表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/51

珠、兄の成人を祝う

今日はお祝いごとなのです!

藤王丸(ふじおうまる)こと藤兄(ふじにぃ)の元服の儀なのです!

儀式には参加できませんが、お屋敷で宴会をやるのですよ。北条一族と重臣たちが一堂に会します。

春姉(はるねぇ)鈴姉(すずねぇ)からも、祝いの品が届いていて、早く中身が見たくて仕方ありません。

ついでに、私も五歳になりました!


元服の儀は、お城の近くにある神社で執り行われます。

松田大明神という神社では、日本武尊(やまとたけるのみこと)素戔嗚尊(すさのおのみこと)を祀っており、武家からの信仰を集めています。また、穀物の女神も祀ってあることから、農民たちにも人気があるそうです。


午後になり、元服の儀に出ていた人たちが帰ってきました。

二の丸の広間で、お披露目式みたいなものをやります。


上座にはいつも通り、父上と政兄が座り、同列に藤兄が座っています。

あとは、官位や歳などで席順が決まっているようです。

女性陣は隅っこですよー。

なんだか悲しいですね。兄たちが遠いです。


「この度、無事に元服を終え、氏忠(うじただ)の名を授かりました。若輩者ではありますが、皆様のご指導、よろしくお願いいたしまする」


烏帽子を被った藤兄改め、忠兄が頭を下げます。

まだ幼さが残るものの、狩衣姿がよく似合っています。

父上や政兄の狩衣姿は何度か見たことありますが、男性陣全てが狩衣姿だと迫力があります。

やっぱり、政兄の格好よさは際立っていますね。

もちろん、照兄と邦兄も格好いいですよ!


忠兄の狩衣は緑のグラデーションと派手目です。紋も入っているようですが、何かはわかりません。袴は紺色っぽい気がします。

そして、やはり一番の違いは髪型でしょうか。

以前は前髪があったのに、髪を全て上げています。烏帽子の中は丁髷(ちょんまげ)ですかね?

そういえば、月代(さかやき)は誰もしていませんね。ちょっと楽しみにしていたのに残念です。


「氏忠の元服の儀を執り行えたこと、嬉しく思う。今日は無礼講じゃ!皆、飲み明かそうぞ!」


「「「おぉぉーーー!!!」」」


いきなりテンションマックスですか。

びっくりしますよ!

私も加わりたいところですが、隣の母上が怖い顔をしております。

大人しくしておけってことですね。

仕方ないので、姉たちと大人しくご飯食べています。


上座近くの顔ぶれを見ると、じぃに照兄、邦兄、綱成(つなしげ)叔父上とその嫡男らしき人。じぃのところの嫡男と次男、あと子供。

血の繋がりはあるのに、名前を知らない人がいっぱいいますね。初めて見る顔がほとんどな気がします。


私はいつまで大人しくしていればいいのでしょうか?

お腹いっぱいになったら、眠くなってしまうのです。お膳に顔を突っ込む前に、誰か救出してください。


周りの騒ぎなど何のその。睡魔には勝てないのです。うつらうつらと船を漕ぎ出した私を、葉姉が抱えて広間を出てくれました。

本格的に寝ていいってことですね。では、遠慮なく。



目を覚ますと、お屋敷の母上の部屋でした。

母上も戻ってきていて、(ふみ)を書いています。


「ははうえ、ただにぃは?」


「起きたのですね。氏忠はまだ戻ってきませんよ。会えるのは…明日の昼すぎかしら?」


あれま。お外はもう真っ暗ですよ?

まだ飲んでいるのですか?

大人のお付き合いも大変そうです。


結局、忠兄に会えたたのは、夕方に近い時間でした。

二日酔いなのか、ふらふらしています。

二日酔いにはしじみの味噌汁がいいのですが、しじみってここら辺にあるかしら?

とりあえず、しんちゃんにお願いして、何でもいいので味噌汁を持ってきてもらうことにします。

しんちゃんはすぐに戻ってきたので、きっと台所では大量発生した二日酔いたちのために、あらかじめ用意していたのでしょう。しじみではなくあさりでしたが。


頭痛に(さいな)まれている忠兄を引っ張り、春姉と鈴姉からの贈り物を開けさせました。


春姉からは、細工が見事な軍配(ぐんばい)でした。蝶々に似た形の扇で、中心に我が北条の家紋である三つ鱗が入り、朱色の地に金の細工が映えます。()の先には緑色の紐があり、翡翠が繋がれています。

これ、実用性あるのですかね?


「きれいです!」


芸術品としては、凄いものだと思います。


「これを使う日が来るのもな…」


確かにそうですね。

軍配を使うということは、一軍の大将として戦場に立つということですから。機会がない方がいいのです。


鈴姉からは狩衣一式でした。

いくつか仕立ててあるとはいえ、これから使う場面も多々あるでしょうから、いくつあってもいいのです。

それに、この狩衣はもう少し大人になったら着てほしいのだと思います。

焦げ茶色に同色で渦巻きの地紋があり、紋は白の藤でしょうか?裏地は萌黄色で、若者向けとは思えません。

鈴姉は落ち着いた、渋い趣味の持ち主だったのですね。


「…似合うと思うか?」


「うーん、まさにぃくらいのとしになれば、ぴったりだとおもう!」


「そうか?」


忠兄は納得できないようですが、鈴姉からの贈り物なのです。ちゃんと着てくださいね!


補足:氏康は酒は朝に飲めと言っているので、本来は、武士として酔い潰れるような飲み方は許さなかったと思われます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ