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Nemesia  作者: 五流工房
Nemesia本編
1/18

アペリラ

澄み渡る水色の空にピンク色の花びらが踊る。

その花びらの追いかけた先に1人の人物あり。

見た目は中学生くらいの背丈で小柄、そして"サクラ色の髪"


あれ?見つかっちゃった?

あ、まってよ。せっかくだからお話しない?

そう言った瞬間、突然姿が消える。

が、近くにあった桜の木の側で姿を現し語り出す。


突然だけど、葉桜は好き?

まぁ好きな人は少ないよね?

ボクは好きなんだ。だって、葉桜を見てると桜餅が食べたくなるしね。

じゃなかった。あ、でも桜餅は食べたくなるんだよ。

えっと、本当に言いたい事は、何事も散り際って綺麗な感じがしない?

花は短し恋せよ乙女ってね。


そういや学生だった女の子(あの子)たちも・・・・・・もう40を迎える年頃だっけ。

さて。どんな咲き方をして、どんな散り方でボクを愉しませてくれるのかなぁ?



さぁ、始めようか。



ねぇ?

Do you Re:member me?…… Let's start again?




Nemesia(ネメシア) day1_アペリラ ~




2017年 4月。某日、金曜日。


この日の私は久々のオフ。次の日が休みだから3連休と言うわけなの。

なんて言えるのは週休2日制の社員が言うセリフ。

私は3交代制の変則勤務。まぁ週休2日制なんだけどね。土日が休みって時はほぼないの。

そう、あの頃のバイトの時と同じ。

でもね、今は違うのよ!

私は3連休をいただいた。なぜかって?

世の中には社員の見方、有給ってものが存在するのよ!

だから~、今日がオフなのは本当。で、土日は有給を使ったのです。

まぁ~こんな事は滅多にしないし、会社でもそこそこの地位にいるから、少しのわがままは許してくれたしね。

で。私は連休を使って、何年も戻っていない地元に帰って来たと言うわけなの。


実家に到着し、荷物を置き、家族との会話を済ませ、私は友達に会いに行く。

ふと鏡の前で立ち止まり、軽くなった髪を撫でる。


「ちょっとやり過ぎたかな?」


人生。ほぼ同じ髪型で過ごして来た私が、最近イメージチェンジを試みた。

きっかけは、彼女からの電話だったの。


『と言うわけで、髪を切ってみない?私もやるからさ』

『・・・・・・そうね、たまには違った自分になるのもいいかもね』

『じゃ、今度会う時に、どちらが面白く(きれいに)なってるか勝負よ!』

『勝負って・・・・・・間違いなく坊主にすれば勝てるよ?』

『ま、そう言う事ね。でもお互いそれはやめましょ。リスク高過ぎだし、職を変えるレベルよ』


「よし、じゃ~行きますか」

私は彼女とのやり取りを思い返して歩き出す。

愛用の黒髪ロングヘアの装備を外し、少し明るい、茶系のゆるふわショートボブへと装備を変えて。


・・・

・・


「確か・・・・・・ここだったよね?」


私は昔の記憶を頼りに、今となっては・・・・・・もう誰も使用していない、あの"公園"に来ていた。


ここに来るとあの時の記憶が蘇る────。

あれから随分と経ったよね?


しばらく歩いていると、あの時のベンチが色あせて残っていたの。


右手でそっと撫でて"あの人"を思い出す────。

あのね。私、帰って来たよ?


「ねぇ。今も元気にしてるかな?」


ベンチに座り空を見上げて小声でつぶやいた私。


「あれからもう25年よ?どこにいるかわからないけれど、元気にやってるわよ、きっと」


独り言だったはずの問いに、抜群のタイミングで答えを出して来た事に驚いた私。

そして声の方に視線を向けた。その先に見える1人の女性。


「よ!ほんと久しぶりね、"しよ"」

「ええ。相変わらずだね、"みあ"」


彼女の名前は"みあ"。ちなみに私の名前は"しよ"。

2人は高校で知り合い、仲良くなったり、絶交寸前だったり。ま~色々とあったけど・・・・・・

今でもこうして縁は続いてるって事は、お互いが思いやってるからだと思うんだ。

でもね、どうしてもツッコミたい事が1つ。


「髪切って来るって言ったでしょ?何で昔と変わってないのよ?」


そうなのよ。彼女から勝負とか言っておきながら、実際会って見たら

無造作ウェーブのセミロング。髪の色はダークブロンド。長さは昔と変わらない。

まぁ変わったとこをあえて言うならば、髪の色とウェーブをあてたって事くらい。


「え?切ったわよ?私は最近までしよと同じロングヘアだったのよ?」


そう言って、彼女は私の隣に座り、スマホを取り出し、ロングヘア姿の画像を見せてくれたの。


「た、確かに長いね・・・・・・」

「まー25年間、ろくに連絡もしないで、お互いの情報交換も年に5つあったらいい方だし・・・・・・無理もないわね」

「ほんとごめんね。ずっと忙しい日々だったからさ」

「それはいいって。今日は無理やり会ってもらってるんだし」

「ははは・・・・・・で、結局の所。勝敗はどっちが勝ったの?」


その言葉で互いがもう1度、髪を見つめ合うという・・・・・・なんだか異様な光景と時間が流れたの。


「どう見ても私の負けね。だって、短くなったし可愛くなったし、それに・・・・・・痩せてるのに胸だけは更に大きくなってるって・・・・・・ほんと罪な女よね」

「勝ってバカにされてる気がするのは私だけなのかな?」

「さぁーなんの事かしらね」

「あ、パクらないでよぉ」



それからしばらくの間、積もりに積もったお互いの知らない情報交換の時間となったの。

彼女とは高校卒業後に離れ離れになり、私は仕事一筋に、彼女は仕事もしつつ恋愛も順調だったみたい。・・・・・・けどね。


「彼と別れたのはいつ頃だったっけ?」

「え?そうだなー。もう10年は経つんじゃないかしら?」

「原因は浮気?」

「そんなんじゃないんだけどね・・・・・・ただ、結構"待つ"のって疲れるのよね・・・・・・」


待つ・・・・・・か。

もし、君は今も待っててくれてるのなら・・・・・・って。都合のいい解釈だよね。


「嫌いになったから別れたんじゃないのよね?」

「ええ。何?もしかして"よりを戻したい"わけ?」

「いやいや、そんなんじゃないから。みあこそまだ好きなら、よりを戻したらいいのに」

「うーん・・・・・・消息不明なのよね。何やってんだか知らないけど」


そう言ってバッグからコーヒーを1本取り出した彼女。


「はい、飲みなさいよ」

「ほへ?1本しかないんだし、みあが飲みなって」

「いいえ、バッグにあるから先に飲んでていいわよ」

「そう?じゃ~いただきます」


彼女の好意を素直に受け止め、コーヒーをいただく私。

それを横目で見つめる彼女。

な、なぜか獣のような鋭い目つきをしているのは気のせいかしら?


「飲んだ?じゃー次は私がいただくわね」


そう言って、私が飲んでいたコーヒーを右手で奪ったの。

ちょっとみあ!って言う間も無い勢いで、コーヒーを口に運ぶ彼女。


「そんなに私と間接キスしたかったわけ?」

半ば呆れた顔と棒読みで彼女に問う私。

「あはは、さすがにしよはアイツと違うわね」

何かを思い出して1人で楽しんでいる彼女。

「もう、一体なんなの?」

「あーごめんごめん。昔さ、アイツに、あ。しよの元彼にも同じ事をしたのよね」

「え?・・・・・・そうなんだ」

少しだけ表情を曇らせた私。それを見た彼女が慌てて弁解に入る。

「あー誤解されたら困るから、とりあえず話し聞いてね?・・・・・・ね?」


・・・

・・


とうわけで話はあの時に遡るわね────


『しよのどこが好きになったの?』

『そだな~・・・・・・やっぱ笑顔かな』

『確かに笑顔似合ってるわね。今でも好きなのよね?』

『もちろん・・・・・・ま、笑顔は見れないけどな』

少し視線を下げ黙り込むアイツ。

『私が笑ってあげようか?』

予想もしていない言葉に驚き、アイツは私の顔を見る。

『お?そんなに見たいの?』

『そ、そうじゃなくて・・・・・・あまりにも、みあらしくない発言だったから』

『それはどう言う意味かしら?』

『あ~ごめん。もし僕が見せてと言えば笑ってくれるのか?』

『あんたが望んでるならね』

『やめとくよ、君は彼女の代わりじゃないからね』

『・・・・・・普通はそんなに大袈裟に考えないと思うけど?』

『そう?でも君の彼氏にも悪いなって思ったし』

アイツの言葉を聞いた後、少し考え事をする私。


『じゃーお互いの”普通”がどれくらいかはっきりさせましょう』


そう言って私はショルダーバッグからコーヒーを取り出した。

『ここにコーヒーがあるわ。でも1本しかないのよね』

『僕はいいからみあが飲みな』

『それがあんたの普通でいいのね?』

『ああ。僕が持ってても君にあげたかな』

『そう。ならこのコーヒーあげるわ』

『何で?1本しかないんだから僕はいいって』

『違うわよ!実はあと1本バッグに入ってるから先に飲んでいいわよ』

その言葉を信じて、アイツはコーヒーを一口飲んだ。

『飲んだ?じゃー次は私がいただくわね』

アイツの飲んだコーヒーを奪い取り、何事もなかったかのように一口飲む私。

驚くアイツの姿を見て私はこう言ってやったわ。


『言っとくけど、コレ間接キスだからね』


『な、何やってるのさ?」

『私は気にしないのよ。これが私の”普通”』

『・・・・・・まいったな。今回はみあの勝ちでいいよ』

『今回もでしょ?つまらない意地はもうお互いなしにしましょ』

さっき飲んだコーヒーをアイツに差し出す。

今度は自然に受け取り、続けて飲んでくれたのよ。


それを見て私はアイツに笑顔を魅せたってわけ────


・・・

・・


「・・・・・・・・・・・・浮気者」

「な、ち違うわよ!何すねてるのよ?」


あれ?ほんとだ。何でワタシは・・・・・・


「別に、すねてなんてないですよ~」

「いいや。自分の事は気づかないから言ってあげるけど、しよは結構"独占欲"は強い方なのよね」

「そ、そんな事・・・・・・もう別れたし関係ないもん」


なぜか心が痛む感じ・・・・・・もしかしてアイタイの・・・・・・?


「ねぇしよ。あんた、まだアイツの事を」

「言わないで!・・・・・・・・・・・・ごめん」


寂れた公園に静かな風が吹く。

黙り込む2人。お互いを察し合ってるのが伝わる。

静寂の空間にひらり舞い落ちて来た"桜の花びら"

2人が気づき花びらに視線が流れる。

追いかけた視線の先に見える・・・・・・"サクラ色の髪の子"


「おねーちゃんは過去に忘れ物をしちゃってるよ?」


いつからいたのか知らないけれど、サクラ色の髪の子は私に話して来たの。


「ねぇ。君、忘れ物ってな~に?」

私はサクラの子に聞いてみる。見た目は中学生っぽいし、多分からかってるのだとこの時は思ったの。


「わからない?今も心の奥に隠してるその痛みだよ」


「!!!」

なに?なんなのこの子?・・・・・・心を見抜かれてる?

「ど、どうしたの?しよ?・・・・・・てか、あんた何者なのよ?」

動揺してる様に気づいたみあが、喋りながら私の前に立ち、すぐさまかばうようにしてサクラの子と向き合う。


「"アペリラ"。ボクの名前だよ、おねーちゃんたち」



そう言って軽く頭を下げて────キミは不気味に微笑んだの────

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