14.認めたくないけどすごく美味しい
すみません、結局弘樹達の視点からは入れられませんでした。
おかしなところがあれば指摘よろしくお願いします。
11階を進んでいるとこれまでには出会っていない魔物と出会った、大型ネズミだ。
大型ネズミと聞けばみんな大体40〜50センチくらいをイメージすると思うが、こいつはそれよりも大きく大体120センチほどだ。
大きさの割に強さはそれほどでも無かったのでサクッと倒せた、そして肉だ、食えると思った、柔らかそうだしうまいと思った。
クソみたいな味だった、ドブだよあんなもん、巨大ドブネズミだ。
とまぁそんな感じで意気消沈している俺とイリアは12階に降りるための階段目指している。
「…トオル、もう帰ろう。」
「もう少し行こう、まだ見ぬ肉が待っているかもしれんぞ。」
「う〜、分かった…。」
すまんイリア、ここで帰ると何かに負けた気になってしまうんだ。
階段まであともう少しというところで、3匹の魔物と遭遇した。
これまでにあったことのない魔物、その大きな巨体にのるその醜悪な顔はまるで豚のよう、そうオークだ。
「イリアはみといてくれ、俺がやる。」
もうそろそろ折れるんじゃねえかってくらいにボロボロになったおなじみの盗賊の剣を抜いてオークに向かい軽く走る。
オークまであと数メートルというところで一気に加速してオークの横まで移動しジャンプしながら首をはね、空歩と縮地の合わせ技でもう一匹の真上に移動しそのまま回転斬りをかまして顔を縦半分に切り裂き、最後の一匹は盗賊の剣を顔面に投げつけ顔面に突き刺す、これでフィニッシュ。
加速を始めてから最後のオークの顔に剣が刺さるまで3秒もかかっていない、オークは反応すら出来ていないのだ。
投げつけた盗賊の剣は先端が潰れているし、刃も欠けているのでポイしておいた、ダンジョンではほっておけばなんでも吸収されるので決してポイ捨てではない、リサイクルだ。
オークからのドロップ品はなんとオーク肉が3つにオークの骨だ。
ちなみにオークの骨はいわば棍棒のような武器であって豚骨のようにダシは取れないと思われる。
「イリア、これが俺たちの目指したものだ。」
少しだけカッコつけながらイリアに言った。
「…トオル、流石。」
「お、おう。」
可愛い微笑みとその言葉にまたイリアに引き込まれてしまう、まじ可愛い。
ドロップしたオーク肉を持ってきていた松明ようなものに魔法で火をつけ炙っていく。
脂がぼたぼたと地面に落ち、食欲をそそる香りがしてくる。
そろそろかというところでイリアに渡す、大きさにしてバスケットボール2個分、俺は1個分ほとだ。
ドロップしたオーク肉は一塊大体バスケットボール3個分ほど、つまり今俺らが食べようとしている量だ。
一塊の大きさがだいぶ大きいのでこれまでの猪肉の代わりになってくれるだろう。
とりあえず肉をかじる…かじる…チラッとイリアを見てみればフリーズしておられる。
その気持ちもわかる、わかるぞイリア、かじれば溢れ出る肉汁に程よい歯ごたえ、上質な猪肉を食べた時も感動したがそれ以上の美味しさ、なんだろうもうA5ランクの肉とかレベルじゃねえかと思ってしまう、食べたことないけど。
あんな醜悪な顔してる癖に…美味しいなんて、認めたくない…。
「ねえトオル…これ美味しい。」
「あぁ、やばいな。これはうますぎる。」
これまでうまい魔物には猪肉とこいつくらいしか出会ってないが、もっといるに決まっている。
ひとつダンジョン潜る目的が増えた。
そのあとも何階か下に潜っていきオーク肉をリュックいっぱいになるまで狩ってから地上に戻った、時刻は大体6時くらいだろうか。
今日の到達階層は18階、ちなみにこの世界のダンジョンには転送用魔法陣があるところとないところがあるらしいがどちらにしても40階を越えなければ出現しないらしい。
前回のダンジョンは無かったので地上に戻るまでの時間がやたらとかかって、日をまたいだこともあった。
魔王のダンジョンだからここのダンジョンは魔法陣があるだろう、今は34階くらいまで攻略されているからもう少しだ。
宿に帰りおばちゃんに預けていた部屋の鍵をもらい部屋に戻る、部屋に帰るとリュックからオーク肉を取り出して部屋の隅に並べる。
オーク肉は魔法を使い氷で冷凍してある、見た目は、中に何かある大きな紅黒い透明な長方形のオブジェだ。
紅黒いのは当然、紅黒魔法で凍らせたからである。
今日のドロップ品はゴブリンの牙や棍棒、コウモリの羽などだったので、あまり金にならないもの(まあ新人冒険者なら十分だろうが)なので、オーク肉がドロップした時に捨てて代わりにオーク肉を持てるだけ持って帰ってきた、つまり今日の稼ぎはゼロだ。
荷物を整理し終わると濡れたタオルで体を拭く、俺の背中はイリアに拭いてもらった、イリアの背中は…まぁ、そういうことだ。
体を拭き終わると一階の食堂におり夕食を食べる、オーク肉も美味しかったが、やはり調理されたものも良いものだ。
部屋に戻るとイリアにひとつ質問をした。
「イリアって魔法どんなのが使えるんだ?」
「…私魔法使えない。」
「え?魔力操作とか覚えてるけど。」
「…爪とかに魔力まとわせるのに使う。」
「なるほど、そういうことか。」
つまりイリアが魔力操作のスキルがあったのは魔力を爪にまとわせて攻撃力を上げるのに使用していただけで、魔法は使っていなかったということか、いわば身体能力強化みたいなものだな。
「ならイリア魔法覚えてみないか?」
「…やってみる。」
俺がイリアに覚えさせたいのは生活魔法だ、ちなみにこの世界では魔法書なんてものはあまりない、なぜならここではイメージで魔法は発動されると深く考えられているし、事実そうだからだ。
イメージするのが困難な人のために手助け用としてある程度で、ほとんどは師匠から弟子への教えや、個人の編み出したもので数えられないほどの魔法が存在する、らしい。
本当は俺ができればよかったんだが、紅黒魔法攻撃特化したものなのか全く役に立たなかった。
生活魔法は水属性が必要不可欠のようだが、イリアは水属性あるので大丈夫だろう。
とりあえず今日から寝る前にじっくりと教えていこう。
昨日の魔法の練習はまずまずといったところだ、いずれ良くなるだろう。
今日からはダンジョン内で野宿をしてでも40階を目指す。
現在は19階を越えたところを走っている、ここまでは時間はあまりかかっていないし、ここからもかけるつもりはあまりない。
大体時速100キロほどの速さで俺とイリアはダンジョンを駆け抜けている、他の冒険者はにぶつからないように気をつけなければならないので少し大変だ。
そうこうしている間にもう20階への階段だ、10階と同じようにボスが出るのだが次の階のボスは超巨大ネズミだ、正式名は覚えてないが体長が約3メートルほどで、爪と前歯と長い尻尾が危険らしい。
10階同様に大きな扉を開けて中に入れば奥に大きな何かが見える、まぁ何かってネズミだけど。
部屋の大きさは前回と同じくらいだ。
ボスの取り巻きが7匹ほどいる、結構多いな、こいつらは途中であった巨大ネズミだろう、あのクソみたいな味のやつだ。
「イリア、いけるか?」
「大丈夫。」
そういうとイリアは飛び出して行き取り巻きの一体の顔を蹴り上げた、蹴られた瞬間に顔は潰れてそのまま体とは分離した。
残った体は首もとから血を垂らしながら地面に倒れる。
イリアには負けていられないと俺も飛び出すが、その間にもイリアは取り巻きの顔を蹴り飛ばし殺していく。
取り巻きを狙うつもりだったがそれはイリアに任せて俺はボスを狙う、盗賊の剣はもうないので久しぶりに朧紅月を使う。
右手に出した朧紅月で超巨大ネズミに斬りかかる、すると超巨大ネズミは自分の長い尻尾を前に出して防御をしてきた、その尻尾はまるで鉄のように頑丈で並大抵の武器では斬ることは難しい。
しかし朧紅月はその硬さにビクともせずに尻尾を跳ね飛ばす、まさか斬られるとは思っていなかったようで驚いている。
やつが驚きから戻らないうちに刀を4回ほど振る、イリアは終わったようでこちらを見ているので俺もそちらに向かう。
イリアのところに戻り超巨大ネズミを見れば、体が少しずつずれ、やがて崩れた。
「…おつかれ。」
「イリアも、まぁ、苦戦も何もしてないけど。」
イリアとネズミのドロップ品を拾っていく、ボスのドロップ品は大きな前歯だった。
ボスを倒すと、ボス部屋は安全地帯となる、他の階にも安全地帯のような部屋は幾つか存在するが、ボス部屋は他の冒険者すらはいってこれないので、もっとも安心できる。
大体昼ぐらいなので前回同様オーク肉を焼いてイリアと食べる、ここに来るまでもオークは何匹もいたのでオークだけは殺しドロップ品の肉の回収を行っている。
「イリア、とりあえず今日は30階を目指して頑張ろうか、ボスを倒せばそのままそこで野宿でもいいしな。」
「…分かった。」
イリアの許可も出たところでまた下の階へと足を進めていく。
明日までには40階行きたいな。
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場所は変わりとある街の路地裏にて2人の若い女性が柄の悪い数人の冒険者に絡まれていた。
「なぁ、あんたらまだ冒険者なったばかりだろう、それに女だ。俺たちが色々教えてやるからよう、パーティー組もうぜ、パーティー。ケヒヒッ」
「私たちはここにとどまり冒険者をするつもりはないと言っている、パーティーなど組むつもりなどない。」
2人のうち気の強そうな女性がそういいもう1人の女性の手を引き男どもから離れようとする。
「おっと、まてよ嬢ちゃん。」
「いたっ」
冒険者の1人が後ろについて行く女性の腕を掴み引き止めた。
「何をしている、その手を離さんか。」
「もうこいつら頑固ですし、やっちまいません?」
「そうだな、やっちまうか。」
冒険者たちはそういうと女性たちに手を出そうとした、そう出そうとしただけで終わってしまった。
冒険者たちが動き出そうとした時には気の強そうな女性が手を出そうとした者の首を鞘に入ったままの刀で強く叩き気絶させたからだ。
「てめぇ、何しやがる。ふざけガッ。」
当然のように怒りだす奴らも即座に無力化した彼女は、もう1人の女性と街の外へと向かっていった。
彼女達が何かの魔道具を見ながら向かう先は、とある吸血鬼と銀狼のいる街なのは偶然なのだろうか。
読んでくれてありがとうございます。
最後に出てきた2人は誰かはいずれわかります、と言っても口調でわかるかもしれませんが。
話の流れにおかしなところがあれば指摘お願いします。