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巨人  作者: ドライサーの小説の翻訳作品です
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第40章 ルイビルへの旅行


今後クーパーウッドが直面する一番深刻な問題は、実は政治ではなく財務だった。アディソンが〈レイクシティ・ナショナル銀行〉の頭取だった時代、クーパーウッドはシカゴ路面鉄道会社を作って資金を調達するのに、この銀行を主な資金源に使っていた。その後、アディソンが〈シカゴ信託〉の経営を担うために〈レイクシティ〉を辞めざるを得なくなったとき、クーパーウッドは〈シカゴ信託〉を中央準備銀行に指定してもらい、多くの地方銀行がその金庫に特別預金を預けたままにしておくよう誘導することに成功していた。しかし、クーパーウッドとその関係者の戦いが、シカゴの他の中央準備銀行の支配に最も影響力を持ち、ニューヨークの金満家と緊密につながりを持つハンドとアーニールの奮闘で激化し始めてから、〈シカゴ信託〉に預金をしている地方銀行の数社が、外部の敵対勢力の圧力を受けて、引き出しを説得され、さらに追従が出る、望ましくない兆候があった。この金融の対立がどのくらい自分を目の敵にしているのかをクーパーウッドが十分に理解するまでにしばらく時間がかかった。最初のうちは、誰かの手元に自由になる現金があるようなら、ニューヨーク、フィラデルフィア、シンシナティ、ボルチモア、ボストン、時にはロンドンにさえ、急遽駆けつけなければならなかった。こういう旅を重ねるうちにクーパーウッドは不思議な人に出会った。この人物は、これまで考えたことがなかったほど、感情面でも他の面でも、彼の人生をいろいろと複雑にしてしまった。


クーパーウッドは国のいたるところで多くの富豪に会った。ある者は威厳があり、ある者は陽気で、彼はそういう人たちと一緒に仕事をした。ケンタッキー州ルイビルでは、ナサニエル・ギリス大佐という、大富豪の騎手で発明家の放蕩者に出会い、時折、融資を受けることがあった。大佐はケンタッキー社交界の面白い人物で、クーパーウッドを大変気に入って、一緒にいる短い時間に、彼を連れ回すことに喜びを見出した。ある時ルイビルで言った。「今夜は、フランク、あなたさえよければ、私の知り合いで一番面白いご婦人を紹介しますよ。きれいじゃありませんが、楽しい人なんです。数奇な人生を歩んでましてね。二人とも死んでしまいましたが、私の親友の元妻で、もう一人の元愛人だったんです。私は彼女の両親を知ってたし、彼女は賢い小さな娘さんだったんです。たとえ年はとってもまだまだすてきな女性なもんだから私は彼女のことが好きなんです。数少ない旧友のために、このルイビルで便利な家といったものを経営してましてね。今夜は特に用事はないんでしょ? そこまで行ってみませんか?」


クーパーウッドは、強い男たちの中にいるときはいつも明るく陽気で……飛び回るコリー犬のようで……自分の役に立ちそうな相手の機嫌をとるのが好きだったので、賛成した。


「面白そうですね。ぜひ、行きましょう。もっと話を聞かせてください。きれいな方なんですか?」


「なかなかね。だが、もっといいのは、大勢のご婦人とつながりがあるんですよ」小さな白い山羊髯を生やし、ひょうきんな黒い目をした大佐はクーパーウッドに大げさにウインクした。


クーパーウッドは立ち上がった。


「連れて行ってくださいよ」と言った。


雨の夜だった。大佐相手の用事は済むまでにもう一日必要だった。やることがろくに、いや、何もなかった。途中で大佐は、ナニー・ヘデンの半生の続きを話した。親しげに呼んだこれは旧姓で、その後で、まずはジョン・アレクサンダー・フレミング夫人、それから離婚してイリア・ジョージ・カーター夫人になったことを説明した。そして今は、大佐も属する道楽者の内輪の会で、秘密の娼館の主、ただのハッティ・スターとして知られていた。本人に会うまで、クーパーウッドはこのすべてにあまり関心がなかった。それから大佐は二人の子供の話をした。最初の結婚で授かった娘ベレニス・フレミングはニューヨークの寄宿学校へ行き、息子ロルフ・カーターは西部のどこかの幼年学校にいた。


「娘は」大佐は言った。「私の思い違いでなければ親にそっくりだ。数年前、東部にある母親の夏の別荘にいたときに二、三回会っただけだが、十歳の少女にしては随分魅力的だった印象を受けました。もしそんなものがいればですが、彼女は生まれながらの貴婦人ですよ。母親があんな生活をしているのに、どうすればまっとうでいられるのか、私にはわかりませんね。どうやってあの学校へ入れておけるのか不思議です。ここで、いつスキャンダルになってもおかしくありませんからね。娘は母親の仕事の内容を何も知らないはずなんです。母親が絶対にここには来させませんから」


「ベレニス・フレミング」クーパーウッドは心の中で思った。「なんてすてきな名前なんだろう。人生は妙な負い目を背負わせるものだ」


「娘さんは、今何歳ですか?」と尋ねた。


「ああ、たしか十五歳くらいだ……その上ってことはないな」


かなり陰気な街路樹のない通りにあるその家につき、中が広々として優雅な家具がそろっているのを見てクーパーウッドは驚いた。社交界で広く知られている名だとカーター夫人、格の低い充実した世界での通称だとハッティ・スターがすぐに現れた。現在の仕事が何であれ、数々の品性の証が顕著に見られる女性の前に自分がいることをクーパーウッドはすぐに理解した。高度ではないにしても極めて知的であり、こぎれいで、快活で、決して凡人ではなかった。歩き方にはある種の躍動感があり、楽しそう見えはするが人生における自分の立場にとんと無関心で、洗練された環境に明らかに慣れていると思った。髪は帝政時代に流行ったゆるやかなフランス風にまとめられ、頬は薄っすら赤い血管がまだらに浮き出ていた。顔色は良すぎたが、必ずしも似合わないわけではなかった。明るい茶色の髪によく合う親しみやすい灰青色の目をしていて、着ているピンクの花柄の室内着は豊満な体にぴったりで、真珠をつけていた。


「二人の夫を亡くした」クーパーウッドは考えた。「二児の母か!」大佐が簡単な紹介をして、軽い会話が始まった。カーター夫人は、お噂はかねがね伺っています、と率直に語った。彼の努力の賜物の路面鉄道会社は、多少なりとも夫人にも馴染みがあるものだった。


「クーパーウッドさんなら、グレース・デミングを呼ぼうかしら」夫人は提案した。


グレース・デミングは大佐のお気に入りだった。


「カーター夫人とお話ができれば、とてもうれしいのですが」クーパーウッドは女性向けの優しい態度で申し出た……理由は自分でもよくわからなかった。夫人の人生をもっと知りたくなった。その後、大佐ともっと長話をしたときに、すべてが語られた。


ナニー・ヘデン、またの名をジョン・アレクサンダー・フレミング夫人、アイラ・ジョージ・カーター夫人、ハッティ・スターは、ヴァージニア州とケンタッキー州のヘデン家とコルター家の子孫で、周辺の四つか五つ州の上流階級の半分と、明確だったり定かではないつながりを持っていた。依然として光り輝く女性だったが、今は人口約二十万のこの貧しい街で高級売春宿を経営していた。何があったのだろう? どういうわけで、こんなことになったのだろう? 全盛期の彼女は絶世の美女だった。お金持ちに生まれて、金持ちと結婚した。最初の夫のジョン・アレクサンダー・フレミングは、奴隷所有者で、タバコを栽培しているフレミング家の長い家系から富と嗜好と特権と悪癖を受け継いだ、ケンタッキーとヴァージニアの上流階級らしい魅力的な男性だった。外交官になりたくて法律を勉強したが、根が怠け者だったためになれなかった。代わりに、馬の飼育、競馬、恋愛、ダンス、狩猟などが彼の時間を奪った。二人の結婚式が行われたとき、ケンタッキーとヴァージニアの社交界は似合いのカップルだと考えた。両家とも裕福だった。それから、この結婚を作り出した有閑な社交生活はどんどん混乱の度合いを強めた。少なくともある程度のごまかしは必要になるだろうが、極めて深刻な浮気でさえ禁じられなかった。その結果、すてきな秋の登山シーズンにタッカー・タナーという名前の陽気で元気な青年がノースカロライナの山に現れ、美しいナニー・フレミングによって……当時はそう呼ばれていた……束の間の愛情が彼に注がれた。親切な友人たちは、さっそくフレミングが知らずにいたことを伝えた。ある晩、放蕩者のフレミングは高い山道で若いタナーに出くわして言った。「お前が夜までにここから出て行くか、私がお前の風穴から朝日を浴びるかだ」南部の大げさな騎士道精神がいかに非常識で理不尽であるかと、結末はどうせ弾丸だとわかっているのでタッカー・タナーは立ち去った。フレミング夫人は動揺はしたが後悔はせず、自分こそひどい目にあわされたと考えた。多くのスキャンダルがあった。それから喧嘩が始まり、双方に酒が入り、ついに離婚した。タッカー・タナーは自分の傷ついた愛を主張しそうもなかった。しかし同世代で社会的地位のある無一文でうだつが上がらない前記のアイラ・ジョージ・カーターが名乗りをあげて受け入れられた。最初の結婚で子供が一人いた。女の子だった。再婚してもう一人授かった。男の子だった。子供たちが十分大きくなって、子供には母親の愛情が不可欠であることをカーター夫人に印象づけないうちに、アイラ・ジョージ・カーターは次から次へと馬鹿げた投資につぎ込んで、妻の父親ウィッカム・ヘデン少佐が娘に残した財産の大半を浪費した。結局、夫が酒と遊興に明け暮れ、最後に死んでしまうと、貧困が迫ってきた。カーター夫人は現実的ではなく、相変わらず情熱的で、浪費しがちだった。しかし、アイラ・ジョージ・カーターの無計画で間の抜けた自滅と、子供たちに迫りつつある哀れな将来と、愛情と責任感の拡大が、ようやく夫人を正気に戻した。愛と人生の魅力は完全に消えはしなかったが、清水の泉を少しづつ飲む機会は悲しいほど減ってしまった。三十八歳でまだそれなりに美しい女性は、無価値な連中に供される籾殻を食べることに満足しなかった。社会ののけ者が陥り、未熟者が楽しそうに批判する、あの無視された状態を考えると胸糞悪くなった。自分の仲間には無視され、立派な人たちには避けられ、財産はすっかりなくなったが、裏通りのお針子や、かつての友人のお情けにすがって生きる者にはなるまいと決意した。友情と一時的な情熱から始まった最初の罪深い関係は、気づかないうちに、次に高尚な上流の世界と淫らで半端な世界との間のおかしな中間の状態へと至り、最後にルイビルで公然とではないにしても実際に売春宿の女主人になった。これを勧めたのは、事情を知っていて、彼女が立ち行くことよりも自分たちの都合を考えた男たちだった。ギリス大佐のような三、四人の友人が求めたのは部屋だった……だらだらしたり、ギャンブルや、女を連れ込める便利な場所だった。ハッティ・スターが今の彼女の名前だった。警察には漠然と……あくまで漠然と……自宅が時々、変ににぎやかになる女性だと知られていた。


人生の謎を無性に知りたがり、失敗や成功を生むドラマに理解を示すクーパーウッドは、偶然の海を漠然と航海しているこの甘やかされて育った女性に興味を持たずにいられなかった。応援してくれる強い男がいれば、ナニー・フレミングは社交界に返り咲けるとギリス大佐は言った。彼女にはすてきな魅力があった……自分と二人の子供たちのことを彼女は決して口にしなかった。何度か彼女の家を訪れた後、クーパーウッドはルイビルにいるときはいつも、カーター夫人と何時間も話をして過ごした。ある時、二人が夫人の私室に入っていくと、カーター夫人は化粧台から娘の写真を拾いあげて、引き出しにしまった。クーパーウッドはそれまでこの写真を見たことがなかった。それは十五歳か十六歳の少女の写真で、見たといってもほんの一瞬に過ぎなかった。しかし常に備わっている、必要不可欠なものや重大事項に反応するあの本能で、クーパーウッドはそれを深く印象にとどめた。写っていたのは、華奢な子供で、ものすごく感じのいい微笑みを浮かべ、細い首の上に立派なとてもバランスのいい頭がのっていて、退屈をもてあまし偉そうに構えていた。これに加えて、取り澄まして垂れたまぶたのあたりが少し疲れた感じだった。クーパーウッドは見とれてしまった。娘のために、本当は感じてもいないのに、母親に気があるふりをした。


少しして、クーパーウッドはルイビルの写真館のウインドーでベレニスの二枚目の写真を発見した……以前に娘が送って寄こした写真をカーター夫人が引き伸ばしたかなり大きなものだった。ベレニスはコロニアル様式暖炉の片隅にどちらかといえば無頓着な様子で立っていた。手には柔らかい外出用の麦わら帽子を無造作に持ち、腰の片側をもう片側より低くして、口もとには、かすかな、わかりにくい微笑みが薄っすら浮かんでいた。その微笑みは本物の微笑みではなく、ただそう見えただけであり、目は大きくて、腹黒く、純真さは偽物だった。クーパーウッドはこの写真の飾らなさが気に入った。カーター夫人が展示を認めていなかったことは知らなかった。「なかなかの人物だな」クーパーウッドは独り言をつぶやいて、写真館に入り、それを撤去して乾板を壊すにはどうすればいいかを確認した。五十ドルで、そのすべてが……乾板も写真も何もかもが……そろうとわかった。この策略で、写真を手に入れて自分のものにしたクーパーウッドは、すぐに額に入れてシカゴの部屋に飾った。午後時々、着替えを急いでいるときに、立ち止まってそれをながめた。その後見るたびに、感嘆も関心も大きくなる一方だった。おそらく、これが真の社交界の女性、高貴な生まれの淑女、メリル夫人や他の大勢の貴婦人が言わんとする理想の実現だと思った。


たまたまルイビルにいて、カーター夫人がとても困った社会的立場に立たされているのを知ったのは、この再訪の直後だった。夫人の仕事は深刻なダメージを受けた。かなり有名な市民のハーゲンバック少佐が夫人の家の特殊な状況下で亡くなった。少佐は裕福な男で、既婚者で、名目上は妻と一緒にレキシントンに住んでいた。実際は、そこで過ごした時間はほんのわずかだった。心不全で死亡した時は、カーター夫人には友人だと紹介してあった女優のミス・トレントと楽しいひとときを送っていた。警察は雄弁な副検視官を通じてすべての事実を知らされた。ギリス大佐と社会的にも政治的にも力のある人たちが介入したときは、もう少しでミス・トレントとカーター夫人とハーゲンバック少佐夫妻の写真と、カーター夫人の家に関するたくさんの興味深い詳しい記事が新聞に載るところだった。事件はもみ消されたが、カーター夫人は窮地に立った。こんなことになるなんて考えたこともなかった。


夫人の旧友たちは怖がってしばらく寄り付かなかった。カーター夫人は失意の底にいた。クーパーウッドが見たときは、泣くというとても人間らしい行為の最中で、目が真っ赤だった。


「おや、おや」クーパーウッドは夫人を見ながら言った……おまけに、服まで憂鬱な灰色だった。「まさか、何か悩みごとでもあるんですか?」


「ああ、クーパーウッドさん」夫人は哀れを誘いながら説明した。「あなたに会ったあと、大変な目にあったのよ。ハーゲンバック少佐が亡くなったことは聞いてますでしょ?」ギリス大佐から話を聞いていたクーパーウッドはうなずいた。「警察に立ち退きを通告されたところなんです。家主からも通告されました。二人の子供さえいなかったら……」


カーター夫人は悲しそうに目を軽くたたいた。


クーパーウッドは相手を気にかけて考え込んだ。


「行くあてはないんですか?」と尋ねた。


「ペンシルバニアに夏の別荘があるわ」夫人は打ち明けた。「でも二月じゃ行けないわよ。それよりも心配なのは今後の生活だわ。私にはこれしか頼るものがないというのに」


カーター夫人はいろいろな部屋に向けて全部をひっくるめるように手をくねらせた。「ペンシルバニアの別荘はあなたのものじゃないんですか?」クーパーウッドは尋ねた。


「そうなんですけど、大した価値がなくて、売るに売れないんです。ベレニスがあそこに飽きてきてるんで、そのうちに何とかしようと思ってはいるんですけど」


「蓄えたお金はないんですか?」


「ここを経営して、子供たちを学校へやるだけで精一杯なのよ。ベレニスとロルフが自分たちで何かできるチャンスを与えようとずっと頑張ってきたのに」


ベレニスの名前が繰り返されたとき、クーパーウッドはこの問題に対する自分の関心と気持ちを考えた。この女を少し援助するくらい、自分にとっては大したことではない。それよりも、そうすればやがて娘に会えるかもしれない。


「ここを引き払ったらどうですか?」クーパーウッドは最後に言った。「子供たちのことを少しでも考えるなら、いずれにしても、こんな商売はやめた方がいい。子供たちはこんなところじゃ生きていけませんよ。あなたはお嬢さんを社交界に復帰させたいんでしょ?」


「それはもう」カーター夫人は懇願しかけていた。


「そうでしょう」クーパーウッドは言った。考え事をしているときは、ほとんどいつも、手短で、冷たく、簡潔で、事務的になった。しかしこの件に関しては慈悲深くなった。


「では、それなら当面はペンシルバニアで暮らしてはいかかですか、さもなければニューヨークにいらしたらどうです? ここにはいられないでしょう。ここのものは船で送るなり、売ってしまえばいい」クーパーウッドは部屋の方へ手を振ってみせた。


「どうしたらいいのかがわかれば、喜んでそうするわ」カーター夫人は答えた。


「私の忠告を聞いて、しばらくはニューヨークに行くことです。あなたはここの経費がかからなくなるんです。後の分は私がお力になりますよ……とにかく、当分の間はね。あなたは再出発できるんですよ。お子さん方にはとんだ災難ですね。倅さんは大きくなったら私が面倒を見ましょう。ベレニスに関しては」……クーパーウッドはやんわりと名前を出した……「十九か二十歳まで学校にいられれば、社交の人脈もできてうまく切り抜けられるでしょう。あなたがすべきことは、できれば今後はここを出て、ここの古い連中の誰とも会わないことですね。娘さんが卒業したら、しばらく海外に連れて行った方がいいかもしれません」


「はい、私にできるのでしたら」カーター夫人はかなりしょんぼりしてため息をついた。


「では、私が今提案したとおりにしてください。様子を見ましょう」クーパウッドは言った。「こんな事で二人のお子さんが人生を台無しにしたら、お気の毒ですからね」


もしクーパーウッドが助けてくれれば、悲惨な暗い地下牢の抜け道が開けると知って、カーター夫人は少し感謝の気持ちを表したくなったが、相手が妙によそよそしいことに気がついて自制した。クーパーウッドの態度は時として温かく寛大だったが、彼がそう望むとき以外はすぐによそよそしくなった。ちょうど今ベレニス・フレミングの高貴な魂と、それが彼にとって価値あるものである可能性について考えていた。



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