18.再会と魔道具
「それで影山君、あの女性は誰なのだろう。説明してくれないか?」
「わ、私も気になるよ。透くん!」
本当にどう説明したらいいものなのか…
「えー、そのだなあ。まあ、あれなんだ。桐島達が俺を必死に探してくれていたのに浮かれていたと言われて仕方ないんだが…彼女だ。」
何も変な言い訳しなくてもいいよな、うん。
「彼女か、おめでとう影山君。」
「か、彼女?彼女…。そ、そうなんだー。おめでとう…透くん。」
「…違う、嫁。」
イリア、なかなか嬉しいことを…そうか。イリアが嫁というなら嫁なのだろう。
「やっぱり嫁だ。」
「そうか、おめでとう。影山君。」
「よ、よめ〜?もうやだよ。」
ん?桐島は何が嫌なのだろうか。
「ありがとう、これからも仲良くやるつもりだ。そういえば、どうしてここが分かったんだ?」
「ああ、それはだね…これだよ。」
そう言って朝霧が取り出したのはガチャガチャのカプセルのようなものの中に矢印が浮いているもの、おそらく魔道具。
「それは?」
「これはだね、山本君が作ってくれた君を探すための魔道具。その名も『どこかな?トオル君!』だよ。半径1キロ以内では効果はないがそれよりも遠い場所にいればこの矢印が君のいる方向を示してくれるという優れものだ。」
「それはまた…あいつも便利なものを作る。」
「そうだろう?ちなみに君を探すにも君の生体情報が必要だったんだがね。それが無いとどうにもならなかったんだが桐島さんが持っていてね。本当に助かったよ。」
「あはは、たまたまだよ〜。たまたま…本当に…。」
「ありがとう、桐島。」
なぜが挙動不審になりだした桐島に礼を言っておく。
「それでだね、本当なら私につけてもらった転送用のマーカーをめがけて山本君達に合流来てもらう予定だったんだが…木場くんの魔法はどうやら距離に比例して必要魔力が増えていくらしいんだよ。私たちが出発する前でまだ5キロしか転送出来なかったからまだ無理なはずなんだ。ということで、山本君達の所に近めのダンジョンを目指したいんだが…異論はあるかい?」
とりあえず俺はいいと思う、もとよりそのつもりだったし。だがイリアがどうか分からないのでとりあえず聞いておく。」
「イリア、いいか?」
「うん…。」
「と言うことなんで俺たちもOKだ。」
「なら準備が完了でき次第出発ということで。」
桐島達とはこれからの方針を決めてから別れた。二人はこの宿の別の部屋に泊まっている。
その日はすぐに準備に取り掛かった。と言ってもこの前の長旅とあまり変わらない荷物だ。
準備は2日もかからず終わったのですぐに出発する、特に親しい人物がいたわけでもなかったので宿のおばさんに挨拶をしてからの出発だ。
次に向かうダンジョンの場所は王国にまっすぐ向かう道から少しそれた所、都市の名前はキルテムン。ちょっとした砂漠地帯でオアシスにあたる所がキルテムンらしい。
ダンジョンはキルテムンから数キロ離れた場所にあるとのことだ。
今俺たちは馬車に乗って旅をしている、誰も馬を操れないがまたも弘樹の魔道具『操るくん』のお陰で助かっている。操るくんはその名の通り操る魔道具だ。
詳しく説明するなら馬などの首に装着するもので相手に上下関係を分からせ上に立てれば操ることが出来るという恐るべき魔道具だ。
ただし操る間は魔道具についた紐の先にある握り手を持ち常に魔力を供給させなければならない上に燃費は少し悪いため完璧とは言い難いらしい。
馬車自体は荷物を全部入れるとギリ3人までしか入れないといった大きさ、あまり大きいのを買わずに…何て思っていたらこうなってしまった。
けど基本的に馬を操る人の隣に話し相手として誰かしら座ることにしているので特に問題はない。
ちなみに馬は2匹使用しております。こいつらと馬車でダンジョンで稼いだ金がだいぶ飛んでしまったが仕方ない。
砂漠のためか定期的に向かう馬車はこの近くでは年2回ほどでつい2ヶ月ほど前にそのうち一回が終わったらしいのだ。
「そろそろいい時間だ、今日はこの辺りで野宿をしようか。とりあえずご飯にしようか。」
馬車には俺たちのオーク肉も大量に積んであり、主に食べるのはそればかりだ。栄養が偏るため野菜も凍らせて積んである。
今回はオーク肉を使って朝霧と桐島が丁寧に料理をしてくれている、朝霧の包丁さばきがカッコよすぎて目が離せない。
朝霧の担当は包丁だけだったようであとは手際よく桐島が料理を進めていく、やっぱ料理うまい女の子いいよな。
「はい、完成だよ。いっぱい食べてって言いたい所だけど量に限りがあるからおかわりはないよ。」
作ってもらったのはシンプルにステーキとサラダ、だが何故か俺が焼いた肉とはレベルが違うものだった。
イリアと俺はもう言葉をなくし夢中で食べ進めた。
「桐島、これ半端なく美味しいな。お前凄いよ。」
「そんなことないよ、それよりもこの肉自体が美味しすぎないかな?こんなの初めて食べるんだけど。」
「確かにこの肉のレベルは凄いよな。」
食後は身体を拭いてテントの準備現代日本で生きてきた朝霧達にはきついかと思ったがなんとそこも弘樹マジック。
シャワーの持ち手部分から先の魔道具『シャワちゃん』魔力を込めることであったかいシャワーが出る道具らしい。
凄まじく便利、あいつはなんてものを作るんだ。だがこれは先程の操るくんよりも燃費が悪いらしい。
材料で燃費なども変わってくるらしいからな、いずれ素晴らしいものを作るはずだ。とは朝霧さんの御言葉。
シャワちゃんは俺とイリアも使わせてもらった、もちろん二人でシャワーだがなにか?
シャワーのあとは寝る準備ということでテント張り、そこでもまた朝霧達に驚かされた。
一見子供達が使うような小さなキャラものテントほどの大きさのショボいテントにしか見えないのに入ってみればあら不思議。
中には六畳ほどの部屋が広がっておりました。
魔道具『ビックリテント』これも天才魔道具職人弘樹の作品だ。
イリアもあちらで寝させてもらうか聞いてみたが俺と一緒のテントが良いとのことなので一緒に寝る。
とりあえず弘樹が作るものが便利すぎて恐ろしい。
読んでいただきありがとうございます。
ちなみに現在時ではまだ朝霧は透に恋してるわけではありません。




