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第マイナス1話!ででーん!主人公アウト!



俺は田崎伸也

都立明星高校に通う高校2年生だ。



スポーツも勉強はそこそこ

友達も少ないわけでも多いわけでもない普通の高校生だ。


ただひとつだけ違うことがある。



それは、



俺は前世の記憶を持っていることだ。



物心ついたとき

頭の中に色々な記憶が甦り

はじめは驚いた。


自分が見知らぬ家の子供になっていて、

この世界が自分がいた世界と大きく違っていたからだ。



このチキュウという世界には

魔物や魔法など存在しないらしい。


この世界の昔の人は剣を使っていたそうだが、今では剣は廃れているそうだ。

前の世界の時とは大違いだ。

以前なら町ゆく剣士や魔法使いに溢れ、町を出れば危険な魔物に襲われることが日常茶飯事だった。


いわば俺のいた世界は、こっちの言葉を使うとファンタジーの世界だった。


だが、この世界はそういうものが一切ない。俺らが望んでいた平和な世界そのものだった。



最初は戸惑ったが、俺は現実を受け止めた。



俺は転生したんだと



転生してから17年

俺はこの世界にすっかり馴染んでいた。


気のあう友達と馬鹿話をしたり

勉強したり、スポーツをしたり

充実した日々を送っていた。





「あーあ、彼女欲しいなー」


クラスメイトの吉崎が俺の机の前の席に座りながらボヤいた。


「またそれかよ。」

「だって俺らもう17だぜ?このままだと一生彼女できねえのかと思うと不安になるじゃん」

「そんなに彼女作りたければクラスメイトの女子にでも告白して付き合って貰えよ」

「簡単に言うなよ。俺にそんな度胸はねえ。豆腐メンタルなんだぞ」


この年代によくある思春期だ。


「あー彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい!」

「そのうちいい人見つかるだろ」

「そのうちっていつだよ。気づいたら30になるまで童貞貫いて魔法使いになるんだぞ」


以前の俺なら魔法使いのワードにピクッと反応していただろう。しかしそれは中学二年の頃の話だ。

この世界には魔法なんて非科学的なものは存在しない。

あくまでも迷信である。

30まで童貞や処女のままだと魔法使いになれるわけがない。


俺はこの世界に完璧に順応していた。


「大体、シンはそういうの興味ねえの?シンからそういう恋ばなとか一度も聞いたことないや。誰か気になる娘とかいねえの?」


シンとは俺のアダ名だ。

田崎伸也だからシン

奇しくも前世の呼び名が、この世界でもそう呼ばれていた。

吉崎の質問に俺はある人を思い返して答えた。


「いるよ」

「いんの!やっぱり小野か!」

「ちげえよ、なんでそこでユズが出てくんだよ」

「呼んだ?」


俺達が会話していると、

噂をしていた小野柚葉がとことこやってきた。


「シン君どうしたの?」

「いや、なんでもない。こっちの話」

「ふーん、あ、そうだ。今日シン君のおじさんとおばさんいないから御飯作りにいくね」

「ああ、わかった。ユズいつも悪いな」

「別にいいよん♪」


そう言うとユズは友達のところに戻りキャッキャッと楽しそうに話していた。


「死ね」

「なんだよいきなり」

「小野めちゃくちゃ可愛いじゃん。それが幼馴染みってだけで普通飯作りにわざわざ来てくれるか!?」

「別にユズにはそういう感情はないぞ」


確かにユズは可愛い女の子なのは認めている。

色んな奴がユズのことを狙ってるみたいだしな。

だが、俺はユズにそういった恋愛感情はない。

ユズの家はお隣さんで小さい頃から家族ぐるみで付き合いがある。

だからユズは異性というより妹みたいな感じか、俺とユズは兄妹のようなものだ。


「朴念仁いっぺん死ね」


と吉崎に言われた。






ー放課後


俺とユズは一緒に下校していた。

家が隣同士というのもあり、学校に行くのも帰るのも同じ方向だから必然的にそうなる。


「シン君今日何が食べたい?」

「ユズが作る物ならなんでもいいよ」

「もうそれが一番困るんだから」


ぶーたれてるユズ

俺はユズが困っている顔を見るのが好きだ。だからわざと意地悪なことをしてしまう。


「じゃあハンバーグで」

「うんわかった♪着替えたらシン君の家にいくね」


自宅に到着してからユズと一旦別れて家に入る。

俺はそのままいつものように制服のネクタイを緩めながら二階に上がり、自分の部屋についてからワイシャツを脱ぐ。


そのままベッドに横になってくつろぎながら、俺は吉崎との会話を思い返していた。


「好きな人か......お前は今頃どこにいるんだろうな。お前に会いたいよ......チコ」


俺が転生しているんだから、

きっと彼女もこの世界に転生しているはずだ。


俺は前世で離ればなれになったチコのことを想い続けていた。


その頃、家の付近で怪しい人影が

俺の部屋のある窓を見続けていたことは、その時は知るよしもなかった。


「見つけたでぇ...」


怪しい人影はそう呟いていた。




****************



ピンポーン!



着替え終わると丁度呼び鈴がなった。

俺は不思議に思っていた。


ユズか?

あいつうちの合鍵持ってるだろ

なんでインターホン押してんだ?



ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!



連続で呼び鈴がなった。

なんだよあいつ、ひょっとしてうちの鍵無くしたのか?仕方ない。


俺は玄関まで行きユズだと思いドアを開けた。


「おい、ユズ」


しかし玄関を開けると、そこにいたのはユズではなく、

紫色のパンチパーマをかけた40歳くらいのおばちゃんが立っていた。


「あ、あれ...」

「どうもー」

「あ、どうも...」

「ヤクルトどうでっか?」


どうやらヤクルトを売りにきたセールスの人のようだ。


「すみません、今親がいないんですよ」

「あらそう?じゃあ兄ちゃんでも構わへんで。どうでっしゃろヤクルトいりまへんか?」

「いや、親がいないんで...」

「そんないけずなこと言わんで買ってってくれえーや兄ちゃん」

「いや、だから親がいないんで!」

「まぁええわ。ほら兄ちゃんヤクルト一本サービスしとくさかいな!」

「あ、どうも...ありがとうございます」


オバサンにヤクルトを渡される俺


「飲んでみてえな」

「え、ああ...はい」


オバサンに促されついヤクルトを飲んでみた。



うん、ヤクルトだ。



「ウマイやろ?じゃあ、ちょっと邪魔するでえ!」

「え、ええ!?」


ヤクルトを飲んでる隙をつかれて半ば強引におばちゃんは家にあがりこんできた。俺は慌てた。


「な、ちょっ!いきなり...」

「兄ちゃんの部屋二階か?まあ大抵子供部屋って二階やろうな」


オバサンは勝手に階段を登り俺の部屋に向かった。


「あ、あなたなんなんですか!?出てってください!」

「まあええやないの、減るもんやあるまいし」


なんだこのババアは

図々しいにも程があるだろ


俺の制止も聞かず勝手に俺の部屋のドアを開け中に入ってきた。


「なんやえらく綺麗やないの?つまらへんな」

「あんたは俺の部屋に何を期待してるんだ!」

「まぁ大抵ベッドの下にエロ本隠しとるんやろうけどな」

「ああーー!?」


いきなり来てベッドの下を勝手に漁り始めるオバサン


「おお出てきた出てきた。なんやみんな若い子ばっかやないの。熟女ものが一冊もあらへんやないか!」

「そんなのないですよ!というかなんなんですかあなたは!警察呼びますよ!」


部屋を物色するオバサンを止めようとして腕を掴んだ。


「うお!?」

「あん♡」


そのとき体勢を崩してしまい俺はオバサンとベッドに倒れこんでしまった。


痛つつ...

ん?なんだこの唇に濡れた感触は...


目の前にオバサンの顔が間近にある。




ま...さか...




そ、そんな......





そんなまさか!!!








ぶちゅうううつううううう





倒れた時にオバサンと俺は...







キスをしていた。







うわああああああああああ!!!








しかも事故で俺の右手はオバサンの胸を掴んだ形になっている。


「ン♡」


オバサンは目を閉じて頬を染めてオェェェェ!

頬を染めるな気色悪い!


俺はすぐ離れようとした、

その時このババアは俺の頭をガッシリ掴み離そうとしなかった。

そして、そして!舌を...舌を!

俺の口の中に無理矢理ねじ込んできたのだ!!!


「んんんんんんんん!!!(泣)」


口の中が犯される。

しかもなんか臭い!

メッチャ臭い!

ネバネバしてる、納豆でも食ってきたのかよ!


「シンくーん夕飯作りにきたよ......え?」


開けっ放しのドアのほうにはユズがいた。

タイミングが悪いことに夕飯を作りに来たのだろう。


ユズはこの光景に固まっていた。


だって端から見たら俺が上に乗ってオバサンをベッドに押し倒しディープキスをしてる風にしか見えないもん!


「あの...その......ごめんなさい!」


ユズはダッシュでその場から逃げた。


「んんんんんんんん(誤解だユズ!ユズーーー!!!)」


立ち去るユズを目で追いながらも俺は涙目になって叫びたかった。

しかし、ババアのディープキスから逃れられない!


しばらく俺はオバサンに口の中を蹂躙され続けられた。


チュポン!


離れると、

俺の唇とババアの唇から粘液の糸をひいていた。


「ふう...」


ようやくおばちゃんの地獄のキスから解放されたときには、俺のライフは0だった。


「もう、シンちゃんったらダ・イ・タ・ンなんだから♡」

「ふざけんなよクソババア!(泣)」


俺は全力で自分の唇を袖でぬぐった。



オェェェ!

まだ口の中が気持ち悪い。



「もうせっかちさんねぇ、久し振りやからって盛ったらあかんでぇ。女の子にはもっとムードを出してかんと」

「ムードなんかあるかクソッタレ!もう女の子って歳じゃねえだろババア!」


俺は涙ながら訴えた。

すると、ババアはとんでもない行動にでた。


「何故上着を脱ぐ?何故今スカートを脱いだ!?」

「続きしたいんやろ?」

「ヤメロォォォォ!!!」


服を脱ぎ出すババア

なんだ続きって!?

あのトラウマを更に超えることをするつもりか!

俺のライフはもう0なんだよ!


服を脱ごうとするババアを俺は必死に止めて、その続きを全力で阻止する。


「緊張してるんかい?」


なんなんだこのババアは、

なぜこんなに積極的なんだ。

やはりババアだからか?

殺してえ...


だが、そんな中で俺はふと気になることがあった。



このババア、なんで俺の名前を知っているんだ?


「あんた、なんで俺の名前を知っている?」


初対面のはずなのに、こいつは俺のことをシンちゃんと言った。

まさか...す...ストーカーなのか、

怖い、怖すぎる!


「なんでって当たり前やろ?なんたってうちらは将来を誓いあった仲やないの」

「そんな誓いを立てた覚えはない!」


こんなババアと将来を誓いあうか!

もし、俺がそんなことしたらトチ狂ってるとしかいいようがない!


「そんな!?ヒドイ!うちのことは遊びだったのシンちゃん!?」


そう言ってハンカチを取りだしシクシクと嘘泣きを始めた。うぜぇ...


「はぐらかすな!だからなんで俺の名前を知っているだよ!」

「はっ?だってあんたシン=アルセイドやろ?」


俺はその名前を聞いて固まった。






な、なんでその名前を...





シン=アルセイド

これは前世のときの俺の本名だ。

この世界でその名前を知っているのは誰もいない。むしろその名前を久し振りに聞いた。







まさかこいつも転生者なのか...





そして俺のことを知っている




もしや!?




「お前は...魔導士パリアッチなのか」

「誰があのオカマだい!!!」

「え、違うの!だってあのオカマしか考えられないぞ!」


あのオカマすっごく気持ち悪かったし

雰囲気的にそうなのかと思った。


「あほんだら!そんなわけあるかボケぇが!うちや!うちや!」


うちやうちや!って言ってもわかるかボケェ!

パリアッチが転生したわけじゃないのか、気色悪いといったらパリアッチしか思い浮かばなかったし。


「戦士アベノタカオウか?」

「アベちゃうわ!誰がガチホモや!」


戦士アベノミクスでもない。

これでもなければ一体誰だ。

あの世界であと思いつくのはグールかゾンビかオコリザルぐらいしかないぞ


「ひどいわ~おばちゃん泣きそうや」


そう言って再びハンカチを取りだしシクシクと嘘泣きを始めた。

殺してえ...


オバサンは泣きながら叫んだ。


「どんなに醜くなってもいい!俺は君のことを、いつまでも愛している!もし生まれ変わったら、もう一度君と一緒にいたいって言ったくせに!!!」


その言葉にハッときた。

まさか...そんな


その台詞は忘れもしない

俺がある人だけにかけた台詞だ。



一番考えたくない人が脳裏に浮かんだ。


最愛の人...

世界で一番愛している女性...

彼女のためなら死んでも構わないと思えるほど愛しい人...


嘘だと言ってくれ

うちうち詐欺に騙されてるんだ

きっとそうだ!

よぉーし警察に通報だ!


「うちは貴方の愛しのチコ=ヴァレンタインやでぇダーリン♡」


俺は泡を吹いて失神した。




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