最終話 筋肉、到達するっ!
『マッスルよ、本当に我は何もしなくて良いのか?』
「うむ。魔族と人間たちの軍隊が睨み合う地に運んでくれるだけで結構なのである」
いま私は破滅竜の頭に乗り、魔王軍と人類連合軍が向かい合う決戦の地を目指して飛んでいた。
『それだけでよいのか? 我なら全ての魔族を屈服させ、お前たちニンゲンとの争いを止めることもできるのだぞ?』
「破滅竜殿、力で無理やり屈服させても……根本的な解決にならないのですよ」
『ふむ』
「抑圧された感情は時を経てより深い増悪となりましょう。そして再び、人間族と魔族はいまと同じことを繰り返すに決まっているのである」
『ほう。面倒な者共のようだな。力でしか物事を測れない我には理解できぬよ』
破滅竜が言い、やれやれとばかりに首を振る。
「人という生き物は、親しい者の心ですら半分もわからないそうなのである。それが人間族と魔族、立場も種族もまるで違う。いくら言葉を交わせても、互いを理解することは出来ないのである」
『……そうか。む? 見えてきたぞマッスル。あれではないか?』
破滅竜に促され、前方に視線を投げる。
そこには――
「むむ? おおっ! あそこである!」
『やはりあれだったか。ほほう。ああも群れるニンゲンたちは我も初めて見るぞ。なかなかに壮観ではないか』
凸っとした突撃陣形を組む魔王軍と、凹っとした迎撃陣形で迎え撃とうとする人類連合軍。
目算で魔王軍は10000000人。人類連合軍はおよそ100000000人といったところだろうか。
よくもまあ、こんなにもかき集めたものである。
だが、よくよく考えてみればこれは互いの種族の存亡を賭けた大戦。
両軍ともに、ありったけの戦力をかき集めて事に臨んでいるのだろう。
そんなのは当たり前のことである。
両陣営から鳴り響く戦太鼓の音が、風に乗り私の耳にも届く。
太鼓の音に合わせて魔王軍が進軍を開始した。
いかん。もういくばくも猶予がない。急がなくては。
「破滅竜殿、私を早くあそこにっ!」
『任せよ』
破滅竜が速度を上げた。
あれよあれよと言う間に戦場へとたどり着く。
両軍が破滅竜を指差し、何事が騒ぎ立てている。
お伽噺にしか出てこない破滅竜が、突如として上空に現れたのだ。
混乱するのも致し方なし。
そんなのは当たり前のことである。
『マッスルよ、降りるぞ』
「うむ。お頼もうします」
破滅竜は両軍の遥か頭上をぐるりと一周し、これでもかとばかりに注目を集めてから降下。
地響きを立て、両軍が向かい合う平野の中心部へと降り立つ。
「「「「「…………」」」」」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
魔王軍も人類連合軍も、固唾を呑んで私たち(主に破滅竜)を注視している。
しーんと静まり返る戦場。
誰も彼もが言葉を失う中、唯一口を開いたのは、魔王軍を率いる大魔王フレディー・マーキュリアスであった。
魔王軍の人垣が割れ、頭の左右から立派な2本の角を生やした人物が進み出てくる。
「我の名は大魔王フレディー・マーキュリアス。強きドラゴンよ、いったい何をしに此処へ来た?」
『我は破滅竜。友の願いによりこの地に降り立った』
なんということだろう。
大魔王フレディー氏と破滅竜の一人称が被りまくっている。
「友だと……?」
大魔王フレディー氏が訝しげに言い、そこでやっと破滅竜の頭上に立つ私の存在に気づいた。
「……人間族か」
『ククク……。魔族のか弱き王よ。ニンゲンと侮らない方が良いぞ。なんせこの者は――』
「破滅竜殿、ここから先は私に話させてもらいたい」
『……そうだったな。すまぬマッスル。出過ぎた真似をした』
「なんのなんの。気にしないでいいのである。……さて」
私は大魔王フレディー氏に向き直る。
「大魔王フレディー殿、どうか鉾を収め、我々人類と和解して欲しいのである」
「強きドラゴンを従える人間よ。それは出来ぬ相談だ。この戦は魔族の総意なのだからな」
「貴方がたの街を滅ぼしたのは、私たち人間族ではないのである」
「……。やはりそうだったか。我の腹心が人間如きに遅れを取るはずがない。あの街を滅ぼしたのは――」
大魔王フレディー氏は、破滅龍を忌々し気に睨みつける。
「そこの強きドラゴンがやったのか。創生の時代から存在すると伝え聞く、そこの『破滅竜』が我が同胞が住まう街を焼き尽くしたのか」
『…………』
破滅竜が気まずそうに顔を伏せる。
だが、些細な誤解は解けたようだな。
「そうです。私が乗るこの破滅龍殿が滅ぼしたのです。我々人間はいっさい手を出していないのである。誤解が解けたのであれば、どうか軍をお退き願いたい」
「ならぬ」
「な、なぜです? なぜ我々と戦をしようとするのです?」
「決まっておろう。定めだ」
「むう、『定め』とはいったい……?」
「我ら魔族と貴様ら人間族が解り合う日は未来永劫ない。ならば――」
大魔王フレディー氏が手に持つ杖を掲げ、声を張り上げる。
「我ら魔族と貴様ら人間族が争うのは必然。いずれ剣を、牙を、爪を、魔杖を交えるのならばっ! いつ戦っても同じことよ。それが『いま』であってもなっ!」
大魔王フレディー氏の眼は真剣そのもの。
本気で人類を滅ぼそうとしている眼だった。
「人間よ、貴様が破滅竜の助勢を得たとしても我らは決して退かぬ。最後の一人になっても戦いきってみせようぞ!」
「し、しかし――」
「最早語る言葉もなし。魔族の同胞たちよっ! 進軍せよ!!」
大魔王フレディー氏の号令の下、魔王軍が前進をはじめた。
「私と言葉のキャッチボールはできない、か。そう申すのであれば私にも考えがあるのである」
『ほう。どうするつもりだマッスルよ?』
「こうするのであるよ! エリィ! リアーナ! 君たちの出番であるっ!」
私は指で輪っかを作り、「ピュ~♪」と口笛を吹いた。
すると――
『グガァァァァァァァアアアッ!!(待ちくたびれたぞ兄者!!)』
『ガアァァッ! ガォォォオオオオオンンッ!!(兄さま! いま行きますわ!)』
近くに身を隠していた弟妹(クマの方)たちがその身を起こし、こちらに向かって駆け出す。
「くっ、『深遠なる幻獣』だと……」
大魔王フレディー氏がその顔に焦りの色を浮かべた。
己よりも強いとされる存在が、すでに3体もこの場に現れたからだからだろう。
「マッスルくーん!」
「マッスルさーん!」
弟妹たちの背に乗るエリィとリアーナが私に向かって叫ぶ。
「みんな、よく来てくれた」
「マッスルくん、あたしたちの準備はできてるよ。ね? リアーナちゃん」
「はい。このときのためにいっぱい練習してきました」
「ふっ、すまないなふたりとも。私に付き合ってこんなところにまで来てもらって」
「マッスルくん、それは言わない約束だよ」
「そうです。わたしたちは自分の意思でここにいるんですから」
「エリィ……リアーナ……。ふふ。ふたりとも強くなったな」
「へへ。マッスルくんのこいび――んーん、友達だからね!」
なぜか顔を赤らめたエリィが、照れたように笑う。
「あたしたちの準備はバッチリだよ。マッスルくんさえよければいつでもはじめられるよ?」
「ありがとう。では――」
私はエリィとリアーナの2人と頷き合い、次いで大魔王フレディー氏に向き直る。
大魔王フレディー氏の紅い瞳と、私のブルーな瞳がかち合う。
「破滅竜と深遠なる幻獣。そうか……我ら魔族を根絶やしにするつもりだな?」
「言葉を交わすだけムダ、であったな?」
「……そうだ」
「なら私は私なりのやり方で貴殿に――魔族に――そして人類に――この世界の生きとし生けるもの全てに語りかけるのであるっ! 墳っっっ!!!」
全身に力を込める。
膨張した筋肉が衣服を破り散らし、エリィお手製のポージングトランクス1枚の姿となった私。
そして――
「ミュージック、スタートッ!!」
私がパチンと指を鳴らすと、背負っていた弦楽器を手前に引き寄せたエリィが演奏をはじめた。
まだまだ拙い演奏ではあるか、一生懸命に弾き小気味よいテンポのメロディが紡がれる。
エリィの隣では瞳を閉じたリアーナが大きく息を吸い込み――
「マッスルさん! そしてみなさんっ、わたしの歌を聴いてください!!」
歌を歌いはじめた。
「歌……だと?」
大魔王フレディー氏が呟く。
そう。歌である。
私はエリィに演奏を、そしてリアーナにヴォーカルを頼み、哀しみを生み出そうとしているこの戦場にミュージックを流してもらったのだった。
「ありがとうふたりとも。私のワガママを聞いてくれて。そしてこのミュージックに全力で応えよう。私の――筋肉を持ってしてなあっ!!」
私は全身に力を込め、ミュージックに合わせてポージングをしていく。
リアーナが歌うR&Bの曲調に合わせ、ポージングをしていったのだ。
なぜなら――大魔王フレディー氏に言葉が届かないというのならば、残された手段は最早肉体言語のみ。
そんなのは当たり前のことである。
破滅竜の頭上に立つ私の姿は、戦場のどこからでも見える。
私は肉体言語を用いてこの場にいる全ての人々に訴えかけることにしたのだ。
戦争なんてやめようと、願いを込めて。
私は全力でポージングを繰り出していく。
リアーナはそんな私を支えようと必死になって歌を歌っていた。
しかし――
「―――――……ッ!?」
突如として、リアーナの歌声が途絶えた。
「ま、マッスルくん、リアーナちゃんの声が枯れちゃったよう」
エリィが泣きそうな顔で言う。
昨夜遅くまで練習していたせいで、喉をしこたま痛めているらしかった。
くっ、これはまずい。いったいどうすれば……。
焦る私。
狼狽えるエリィ。
枯れた声で尚も歌おうとするリアーナ。
その時だった。
「ケッ、ムリして歌うからそんなことになんだよ」
「あ、あなたは――」
「さっさとそこをどきな。俺たちが代わってやるよ」
「そーだそーだ。さっさと代われー」
「そこはジョビィくんのステージだぞー」
突如現れたジョビィくんが、リアーナを押しのける。
おそらくは弟(クマ)をよじ登って来たのだろう。服が汗でびっちょりしていた。
ジョビィくんは弟(クマ)の背から破滅竜に乗る私を睨みつけ、挑戦的な笑みを浮かべたまま問いかけてくる。
「おい筋肉お化け、俺の歌についてこれるかよ?」
「ッ!? ジョビィくん……君は――ふ……ふふふ。そんなのは当たり前のことであるっ!」
「そうかい。なら――」
ジョビィくんは持参してきたマイクロフォン(マジックアイテム)を空中でくるくる回してからパシッと握りしめる。
ジャララン♪
ズンズンダン♪
ジョビィくんの取り巻きがやはり持参してきた弦楽器を鳴らし、太鼓を叩く。
みな楽器を持っているところを見るに、どうやらこの三人は音楽隊として従軍していたようだった。やけに演奏が手慣れている。
「戦争なんかくだらねぇ! 俺の歌を聴けぇーーーー!!」
ジョビィくんがシャウトする。
「いくぜ! イッツ・俺・ライフ!!」
それは――魂の咆哮であった。
まるで人類を襲う未曽有の危機に歌だけで立ち向かわんとする、魂の咆哮だった。
ジョビィくんの歌が筋肉を刺激し、刺激された筋肉が膨らみかつてない力こぶを作り上げ、サビのところでポージング。
音楽と筋肉が融合し、ボディビルになる。
そんなのは当たり前のことである。
人類連合軍も魔王軍も、大魔王フレディー氏ですらジョビィくんの歌声に合わせて隆起する私の筋肉に目が釘付けだった。
魂と筋肉を揺さぶるナンバーが何曲も続き、額に汗の粒を無数に浮かべたジョビィくんが荒い息をつく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
弟(クマ)の背によじ登るのに体力を使い、その上全開で歌っていたのだ。
疲労も溜まるというもの。
「ジョビィくん大丈夫?」
「ジョビィくん水持ってこようか?」
取り巻き2名が心配そうにジョビィくんの顔を覗き込む。
誰の目にも疲労は明らか。
ボディビルもこれまでか。誰もがそう思った時だ。
――戦場に、天使の歌声が響き渡った。
「スーザン先輩……」
人類連合軍から離れ、こちらに向かって歩く麗人。
すなわちスーザン先輩は、天使のような歌声を響かせながらゆっくりとこちらに向かって近づいてくる。
その後ろには、元生徒会のイケメン集団(いまは『裏路地少年聖歌隊』と名乗っているらしい)がコーラスしながら追従していた。
「アームストロング君、なにを止まっているのです。筋肉を――ポージングを魅せ続けなさい。貴方の筋肉はこの日のために鍛えてきた、そうでしょう?」
「――っ!? はいっ!」
スーザン先輩が歌う壮大な歌に合わせ、私は筋肉で戦争の愚かさをみなに語りかけた。
みな筋肉と天使の歌声に心を洗い流され、憑き物が落ちたかのようなすっきりとした顔に変わっていく。
「さあ、次はガガさんの番ですわよっ」
「わかった」
スーザン先輩から指名を受け飛び出してきたのは、私の教え子であるガガだった。
私が不在の間も黙々とトレーニングを続けていたのだろう。
最後に会ったときより一回り体のサイズが大きくなっている。
「レデイの里のみんな、笛吹く。太鼓叩く」
なんと、ガガが合図を送ると獣人の集団が集まり、笛や太鼓で演奏をはじめたではないか。
それを見た私の胸に、熱いモノが込みあげてくる。
ガガが、呪いのせいで里を追い出されていたあのガガが、あんなにも大勢の同族たちに囲まれている。
筋肉を鍛え呪いを克服したことにより、かつて追い出された故郷の里の者たちから仲間として認められたのだ。
「ガガ、歌う」
故郷の仲間と共に、ガガは歌っていた。
ポップでキャッチーな曲と私の筋肉が、人類連合軍と魔王軍のハートまでキャッチする。
みなリズムに乗り、体を揺らしはじめたではないか。
こうなると黙ってられないのが親父殿たちだ。
「へへっ、マッスル……俺たちも混ぜてもらうぞ。いくぜみんなっ!!」
親父殿が威勢のよい声をあげ――
「「「「応っ!!」」」
セクロスピストルズの面々がそれに応じる。
親父殿たちは音楽隊からボッシュートした楽器を手に演奏をはじめた。
さすがは三十路。十代の若者たちとは年季が違う。
超一流の演奏を受け歌いはじめたのは、意外なことにジョニー氏だった。
ジョニー氏の力強いヴォーカル。
それに負けじと私も力強いポージングを繰り出していく。
そして戦場は――いいや、ボディビル会場は沸点を迎えた。
興奮のるつぼ化したボディビル会場で、最初に動いたのは大魔王フレディー氏だ。
大魔王フレディー氏は、手に持つ先端に水晶球がついた杖を口元に引き寄せ――
「貴様ら人間の歌は十分に堪能した。こんどは我ら魔族の歌を聴いてもらおうか! 心して聴くがいいっ!」
自ら歌いはじめたのだ。
マントを脱ぎ捨て勇ましい胸毛が顕になる。
だが、そんな事が気にならないぐらい凄まじい歌声だった。
圧倒的な声量。
カリスマのみが持ち得るオーラ。
それらと私の筋肉が融合し、ボディビル会場をかつてない興奮が包み込む。
最早、その手に武器を持つ者は誰ひとりとしていない。
それどころか、あんなにも敵対しあっていた人間たちと魔族が肩を組み合い歓声をあげては、ポージングする私を高揚した顔で見上げている。
大魔王フレディー氏の歌は止まらない。
まるで私の筋肉を貪り求めるかのように歌い続けていた。
――もっと、もっと。
――もっと、もっと、もっと。
――もっともっともっともっとその筋肉を魅せてくれ。
そんな大魔王フレディー氏の想いが歌に乗り、私の心に届く。
ここまでくると、私の筋肉と大魔王フレディー氏の歌声は完全にシンクロしていた。
もう、次にどんな曲を歌うのか、どんなポージングをするのか、事前打ち合わせなく理解し合っていたのだ。
そして――ついに奇跡が起きた。
「キレてるよ!」
不意に、誰かが叫んだ。
そしてそれがきっかけとなって――
「胸の筋肉で谷底ができてるよ! あの谷底に落ちたい!」
「俺はあの腹筋で大根をすりおろしたい!」
「ジャイアントオーガよりデケエ!」
なんということだろう。
掛け声だ。
自然と掛け声が起こりはじめたのだ。
「背中に羽が生えてるよ!」
「肩にドラゴンのタマゴ乗せてんのかいっ」
「筋肉ギルドマスター!」
「全身バキバキだぁ!」
「筋肉が尋常じゃないよ!」
「そこまで絞るには眠れない夜もあったろう!」
「よっ! 筋肉大本舗!」
掛け声は止まない。
人類連合軍側からはもちろんのこと、魔王軍からも掛け声は飛んでくる。
「土台が違うよ、土台がぁっ!」
「脚が魔剣の千倍太いよ!」
「アニキと呼ばせてくれ!」
「腹筋にイージスの盾がついてるよ!」
止むことのない掛け声。
そう。人類と魔族が分かり合えた瞬間であった!
私のポージングがフィニッシュを迎えると同時に、大魔王フレディー氏の歌が余韻を残しつつ終わりを迎える。
瞬間――万雷の拍手と爆発的な歓声があがった。
「「「「「「「「「マーーーッスル!! マーーーッスル!! マーーーッスル!! マーーーッスル!!」」」」」」」」」」
会場中が私の名を叫んでいた。
人類の王族たちが、7人の魔王が、大魔王フレディー氏が、深遠なる幻獣の弟妹たちと木陰から見守っていた母上(クマ)が、破滅竜が、みな手を叩き私の名を声高らかに叫んでいる。
全てが――ひとつになっていた。
「マッスルくん……やったね」
私のそばにやってきた(破滅竜が持ち上げていた)エリィが目に涙を浮かべ、くしゃくしゃになった顔を私に向ける。
「マッスルくん! マッスルくんは最高だよ! 最高の――ぼでぃびるだーだよっ!!」
最高のボディビルダー。
その言葉が私の心を震わせる。
眼下には、私を称える1億1千万の人々。
「そうか……私は――」
自然と涙が溢れ出る。
私が目指していた――『最高』。
「う、う、う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
私は雄叫びをあげた。
「うおおぉぉぉぉッ!!!! うおおおおおぉぉぉぉぉッ!!! うぉぉぉおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!」
心のままに叫び、心のままに涙を流した。
これほどまでに感情が溢れ出てしまったのは、前世を合わせてもはじめてのことだった。
日本で餓死しオリンビアと呼ばれる異世界に転生して、13年と少し。
私は遂になれたのだ。
前世から目指し続けていた存在、『ミスター・オリンビア』に。
ボディビルダーだから最後の戦いは拳じゃなくてポージング。