第58章 州の略奪者
一八九七年の春から夏にかけての数か月と一八九八年の晩秋に、シカゴ市とイリノイ州、果てはアメリカ合衆国まで巻き込んだ、フランク・アルガーノン・クーパーウッド対彼の敵対勢力との最終決戦が目撃された。一八九六年に新しい知事と新しい州議会議員が就任したとき、クーパーウッドは直ちに闘いを続けた方がいいと判断した。この新議会が職務を果たすために開かれるまでに、スワンソン知事が最初の公共事業委員会法案に拒否権を発動してから、一年が経過する。それまでに、新聞に煽られた市民感情が冷める時間がとれそうだった。クーパーウッドはすでに様々な関係良好な金融機関……特にヘッケルハイマー、ゴットリーブ商会や彼らが代表するすべての水面下の勢力を通じて……新任の知事に影響を及ぼそうと試みて、ある程度成功していた。
今度の新知事A・E・アーチャー伍長は、アーチャー元下院議員と呼ばれることもあったが、スワンソンと違って、凡人と理想家が奇妙に入り混じっていた……あまり目に余る方法でなければ、不正で出世の道を切り開く、ズルい律儀者であり、律儀なズルだった。小さな、ずんぐりした男で、茶髪で茶色の目、精力的で、機知に富み、公衆道徳については普通の政治家の判断力を備えていた……つまり、そんなものはなかった。南北戦争のときは十四歳で鼓手、十六歳から十八歳までは兵卒、その後目覚ましい軍功をたたえられて名誉昇進していた。この後、北軍の陸海軍軍人会の会長になり、老兵や、未亡人や、孤児のためにしたいろんな活発な慈善活動が人の目にとまった。立派なアメリカ人で、国旗を振り、タバコを噛み、口汚く悪態をつく小さなこの男は、注目すべき政治的野心を持っていた。他の軍人会員たちは、大統領候補者リストに名前を連ねて目立っていた。なぜ自分は駄目なのだろう? 高いファルセットの声で語る優れた演説家であり、親しみやすく、存在感があって、力が強かったので人気はあったが、本質的に物や商売を基準に考える人だった……だから、知的なもっと高いランクの階級には基本的に響かなかった。知事候補の指名を求めるにあたって、彼は普通の申し入れをした。すると今度は、ヘッケルハイマー・ゴットリーブや、クーパーウッドと連携している他のいろいろな企業関係者に、提出された公共事業委員会に関する態度を探られた。最初は言質を与えるのを拒否していた。その後〈CW&I〉と〈シカゴ&パシフィック〉(とても強力な鉄道二社)が関心を持っていることや、他の候補者たちが知事選で激しく追い上げていることを知ると、多少折れて、議会がこの案を強く支持して、新聞があまり猛反対しなければ、喜んでこれを提唱する側に立とうとひそかに表明した。他の候補者も似たような見解を表明したが、アーチャー伍長の方が支持者が多いことが判明し、最終的に指名されて、楽々と当選した。
新しい議会が招集されて間もなく、A・S・ロザハイズというサウス・シカゴ・ジャーナルの新聞発行人がある日たまたま傍聴に来て、クラレンス・マリガンという名の州議会議員の席に座っていた。座ってると、ロザハイズはメナードのロドリーゴ上院議員に背中を親しげにたたかれて、ロビーに行こうと誘われた。マリガン下院議員になりすましていた彼は、そこでロドリーゴ上院議員にジェラードという名の見知らぬ人に紹介された。ジェラードは少し前置きを言ってから始めた。
「マリガンさん、すぐに議会に提出されるこのサザーク法案なんですが、私はあなたと調整をはかりたいんです。我々は七十票持ってますが九十は欲しい。法案が議会で第二読会まで行った事実が、我々の優勢を示してますよ。もしよろしければですが、私は今朝あなたと折り合いをつける権限を与えられています。法案が署名された瞬間に、あなたの票は二千ドルになるんです」
ロザハイズはたまたま野党系新聞の新人社員だったが、この状況でとても抜け目ないことを証明してみせた。
「失礼ですが」どもって言った。「どなたとおっしゃいました?」
「ジェラード。ジェ、ラー、ド。ヘンリー・A・ジェラード」相手は答えた。
「ありがとう。よく考えてみますよ」マリガン下院議員だと思い込まれていた彼は答えた。
奇妙なことに、ちょうどこの瞬間に、本物のマリガンが実際に現れた……たまたまロビーの近いところに居残っていた同僚の数名に大声で名前を呼ばれた。その後、いてはまずいジェラードとずる賢いロドリーゴ上院議員は、目立たないように立ち去った。言うまでもなく、ロザハイズはすぐに正義の力のもとに駆け込んだ。新聞はこの小さな物語を報じなければならない。これはとても内容の濃い出来事で、問題のすべてをまた新聞の議論という致命的で有害な分野に持ち込んでしまった。
たちまちシカゴの新聞が一斉に飛びついた。またあの邪悪なクーパーウッド陣営が暗躍しているとの声があがった。上院と下院の議員は厳重に警告された。スワンソン前知事の立派な態度が、現職のアーチャー知事に模範として示された。トルーマン・レスリー・マクドナルドの〈インスパイア〉紙の社説は述べた。「この考え全体に、ごまかしと、政治的なずるさと、政界工作のにおいがする。シカゴ市民もイリノイ州民も、本当に利益を受けるのが、誰なのか、どこの特定の会社なのかを知っている。一民間の路面鉄道会社の命令でできる公共事業委員会などはいらない。フランク・A・クーパーウッドの触手は前回のようにこの議会を覆うのだろうか?」
他の新聞のいろいろな敵対的不満と連携して現れたこの大きな紙面は、クーパーウッドに激しい言葉を言わせた。
「あいつらみんな、くたばればいい」ある日の昼食の席で、アディソンに言った。「私には運営権を五十年間延長する権利がある。それを獲得するつもりです。ニューヨークとフィラデルフィアを見てください。東部の連中は笑ってますよ。向こうはこういう事情を知りませんからね。これもみんなハンドとシュライハートたちが暗躍しているせいです。彼らが何をしているかも、誰が陰で糸を引いているかも、私にはわかっている。彼らが命令するたびに、新聞が騒ぐんです。アーニールが動くたびに、ヒソップはワルツを踊るし、マクドナルドの小倅はハンドのために働いている。今じゃ、すっかり落ち込んでクーパーウッドを打倒するためなら何でもいいわけですよ。まあ、あいつらが私を打倒することはありません。私は出口を見つけますから。議会が五十年の運営権を認める法案を可決して、知事は署名するでしょう。それをこの目で確認します。私には少なくとも一万八千人の株主がいます。彼らは自分たちのお金をきちんと運用してほしがっています。私は彼らの期待に応えるつもりです。他の人たちは裕福になっていませんか? 他の会社だって、十や十二パーセントは稼いでいるのではありませんか? どうして私がそれをしてはいけないのでしょう? シカゴだと何かいけない事情でもあるのでしょうか? 私は二万人を雇用して、彼らにちゃんと給料を支払っているではありませんか? ネズミどもときたら、話すことはすべて国民の権利と国民に対する義務のことばかりだ! ハンドさんは自分の特別な利益が関係するところで、一般市民に何らかの義務を認めているんですか? シュライハートさんは? アーニールさんは? 新聞屋どもめ! 私は自分の権利くらい知っている。まともな議会だったら、私にちゃんと運営権をくれて、サメのような地元の政治家から救ってくれますよ」
しかし、この時までに、新聞は政治家と同じくらいずるく力強くなっていた。スプリングフィールドの議事堂の大きなドームの下に、上院と下院のホールや会議室に、ホテルに、地方でも少なくとも情報が集まりそうな地域に、彼らの代理を務める者がいて、見て、聞いて、嗅ぎ回った。この対立で彼らは評判と現金を稼いでいた。新聞によって、改革派の市議たちは、それぞれの地元の区で市民集会を開催するように説得された。不動産所有者たちは組織化を迫られた。ハンドとシュライハートに率いられた百人の著名な市民の委員会が結成された。スプリングフィールドの議事堂のホール、会議室、委員会室、主要なホテルの廊下は、ほとんど毎日のように、大臣や、改革派の市議や、民生委員からなる過激な代表団によって踏み荒らされた。彼らは到着すると、演説し、脅し、説教をして立ち去り、後からくる別の代表団に場所を空けた。
「ところで、こういう代表団をどう思いますか、上院議員?」ある朝グリーノー下院議員は、ジョージ・クリスチャン上院議員にグランディーについて尋ねた。そのとき市長と数名の著名な民間人に付き添われたシカゴの聖職者グループが、ロビーを通り抜け、議案が密かに審議されている鉄道委員会に向かう途中だった。「彼らは、我々市民の誇りと道徳心向上のために立派な演説をすると思いませんか?」彼は目をあげて、最高に信心深く敬虔な態度で、指をベストの上で交差させた。
「そうですね、牧師さま」不遜のクリスチャンはにこりともせずに答えた。彼はフェレットのような目をして、小さな口髭と顎髯で顔を飾っている、少し血色の悪い、針金のような男だった。「ですが、主が我々をこの仕事に遣わしたことも忘れないでください」
「それでも」グリーノーは同意した。「我々はめげずに良いことをしなければなりません。収穫は実に豊富でも、ありつける労働者は少ないんです」
「まあ、まあ、牧師。その辺にしておいてください。笑ってしまいますからね」クリスチャンは答えた。二人は心得たような、それでいてうんざりした微笑を浮かべて別れた。
しかし、これらの紳士たちが調停に乗り出したところで、新聞を黙らせることはできなかった。いまいましい新聞め! 彼らは、あちこちに、どこにでもいて、噂や会話、想像にすぎない計画を少しでも聞きかじるたびに、記事にしていた。シカゴの市民は国の経営……その微妙な運営と波及効果……について熱心な教育を受けたことがなかった。上院議長と下院議長は名指しされて、その義務について個別に警告された。このあたりでは一日に一ページが立法手続きに費やされるのが事実上慣例になっていた。クーパーウッドは自分から現場に出向き、ふてぶてしく、喧嘩腰で、論理的に構えていた。目には自信に満ちた勇気があり、彼の魅力は確かに人々を虜にしていた。無関心の仮面……彼を覆っていたものを呼ぶとするならば……を投げ捨てて、今回は直接、公然と出て行ってスプリングフィールドまで足を運び、主要なホテルに宿泊した。戦闘に臨む将軍のように、身の回りに戦力を配置した。月明かりが照らす温かい六月の夜、スプリングフィールドの往来は静かだった。イリノイの大平原は南北数百マイルにわたって甘美な輝きが降り注ぎ、田舎の住民は簡素な家の中で眠りについていた。クーパーウッドは座って、弁護団と立法府代表を相手に打ち合わせをしていた。
この危機の中で気の毒なのは、正当性を主張できて自分に都合のいい利益を得たい欲望と、市民の利益を裏切った者として非難される恐怖の間で引き裂かれた、哀れな地方議員だった。ずっと生きてきても二千ドルという現金を拝んだことがなかった、こういう小さな町の議員の中には、この問題で魂が苦しめられている者がいた。男たちは個室やホテルの談話室に集まって話し合った。夜は部屋にこもって一人でこれを考えた。大企業が欲望を押しつけて、人々が物乞いに走るこの光景は見られたものではなかった。ロマンチックで、幻想を抱く、理想主義者の若い田舎の編集者や、弁護士、政治家の多くが、ここでちっぽけな皮肉屋か、賄賂をもらう人間に成り下がった。人々は信念あるいは寛容な心さえもことごとく奪われた。手に取って持ち続ける能力以外は何もないと否応なく感じるようになった。表面はありふれたものに見えるかもしれない。……イリノイ州の普通の人々があちこちに行き来している。……素朴な農民や小さな町の上院議員や下院議員が話し合い、瞑想し、自分たちに何ができるかを考えている。……しかしジャングルのような複雑さが存在する。恐ろしい貪欲な人生が暗く強烈に成長し……満ち足りはする。手にナイフを持つ人生、勇気に燃えていて、飢えて顎によだれを垂らしている人生。
しかしこの大騒動のせいで、より慎重な議員たちは次第に怖くなり始めた。新聞にそそのかされて、故郷の友人たちが、彼らに手紙を書き始めていた。政敵は勢いづいていた。これは、みんなが多大な犠牲を被ることを意味した。明らかに餌は簡単に手の届くところにあるのに、多くの人が目をそむけて動揺した。撃鉄を起こして発泡準備の整ったスパークス下院議員が、法案をポケットにいれて議場に立ち、法案を議事録にのせるよう求めると、すぐに爆発があった。大勢に発言権が要求された。クーパーウッドに反対する責任を負っていた野党ディスバックは、頭数を数えて、敵がどんな手を仕掛けてこようと、自分には少なくとも百二票ある、つまり議場に出るかもしれないどんな法案でもつぶすのに必要な三分の二を持っていることに満足した。それでも彼の支持者は念のために、二回目と三回目の読会に投票した。ことごとく修正がなされた……ラッシュ時の運賃を三セントにする、総収入に対して二十パーセント課税する。この法案は修正されて上院に送られ、そこで修正部分が取り消されて、法案は再び下院に戻された。クーパーウッドにとって残念なことに、ここで法案が通らない兆候がはっきりと出た。「通過しそうもないですね、フランク」ディッケンシーツ判事は言った。「厳しい勝負になりました。地元の新聞がみんなを追いかけ回してますからね。あれじゃ生き残れない」
その結果、第二の法案が考案された……新聞をもっとなだめて大人しくさせようというものだったが、クーパーウッドの満足も大きく低下するものだった。一八六五年の古いホース・アンド・ダミー法を改正すると称して、二十年ではなく五十年の運営権を与える権利がシカゴ市議会にかけられた。つまり、クーパーウッドはシカゴに戻って、そこで闘いを挑まねばならなかった。痛手ではあったが、何もないよりはましだった。シカゴ市議会の壁の中でもう一度運営権闘争に勝てたら、望むものはすべて自分のものになるだろう。しかしできるだろうか? そういう危険を避けるために、わざわざここの議会まで来たのではなかったか? 彼の目的はこうして容赦なくさらされることに耐えることだった。それでも最終的には、代償さえ十分大きければ、シカゴ市議会議員の方がこういう田舎の議員よりも本当の勇気を持っているだろう……もっと積極的にやるだろう。そうしなければならないのだ。
必死の内緒話、会議、議論、議員たちの激励がどういうものだったかを神さまが見届けた後、二つ目の法案が出された……最初の法案が否決(百四対四十九)された後、司法委員会を通じて、非常に複雑な道をたどって提出された。それは通過した。そしてアーチャー知事は、熟慮と内省にたっぷり時間をかけてから、それに署名した。精神的に小さかった彼は、呼び覚まされた民衆の怒りが、自分にとって本当に重要だったことに向いていたのを判断できなかった。その傍らの明るい日差しの中にはクーパーウッドがいた。敵に面と向かって指を鳴らし、その目の強気で楽しそうな輝きによって、この状況を自分がまだ支配していることを誇示しながら、シカゴの新聞に鞭打って服従させるためにこれからも生きていくのだろうと確信させていた。さらに、法案が成立した場合には、アーチャーを押しも押されもせぬ金持ちにすることを……現金で五十万ドルの報酬を……クーパーウッドは約束していた。




