15.転送用魔法陣
おかしいところなどがあれば指摘よろしくお願いします。
20階での休憩もとい昼食を済ませた後は次のボスがいる30階を目指す。
21.22.23階と順調に進んでいたが24階から出てくる魔物がなぜかゴブリンのみになってしまっていた。
ただゴブリンとはいえどダンジョンというものは下の階へ行くほど魔物の強さは強くなっていくものなので、上の階のゴブリンとは強さが比べ物にならないのは当然だ。
にしてもなぜこんなにもゴブリンばかりなのかがわからないが、おそらくここのダンジョンマスターである魔人族にも考えがあるのだろう。
出てくるゴブリンどもを倒し続け気づけば30階のボス部屋の前まで来ていた、やはりいくら強いといえどゴブリンなので苦労もなくボス部屋までたどり着く。
30階のボスはここまでの流れ通りゴブリン系統のようだ、地図にのっている情報によればロックゴブリンという種類のゴブリンらしい。
名前の通り岩のように硬いらしく剣ではダメージが通りにくいため、魔法もしくは打撃系の攻撃でゴリ押しが推奨されている。
まぁ、それでも朧紅月であればすぐにスパッと斬れるはずだ、それに朧紅月でなくても熟練の剣士ならば斬れると思う、ちなみに俺は熟練の剣士ではないので朧紅月でなければ斬れる自信がない。
「イリア、ボスはロックゴブリンって硬いゴブリンみたいなんだが、俺に任してもらってもいいか?」
「…任せた。」
イリアの了承もいただいたところでボス部屋の扉を開ける。
中に入ってボスの姿を確認すればような薄茶色のゴブリンがいる、大きさは大体2メートルほど、普通のゴブリンは70センチ程なのでだいぶ大きい。
聞いた話によるとロックゴブリンの大きさはゴブリンキングの次に大きいらしい、なんでもゴブリンキングは3〜4メートル程らしい、その大きさはゴブリンではないと言いたい。
まぁ、大きさの話は置いといて、ロックゴブリンの他にハイゴブリンが4匹にゴブリンメイジが2匹ほどいる。
名前の通りだがゴブリンメイジは魔法使うゴブリンだ。
「イリア、ロックゴブリン以外はよろしく。
」
「うん。」
イリアにロックゴブリン以外を任せて俺は朧紅月を手に出現させる、今回はいつもと違い接近戦は行わずに離れた位置から殺そうと思う。
どうするかといえば、朧紅月の力を軽く解放して、そのままゴブリンめがけて振り下ろす。すると振り下ろした剣からおなじみ紅黒い刃が飛んでいきロックゴブリンに当たる、そしてそのままスパンッと真っ二つに斬れる。
やっぱり、朧紅月強いな、剣ではダメージが通らないと言われるロックゴブリンに刀を使っているのに一方的すぎる戦いだ。
あと力の解放というのはそのままの意味だが詳しくいえば、朧紅月は俺から長年漏れ出した力の結晶でありそこには凄まじい力が込められている、がそれはある意味封印でもある。
そしてその封印を少し解いて込められた力を解放すれば刀を振ることで刃を飛ばすことも可能になる、といった感じだ。
ボスのドロップ品を拾う、ロックゴブリンの落としたものは何かと見てみれば石だった、何か特別な石かと調べてみるだろ?普通のどこにでもある石だった、信じられん。
「今日はここで休もうか、明日40階まで行って転送用魔法陣を解放して帰ろう。ってことで今からオーク肉焼くから待っといてくれ。」
「…分かった。」
俺はリュックからオーク肉を取り出し調理していく、と言ってもいつものように丸焼きに塩と胡椒を振るだけだ。男の料理とはこんなものである。
「イリア焼けたぞ〜。」
肉が焼けたのですぐ近くに寝転がっているイリアに声をかける。
「早く食べようトオル。」
「分かってるって、ほい。いつも通りの味付けで悪いな。」
「ありがとう…いつも通りでも美味しい。」
まぁ、確かにオーク肉の質が高いためこの味付けだけでも美味しすぎるからおれも満足なんだよな。
いつものように肉を頬張るイリアを眺めながら俺もオーク肉を食べる。
小さい口いっぱいに頬張りリスのように頬を膨らませるイリアの可愛さは、とても言葉で表せるレベルではない。これを見ながら食事をできる俺は幸せ者だ。
食事が終わればどうせダンジョンの中ということでイリアに水魔法を教える、と言っても攻撃魔法ではなく生活魔法の方だが。
「えっと、イリアそのイメージはだな。こう身体を水が包んでシャパンッとなって水がなくなって綺麗になるみたいな。」
「…こう?」
イリアがそう言って俺に向けて魔法を発動すると俺は水に包まれていた、そして俺のイメージでいうシャパンッの部分なのだろう。俺の身体に決して浅くはない切り傷を与え水が消えていく。ちなみに俺の傷は数秒で再生され完全になくなるが痛いものは痛い。
「イリア…違う。」
「…ねぇトオル、寝よう?」
どうやらイリアは生活魔法は諦めたようだ、寝る気満々である。俺も教え方が悪いのはわかっているんだが…困ったな。今日は寝るか。
リュックから敷き布団と毛布を取り出し先程魔法をつかったところから離れた場所に敷く、俺は別に寝ようと思えばどこでも寝られるが出来る限り布団で寝たい派の人間である。
「イリアー、寝るからこっちこーい。」
ボス部屋の端で水魔法を使い遊んでいるイリアをこちらに呼ぶ、生活魔法は無理だったが攻撃魔法は教えずともなんら問題なく使用できるようだ…何故だ。
「トオル…腕。」
「どうぞ。」
最近イリアは寝るときに俺の腕を抱き枕のようにして寝るのにはまっているらしく夜は俺の片腕はイリアに抱きしめられているのだ、腕に感じる色々なものが俺の理性を飛ばそうとしてくるにも関わらず、未だイリアを襲っていない俺を褒めて欲しい。
翌朝イリアに男子に起こる朝の怪奇現象を見られないように気をつけながら、昨日イリアに出しておいてもらった水で顔を洗う。
俺の魔法は火で炙ることはできるが水を貯めることはできないという謎仕様のため便利なようで不便だ、ちなみに風で髪を乾かすことはできる。
恐らく攻撃とみなされるかそうでないかと違いと思っているが、水貯めるのもそこに沈めれば立派な攻撃ではないかと俺は思う、やはり謎だ。
後日気づいたことだが水鉄砲として出せば貯められることがわかった、ただ紅黒いため害のない水ではあるが決してそうとは信じられないのでイリアに出してもらうことに変わりはなかった。
イリアも目が覚めたので顔を洗わせてイリアが起きてくるまでに焼いておいたオーク肉を食べる、朝からガッツリ食べるのも案外いいものだと最近思っている。
朝の準備が終わったので40階を目指してまたダンジョンを進んでいく、次のボスからは地図にも情報が載っていないため何の準備もできないが、これまでも特に準備などしていなかったので特に心配はしていない。
そして31階からは出てくる魔物に新しくコボルドが追加された。
コボルドは犬の顔をした人型の魔物でゴブリンより少し強い程度で特に苦戦することはない…特に苦戦しない魔物ばかりにしか出会っていない気がする。
まぁ、そんなこんなでゴブリンとコボルドしか40階までは出なかった、と言っても24〜29階までは単なるゴブリンしか出てこなかったが、今回に関してはソードゴブリンやアーチャーゴブリンなども出てきていたが。
40階の魔物はこれまでの感じでいくとコボルドの上位種かまたまたゴブリンの上位種だろうか?ボス部屋に入るまでわからないな。
とりあえずボス部屋に入るか、ということで扉を開け中に入る。
ボスの姿は丸く、大きく、そしてポヨンポヨンしていた、決して女性の象徴パイではないということを先に言っておく。
まぁ、何かと言えばくそでかいスライムだ、大体6メートルほどだろう、本当にでかい。
とりあえず朧紅月で斬ってみた、結果は予想通りくっついた、確か核を破壊しないといけないっていうのがスライムの倒し方だが、あれだけ大きいから核もデカイのかと思いきやどこにあるか全くわからない。
「イリアはあいつの倒し方知ってる?」
「…小さいのは踏み潰した。」
小さいのならそれでいけるだろうが。
「あのサイズは?」
「…知らない。」
「だよな。」
どうしようか…とりあえずゴリ押しで斬りまくるかな。
「ハァ、ハァ、全く無理じゃねーか。」
斬っても斬っても小さくなる前にくっつきやがるから、核を斬るところまでたどり着けない。
次は魔法を試すか、多分火属性が効きやすいよな。
一度呼吸を整えてから魔法を発動する、とりあえずは炎槍で様子をみるため、長さ1.5メートルほどの炎の槍を形成する。
どうなるかわからないので注ぎ込む魔力量を結構多めにしてさらに少し細工をする、これをスライムに向かって飛ばす。
スライムに向かって炎槍はまっすぐ飛んでいき、突き刺さってスライムに沈み込んだ辺りで…爆発した。
爆発といっても炎が槍から溢れ出したといった方が正しい、どちらにしても効果は抜群だったようでスライムはチリ一つ残さず燃え尽きた。もちろん爆発したのは偶然ではなく俺が仕込んだからだ。
しかしこんなにあっさりと死なれるとあそこまで刀を振り続けた自分が恥ずかしいな。
俺の微妙な気持ちは置いておきデカスライムのドロップ品を確認する、大きさは大体布団と同じくらいの硬めのスライムみたいな物だった。使ったことはないので分からないがフォーターベッドがこんな感じなんだろう。そしてふと思ったんだが、ベットかベッド…どちらが正しいんだろう。
まぁ、なんにせよこれで40階を突破したから転送用魔法陣が出てくるはずなんだが、どんな感じなのかまだ見たことがないから分からないんだよな。
「イリアって転送用魔法陣見たことあるか?」
「…ない。」
「だよな、とりあえず部屋から出てみようか。」
ボス部屋から出て階段を降りるとこれまでの階にはなかった小部屋が階段近くに存在した。
中に入ってみるとダンジョン内にある休憩スペースの部屋と同じような作りだが、この部屋の真ん中には直径2メートルほどの魔法陣が2つ描かれていた。
魔法陣の中に立ち魔力を流し込むと頭の中にこれまで行ったことのある階層が浮かび上がった、恐らくどこかの階層を選択すればそこに転送されるのだろう。
イリアも魔法陣に入ってもらい階層を選択する、選んだのは一階だ。
階層を選ぶと魔法陣が光りそしておさまった、周りを見渡すが先ほどの部屋から何か変わったようには見えない。
失敗かと思って部屋から出てみれば部屋のすぐ外は階段ではなくダンジョンの入口だった。どうやら転送は成功していたが分かりにくかっただけのようだ。
「帰ろうか。」
「…うん。」
今回のダンジョンでの目標は転送用魔法陣の解放だったので目標は達成されている、よってまだ昼前だが宿に戻ってゆっくりしよう。
次の目標はここのダンジョンマスターだな。
読んでくれてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。