4.勘違いするぞ?
遅くなってしまってすみません。次からは異世界に入る予定です。
あれから1ヶ月近くたった。
去年までは学校に行くという行為は気がめいることだったというのに、友達ができたことによって教室の扉を開ける行為すら楽しみの一つになるとは考えたこともなかった。
教室に入る時間はいつもギリギリだ、毎朝早く起きているんだが、なぜかいつもギリギリになってしまう。
「あ、透おはよーさん、にしてもいつもギリギリやな。」
「あぁ、おはよう。いつもギリギリになってしまうことに関しては俺も不思議でならない。」
弘樹とはこの1ヶ月で親友とまで呼べるくらい仲良くなった…と思っている。ただ仲良くなれたキッカケがアニメの力であって俺自身の力でないのがくやしい。
教室の扉が勢いよく開いて女の子が2人走りながら入ってきた。
「セ、セーフ。」
「ハァ、ハァ…。」
「透よりもギリギリな奴らがおったな。
どしてん今日はえらい遅いやん。」
少し俺に失礼だろう。
「うるさい、そーゆー時もあるわ。」
「ごめん咲ちゃん私が寝坊しちゃったから。」
「いいって気にしんといて。」
「おーおー、優しいやっちゃのう。」
確かに優しいな、ちなみにこの2人も俺の友達だ。
三島咲
茶髪をポニーテールにした少しオカン気質がある女の子で頼りになる。可愛いというよりは美人といった感じの顔つき。
どうやら弘樹と幼馴染みだったようで、気づいたら仲良くなれていて1人友達ができるだけでこんなにも変わるものかと驚いた、あの時は。
もう1人の女の子、桐島葵
黒髪を肩にかからないくらいまで伸ばして、軽く巻いている。三島とは違い桐島は少し幼い部分が残る可愛い顔つき。
少し天然が入っていて、たまにオドオドすることもある。三島と中学からの親友だそうで、いつも三島と一緒にいる気がする。
3人と仲良くなってからは昼は大体四人で食べる、四人で食べようと誘われた時は泣くかと思った…。
「それで今日の夜一緒に食べに行きたいんやけど、みんな行ける?」
今は今日の夜食べに行こうという話をしている。もちろん俺は行く、腕がちぎれてでも行く。
「俺は行ける。」
「うちも〜。」
「私も大丈夫だよ。」
みんな行けるようだ、良かった。
「ほなクラブ終わったらそのまま行こか、透は待つんか帰ってから合流するんかどーする?」
「図書室で勉強しながら待ってるよ。」
「了解〜。」
今から楽しみで仕方がないな。
結局ラーメン屋で食べた、女子もいるのにラーメンのチョイスはどうかと思うが、美味しそうに食べていたからいいんだろう。
「いや〜、食った食った。うまかったなぁ〜。」
「確かに美味しかった。うち久しぶりにラーメン食べたわ。」
確かにうまかった、だがラーメンを久しぶりに食べただと?俺は毎週2回は食べているのに。信じられないな。
「あ、かげっち葵家まで送ってくれる?うち自転車やから。」
「えぇ⁉︎ちょっと咲ちゃん⁉︎私大丈夫だよ?」
「いいから送ってもらい、あんたも送ってもらいたいやろ?」
弘樹と三島は自転車で、俺と桐島は電車だ。
「う〜…そ、そうだけど。影山くん、お願いしてもいいかな?」
「あぁ、送っていくよ。」
「あ、ありがとう…。」
「あ、あの!お、送ってくれてありがとう。
今日は楽しかったし、また行きたいね。」
「あぁ、また行きたいな。」
「あ、あの影山くん!」
「ん?何?」
「あ、えっと…と、透くんって呼んでもいいかな?」
「え?あ、あぁ、もちろん。」
ちなみに俺は別に鈍感ではないが勘違いしやすい。だから急に名前呼びの許可を頼まれてしまうと色々考えてしまう。
え⁉︎この子俺のこと好きなのか⁉︎どーなんだ⁉︎いや待て早まるなただの名前呼びじゃないか、よくあることだ…ここで勘違いはしてはいけない。
みたいな、こうなるのは決して俺だけではないはずだ…。
「と、透くん。」
「何、桐島さん。」
「また明日。」
「あぁ、また明日。」
俺顔赤くなってないよな、女子からの名前呼び思った以上に照れる。
あ〜、1人になると急に寂しくなるな。
これ俺弘樹たちと離れ離れになったら死ぬんじゃないか?ウサギみたいに。
「私は早く帰りたいんだ、そこを退いてくれないか。」
「そんなこと言わずにさ〜、俺たちとイイコトしようぜ〜。」
「そうそう、イイコトイイコト。ギャハハ!」
なんだあれ、若い女性が柄の悪い男数人に道を塞がれてる。これは助けたほうがいいのか?
「そんなことに付き合うつもりはない、
通らせてもらう。」
「おいちょっと待てって。」
男が女性の細い腕を掴んだ。ってあの人俺のクラスの人じゃん!
「その手を離さないか、私は早く帰りたいと言っているだろう。」
「話すわけないだろ。おい、お前ら車まで連れてくぞ。」
「おっけ〜。あ〜、早くヤりてえ。さっさと連れてこう!」
「なっ!やめっ!」
まずい!早く助けないと!
「おい!お前らその手を離せ。」
やばい、すごい恥ずかしいんだけど。
「え?何こいつ正義のヒーローってか?」
的確に俺の心えぐるなよ!恥ずかしくて軽く死ぬぞばかやろー!
「いいから離せって。」
「邪魔だな、取り敢えずボコってどっか捨てとこう。」
「了解了解〜。」
「帰るんなら今のうちだぜ〜。」
なんか、殴りあう空気じゃん、別にそんなつもりはなかったんだけどな。
「あ〜、俺強いぞ?やめとこうぜ、殴り合いとか。」
これで引いてくれれ「うっせー!サッサとくたばれ!」ば…。うぉっ!あぶねえいきなり殴ってくんなよ。
やるしかない…か、取り敢えず脳揺らして立てなくしたらだろ。
「はぁ、お前ら吐くかもしれないから気をつけろよ?」
「ふぅ、完了っと。」
「すまない…助かった。本当にありがとう。私は朝霧楓という、君は影山くんだったか?」
朝霧楓って言うのか、艶やかな黒髪を腰まで伸ばしている、すごい美人だ。
なんか、キリッとした話し方だな、カッコいい。てか、俺の事知ってるのか⁉︎驚きだ…嬉しいけど。
「あ、あぁ、俺の事知ってるんだな。」
「クラスの人は全員覚えているよ。普通だと思うのだが。」
去年はクラスの人に名前呼ばれた事すら無かったから普通だと思わなかった。
「それより、送っていくよ。こんな事になったのに1人で帰らすのは心配だからな。」
「む、そうか?ありがとう。君は…私が抱いていたイメージとは随分違うようだ。もっと脆弱だと思っていた…。」
ぜ、脆弱って、なんか傷つくな…。
「す、すまない悪気があったわけではないんだ…。だからそんな顔をしないでくれ。」
「いや、いいんだ。気にしてない。」
大嘘だがな。
「取り敢えず送るよ。」
「ありがとう、私の家はこっちだ。」
「え?でか…。」
何ここ時代劇に出てきそうな場所なんだが…。
「私の家は剣道場を開いていてな、なんでも江戸時代から続く名門らしい。」
「へぇ、すごいな。」
「私の誇りだ。今日は送ってくれてありがとう、この礼はいつか必ず。」
そんなのいいんだけどな。
「あぁ、じゃあ帰るよ。これからは夜に1人行動は控えた方がいいぞ。」
「その時はまた君に送ってもらうよ。」
「え?あ、うん。任せてくれ?」
「では、また。」
「うん、バイバイ。」
おい、今のはなんだ…。俺に送ってもらうってなんだよ。また勘違いしそうになるからやめてくれ…ほんと。
もう帰って寝よう。
読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。