珠、水鉄砲で遊ぶ
石けん作りは中断して、竹の水鉄砲をと思ったのですが、その前にところてん突きがどうなったのでしょうか?
よっしー、教えてください。
「鍛冶師に尋ねたところ、細長い刃を格子状にするのであればできるということでした。今、試しに作ってもらっています」
さすが、よっしーですね!
行動が早いのです!
ところてん突きの方は、簡単なので問題なく作れるでしょう。
これもよっしーに丸投げになってしまいますが、まぁ大丈夫でしょう。
次は、竹の水鉄砲ですが、竹は届いたのでしょうか?
「はい。ご用意しておりますよ。竹の他には何が必要ですか?」
「ながいぼうと、ぬのです」
そう言ったのに、出てきたものは、一回り細い竹と布、あと謎の道具でした。
「これは?」
「この竹を育てていた者が、竹の加工には必要だと言うので、借りてきました」
竹を育てている人?
竹細工の職人さんとかですか?
よっしーの人脈って、本当に謎ですね。
「竹の内側には、薄い膜のようなものがあり、それを取り除かないといけないとのことで」
初めて聞きました!
竹って、器とかにも使われているので、そのままでいいのだと思っていました。
「これが、竹筒の加工に使うときの道具です」
細長い棒に、鈎のようなものを括りつけてあるものと、同じ細長い棒に布を巻きつけてあるものの二つです。
さらに、問題の膜の取り方を、ちゃんと教えてもらってきたそうです。
よっしー、本当に凄いです!
痒いところに手がとどくとは、このことですね!
では早速、竹を吟味して、切る部分を指定します。
節を残した方が細くなる一節を切ってもらい、錐で穴を開けます。
穴も綺麗な丸になるように、注意します。
押し込む用の棒は、先ほどの細めの竹を使います。
水鉄砲の本体より長く切りまして、先の部分にさらしをぐるぐる巻きします。
大きさも、竹の口の部分より少し大きいくらいにしておきます。
実際に口の部分に当てて、大きさを確認してみました。
うーん、ちょっと小さいですかね?
大きさを調節し、最後にさらしが動かないようにするために、布をかぶせ、ぎゅーっと紐で結びます。
いざ、水を吸い上げてみましょう!
「うぅぅぅ…」
か、固いです…。
頑張って吸い上げてみましたが、これだけで一苦労ですよ。
では、水を押し出してみましょう!
「ふぬぬぬぬぅぅ!」
余りにも固くて、水は漏れるし、穴からはちょろろろろっと勢いがない状態で出てしまいました。
「末姫様、やってみてもよいですか?」
なおぴーの目がキラキラ輝いています。
やりたくてしょうがないのでしょうか。
「いいですよー」
なおぴーに水鉄砲を渡すと、大人な男性だけあって、すんなりと水を吸い上げ、勢いよく発射しました。
それでも、水の飛距離は余り伸びてないように感じます。
「この固さだと、女子や童衆には無理かもしれないですよ」
ですよねー。
私も腕がプルプルしていましたから。
「この布に油紙を巻いてはいかがです?」
そう、なおぴーが提案してきました。
油紙ですか?
あの、傘とかに使う油紙ですか?
まぁ、ものは試しなのです。
ゆっきーが油紙を用意してくれるというので、その間に水鉄砲の方を少し改良したいと思います。
吸い上げるのも、押し出すのも固いとなると、穴が小さいのでしょうか?
小さい方が、細く勢いよく飛びそうなんですけど。
うーん、少しだけ穴を大きくしてみますか。
ひさっちにお願いして、穴を大きくしてもらいました。
しばらくすると、ゆっきーも油紙を持ってきたので、水鉄砲作りを再開です!
棒の先に、油紙を巻きつけてから、紐で縛り直しました。
では、試してみましょう!
「う?」
先ほどとは違い、スッと水を吸い上げていくではないですか!
さぁ、準備は整いましたよ!
発射っ!!
水を押し出すのには、やはり力が必要でしたが、水は綺麗な弧を描いて、なかなかの飛距離を見せました。
「おぉ!」
これは、もう水鉄砲でしょ!
もう一度水を吸い上げて、同じように発射します。
前回よりも力を込めると、少しだけですが飛距離が伸びました!
「いっぱいつくって、みんなもあそぶのです!」
ここにいる人数分の水鉄砲を作り、本丸広場に木の板を立てます。
桶には水をいっぱい入れて、補給用にします。
ゆっきーとなおぴー。ひさっちとこた。私とよっしーという組み合わせです。
審判はしんちゃんがやってくれます。
遊び方は簡単です。
水鉄砲を受け、濡れてしまったら負け。
どの組み合わせが生き残れるか、いざ、勝負!
「末姫様、作戦はございますか?」
「ありません!」
「…では、私が囮となり、敵を引きつけますので、隙を見て攻撃してください」
簡単そうに言いますが、お子様には難しくないですかね?
「がんばります!」
まぁ、遊びなので、楽しくやりましょう!
でも、負けるのは嫌いなので、全力でいきますよ!
「始め!」
しんちゃんの合図で、戦いが始まった。
よっしーは器用に、板に身を隠しながら、ゆっきーに近づいていきました。
私は、最初の板からは出ず、他の者たちの動きを把握することにします。
こたは板に隠れることもせず、素早い動きでなおぴーに接近します。
なおぴーが水鉄砲で攻撃をしますが、ひょいっとかわして、横から水鉄砲を発射。
「尚道殿、退場!」
早いです。まだ一分も経っていないんじゃないでしょうか?
最大の敵はこたですね!
味方がやられた瞬間に、隙を見せてしまったのか、よっしーの攻撃がゆっきーに当たりました。
「定之殿、退場!」
しんちゃんの声が響く中、ひさっちが動きました。
「よっしー、ひだり!!」
ひさっちが水鉄砲を発射するも、よっしーは間一髪のところで射程距離から離脱しました。
双方、急いで補水し、次に備えます。
あ…。やってしまいました!
ひさっちに集中しすぎで、こたを見失いました!
…ここは危険ですね。移動しましょう。
一番近くの板に移動します。
それに気づいたよっしーが、こちらに移動し始めました。
それに合わせて、ひさっちも動きます。
よっしーは牽制のためか、二度攻撃しましたが、当たる距離ではありませんでした。
「姫様、もらった!」
「うわっぷ…」
顔に水がかかりましたよ…。
こため、顔面を狙ってきましたね!
「珠姫様、退場です」
うぐぐ…悔しいです!
こたが得意げな顔していますが、後ろによっしーがいますよ!
こたはよっしーに攻撃され、退場になりました。
ざまぁみろです!
「小十郎様も退場です」
ということは、よっしーとひさっちの一騎打ちですね!
「くそっ。冷てぇ…」
びしょ濡れになったこたですが、私もびしょ濡れなのでおあいこですよ。
よっしーとひさっちは、お互いに距離を測りながら、攻撃できる瞬間を探っているようですね。
なんだか、真剣勝負の緊迫した空気が漂っているのはなぜですか?
よっしー、ひさっち、これは遊びですよ!
戦ではありませんよ!
ジリジリと迫りつつ、ついにひさっちが動きます。
よっしーはでんぐり返りをして、ひさっちの足元に行き、下から攻撃をするという、衝撃的な結末が起こりました。
「あいつ、意外とやるな」
こた、年上は敬いましょうね。
あなた、まだ元服前のお子様ですよ。
「さすが、安藤殿」
なぜかしんちゃんも感服しているみたいですが、よっしーってそんなに強いのですか?
よっしーの謎が深まるばかりです。
このあと、屋敷に帰った珠が、怒られたのは言うまでもない…。
補足
よっしー:安藤良道
ゆっきー:山角定之
ひさっち:大道寺重久
なおぴー:安藤尚道