんな意識して言葉を戻さなくていいわ。あのね、今日はあんたに相談と言うかアドバイスをしてほしくて電話したのよ』

『そうなんだ。で、どんな事に困っとるん?』


と言うわけで。話しを聞いたからには私も力になってあげたくて。次の日、わざわざ地元(ここ)へと来てしまったのです。



その日の夕方、私はあの公園へ足を運ばせました。

すると、見た事もない子供?と彼女の姿があって・・・・・・


「痛いわよ。でもね、しよを救えないのはもっと痛いの!だから・・・・・・お願いょ・・・・・・」


遠くにいても、その声ははっきり届きました。

私はその声のする方(彼女の元)へ歩き出し、その言葉から状況を判断してみると。

どうやら、思ったより事は複雑になって来てるようで。


「こんにちは、おねーちゃん。突然だけど、このおねーちゃんを助けてくれない?」


見た事もない子供は女の子でした。そしてこの子が助けを求める人物は私の友人。

よく見ると右手から出血している。私ではちゃんとした手当は出来ないから、病院へ連れて行くまで止血をしなくちゃ。


私は、サクラ色に染まった少女の髪を優しく撫でて、彼女の元へと歩み寄り、声をかけました。


「大丈夫や。みあちゃんもしよちゃんも、うちが助けたるから」


・・・

・・


右手が痛む。真っ赤に染まった手の中心を見ると、玉がひび割れていたわ。

うそ。もう本当にダメなの?約束したのよ。私は彼女を守るって。

それなのに・・・・・・肝心な時に、いつも役に立っていないじゃない・・・・・・

怒りと絶望で涙が止まらなかった。


「大丈夫や。みあちゃんもしよちゃんも、うちが助けたるから」


聞き覚えのある声が私の耳に届く。

そして、私の右手を止血する優しい両手。


「来てくれたんだ・・・・・・ありがとう」

「とりあえずお礼はまだ早いんとちゃう?今の状況、説明してくれへん?」


私は涙が止まるのを待ち、彼女に手短に説明する。


紹介が遅くなったけれど、彼女の名前は"しの"

私の親友であり、しよの友達。

察しがいい人ならわかるだろうけど、彼女も高校時代。あのバイト先で働いていたって言えば、理解していただけるかしら。

外見はと言うと、黒髪のショートカット、少し色黒で小柄な顔と、身長151cmくらいのスレンダーな体格。

アペリラと並ぶと、見た目は中学せ(←この説明はやめてくれへん?byしの)


「なるほど。楽しい時間旅行とは、かなりかけ離れた状況って事なんやね」

「へぇー。おねーちゃん。みあおねーちゃんの友達なんだ」

「そうや。て事は、君がアペちゃん?」

「あぺちゃん?ボクの事かな?ウン。なんか色々と知ってるんだね?」

「まー詳しくは知らへんけれど、今はしよちゃんがヤバいって事は理解したつもりや」

「アペリラ。同じ事ばかり言うけど、しよを助けたいの。どうか力を借して」

「ウーン。ねぇ?おねーちゃん。時間がないから何もかもを受け入れてもらう事になるけど、いい?」

「ええで。その覚悟は決めて来たつもりやし。それに、選択肢は存在しないんやろ?」


別に高く評価したいわけではないけれど、しのは頭がいい。それゆえ応用力もある。

だから、この短時間でアペリラが説明した事は全て理解したわ。

それをふまえて、しのがこんな質問を投げかけたのよ。


「過去へ飛ぶんはええけど、時空の狭間(ときのはざま)って場所がわからへんよ。1度見たらイメージ出来るから飛べると思うけど」


確かにそうよね。私としよはその場所を見て来た。でも彼女は全く知らないわ。

「ね?アペリラも一緒に行ってあげてよ」

「イヤ。ボクが行かなくても案内してくれる人がいるみたいだよ」

アペリラが指差す方向に、突然現れる人物がいた。


「その役目、俺が引き受けよう」


姿を現したのは石油王。

「きゃっ。ビックリさせんといて」

「石油王。あんたどうしてここに?」

そうなのよ。彼はどうしてこの世界に来れるわけ?ゲームの中の存在じゃないの?

しかも今更だけど、声も話し方も普通になってるし。

「詳しくはいずれ話せる時が来るだろう。とにかく今は彼女を優先にしろ」

「そうよね。じゃーお願い石油王、彼女をしよの所へ」「ちょい待ちーな。この人の説明だけしてくれへん?かなり怪しい格好やし」

まー当然よね。あんなぶっ飛んだ格好した人なんて、その筋の人にしか理解出来ないわ。

「あー彼は石油王。このゲームでは私らにとって敵みたいな感じだったけど、今は味方って所かしら」「おい、それで説明したつもりか?」

「なるほど。ようわかった」「本当に理解してるのか貴様は」

「要するに、アラブの人達がこのゲームでは敵ってわけなんやろ?」

彼女が左手の人差し指を石油王に向けて、自信満々に言い捨てる。

「お前。UAE、いや、諸々の人に謝れ」


「ねぇ?早くしないと、しよおねーちゃんが本当に消えるよ?」


私らの小競り合いの途中に割り込み、倒れているしよの姿を見ているアペリラ。

「しよ!石油王、彼女を。しの。どうか私らの大切な人を助けて」

「任せとき。それより、帰ったら病院行こうな」

そう言って。私の右手を撫でる彼女。


「では小さい女、掴まれ」

「小さいって言うなや!それにうちの名前は"しの"や。よう覚えとけアラブ野郎」

「しの?・・・・・・これも巡り合わせか。ではお前に全てを託すぞ、しの。意識を集中させ玉を光らせろ」

「はいよ」


彼女は左手に意識を集中させ、手の甲の玉が光り出す。


「では行くぞ。mana ekahi(マナ エカヒ)


・・・

・・


何も無い。辺り一面、灰色の世界。

寂しくて冷たい空間。それが私が感じたイメージ。


「ここが、時空の狭間ってとこ?」

「ああ。聞くがしの。リセットの言葉は覚えているか?」

「へ?あー大丈夫やって。けど、なんと言うか、ほんまこんな非常識な事を、あの子達は体験しとるんやな」

「で、たどり着いた答えが今の彼女の姿だ」

「まーしゃーないんとちゃう?私も彼女も"人間"なんやし、欲望には逆らえない事もあるんよ。きっと"あなた"もそうなんじゃない?」

「何が言いたい?」

「さーね。うちは、あー私はね、あなたを知っているかも。ま、いずれ教えてくれるんでしょ?」


アラブ野郎、もとい。"アラブの人"は何も言わず、私に背を向けました。

そしてゆっくりと歩き出して、私から遠ざかって行き

「いずれ、な。早く行ってやれ」

その言葉とともに、彼はどこかへと消えてしまいました。

「さ、後はしよちゃんやな」


wailua(ワイルア)


微かな声が無音の空間に舞う。

アペちゃんが言っていた最後の言葉(トリガー)

早く行かなきゃ。

私は彼女のもとへ急ぎました。


そういや彼女とは何年ぶりに会うのだろうか?

もう随分会ってなかったよね?私の事は覚えてるのかな?

でも、こんな再会になってしまうなんてね。正直、辛いよ。


彼女の全身が黒い炎に包まれている。まるで自分を火葬しているよう。

私は、今にも泣き出しそうだったの。でも、みんなの為に私は泣かない。

悲しみを押し殺し、強い意志を持って彼女と向き合う事に決めた私。

両手に力を込めて、彼女に声をかけました。


「悪いけど、あんたの望みは却下や。彼女もうちもそんなん望んでないからな」

「あ・・・・・・は・・・・・・だれ?」


まともに喋れていない。もう限界まで来ているのね?

やがて炎も消えかけ、右手の甲の光も小さくなり、光も消えかけてました。


「あかん。ぐずぐずしとる場合やないな」

私は左手に意識を集中して、手の甲の中心が眩しく輝いた事を確認し、リセットの準備を整える。

右手で彼女をしっかりと抱きかかえ、アペちゃんから与えてもらった精霊力を解放し、彼女の右手の甲の玉に私の左手を添えて、彼女の条件(ロック)を解除しました。

「これでこっちはなんとかなったかな。後はこの時間(ばしょ)のリセットだけや」

再び左手に意識を高める私。

気がついたら彼女はきっと悲しむんだろうな・・・・・・


「ごめんな、しよちゃん。ほな行くでー。mana ole(マナ オレ)


・・・

・・


心地よい風が肌に伝わり、自然とまぶたが開く。

視界に入って来た光景は、見慣れた2人と、見知らぬ1人の顔。

あれ?ここは?私はどうなったの?彼は?そう、ヒロはどこ?確かに私は過去にいるはずなのに。

まだはっきりしない頭を右手で抑え考えてた時、泣きながら私に抱きついて来るみあの姿が確認出来たの。

「み・・・・・・あ。私は失敗したの?」

「イヤ。成功してたよ。でもね、それ以上に2人の想いがおねーちゃんの望みを上回ったんだ」

「それは・・・・・・どう言う・・・・・・意味?」

「みあちゃんが、あー付け加えて言うと、私達が、しよちゃんを失いたくないと望んだ結果が、今の状況を作ったわけや。ごめんやで。恨むならうちを恨んでや」

「違う。”しの”は悪くないの。あんたの望みは私が壊したの。だから恨まれるのは私だけでいいの」

涙声で私に伝えるみあ。

再び泣き崩れる彼女の頭を、優しく撫でる女性。この子がしのちゃん?

「ホントにしのちゃんなの?」

その言葉を聞いた途端、しのちゃんは優しく微笑んでくれて

「やっと気づいたんかい。ま、無理もないですね。こっちの話し方ならわかってもらえるかな?」

「え?え?何でここに?」

ぼやけていた頭が、驚きで目を覚ます。

「そりゃあ、しよちゃんの力になるために決まっとるやん。ほんで来てみれば、事は進展しとるどころか新展開しとる始末。正直ビックリしっぱなしや」

「待って、じゃ~あの時の声は」

「あー聞こえてたん?あれはうちや」


「ねぇ?色々と説明する事があるのはわかるんだけど、今は先にみあおねーちゃんを治してあげて」


「治す?どう言う事?」

いまいち理解出来ない私が直接彼女に質問する。が、目を逸らし答えない。

明らかに私のせいだと確信し、しのちゃんに視線を向けた。

「しよちゃん。そう思い詰めるのはやめよ。みんな必死やったんよね。あんたも彼女もな」

何も・・・・・・言えなかったの。

「だからおあいこって事で、この件はこれでおしまいね」

しのちゃんが、あえて昔の言葉遣いで私を慰めてくれる。

「ありがとう・・・・・・しのちゃんがいなかったら、私は大切な人たちをたくさん失ってたと思う」

「彼との事は申し訳ないと思ってるの。だから今度は私も力になるから・・・・・・許してくれますか?」

「許すも何も、私には誰も責めたりは出来ないよ。それにしのちゃんまで巻き込んでしまったし」

「そんな事は気にしなくていいよ。だって私達は友達でしょ?」

そう言い残して、彼女はみあを連れて病院へと向かったの。


「しよおねーちゃんは行かないの?」

「私はいい。しのちゃんがいれば大丈夫。それに、今は少しだけ1人になりたくて」

「自分がやった事、後悔してるの?」

「・・・・・・1つだけ教えて。仮面さんは?」

「ウン、生きてるよ。ケガもしてないから安心して」

「そう。よかった」


私はアペリラに挨拶して歩き出す。道中、誰もいない事を確認し

私はその場に留まり泣き崩れたの。


「私は・・・・・・なんて・・・・・・バカな事を・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」



こうして、2日目のakua(ゲーム)が終了した。

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