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……なんだ?
一体何が起こってるんだ?
「ぐぅ、誰だ……お前?。」
「誰でもいいじゃない
今のアナタにとって大事なのは
この男を殺すことでしょ?……違う?。」
なにを言ってるんだ?
それより一体どこから表れた?
「もう!めんどくさいわね!
ワタシはオリジンでアナタは
ダサいスーツのオリジンに殺されかけてた
だから、気紛れで助けようと思って
ワタシから契約を持ち掛けた!
それにアナタが答えたからアナタを守った!
以上、説明終わり!。」
なんなんだこの女は?
それよりこの女もオリジンってやつなのか
よく分からないがオリジンってのは
特定の人間を指す言葉なのだろうか?
「っぅ!。」
考えようとしたが
体を襲う激痛のせいで
まともな思考回路が働かない。
「まぁ、いいや取り敢えず
そこで見てて
ワタシがコイツ殺しちゃうから。」
目の前の女は楽しそうに
無邪気な笑顔で相手を殺すと言った。
そこに一切の邪心は無く
本当にただ殺したいから殺すと
……そう言い放ったのだ。
俺はこの女に対して何も言えなくなった
「じゃ、殺しちゃうけど
遺言くらい聞いてあげてもいいわよ?。」
女は男に向かって言い放った
しかし、男は笑って言葉を返す。
「戯れるな女、其処の少年が
オリジンを偶々呼び出したに過ぎん
俺は此処に来たときから何ら意思に変化は無い……
其処の少年を殺すついでに運良く
出会えたオリジンを殺す、それだけだ……。」
「へぇ、随分と自信満々なのね
本気でアナタがワタシを殺せると思ってるの?。」
「これ以上の問答に価値は無い、……行くぞッ!!。」
再び男はその体に炎を纏って
此方に炎を飛ばす
「ショボい攻撃ね!
避けるのも、めんどくさくなるわ!。」
女はあろうことかその荒れ狂う炎に
自ら飛び込んでいく
驚くことに女は炎を素手で殴り付ける
炎はその勢いを無くして消え失せる。
「なんとっ!?。」
男は驚きの声を上げる
しかし直ぐに冷静になり次の炎を
女に目掛けて放つ
「そんな遅い攻撃に当たるわけ無いじゃん!。」
女はほぼ目の前で放たれた炎を
人間離れした反射神経で回避し
男の目の前まで移動する
「それっ!。」
男に向かって掌を振りかぶる
「チッ!。」
男はその攻撃を咄嗟に避け
女の腹に蹴りを入れ距離を取る。
「ふーん、やるじゃない。」
女は全く動じた様子は無い
男も女同様に動じた感じは無い
暫く、硬直した空気が漂う
直ぐにでも戦いが起こりそうな緊迫した空気が
部屋の中に満たされていく。
「時間切れか……、悪いな
5分で仕留めきれなければ撤退するように
言われているのでな。」
先に言葉を口にしたのは男だった。
その言葉とともに戦闘の構えを解いた
その姿を見て女も構えを解く。
「つまんない、これでおしまい?。」
女は完全に無防備な体勢をとる。
「ふふっ、この勝負は次の機会に預けておこう
一応、名を聴いておこうか女。」
男は笑いながら質問した。
「礼儀がなってないんじゃない?
名乗ってほしいのなら、まずは自分から
名前を名乗るものでしょ?。」
不愉快そうに女は返事をする。
「これは失礼したな
あまり礼儀作法など学んだことが無いのでね……
俺はヴィル・ゲル・フィルソンという。」
ヴィルはまったく悪びれた様子もなく
名前を名乗った。
「なんか、ムカつくわね
まぁ、いいわ名乗ってあげる。」
女は楽しそうに笑いながら言った。
「ワタシの名前は……。」
名前は……
「ゴメン、わからないわ。」
わからない?……無いのか……ならしょうがないね。
多少不便かも知れないけど。
「あったような気もするし
無かったような気もするし
ま、名前なんて無くてもいいよね!。」
良いのかそれで?
まぁ、本人が良いって言うなら良いんだろう。
「ふふっ、ははははっ、面白い女だ
そうか、無いか……
なら仕方ないな名前が無いなら
名乗りようもあるまい。」
ヴィルは面白いといった感じに笑う。
「なら、名前の無い女よ
この決着はまた別の形で着けることにしよう。」
ヴィルはそのまま
蜃気楼の様に揺らめいて消えた。
そして部屋には俺と名前の無い女の
二人が残されていた。
どうしよう……。
「ねぇ!アナタは名前あるの?。」
女は唐突に此方に質問を投げ掛けてきた。
「名前?あるよ……、勿論。」
寧ろ無い方がおかしいだろ。
「へぇ、あるんだ
ねぇ!何て言うの?。」
女は興味津々といった感じに名前を尋ねてきた。
「別に面白いもんじゃないだろ名前なんて……
俺は山門 武っていうんだ。」
「なんか、変な名前ね。」
名前を聞いて女は、つまらなそうな顔をした。
「そうか、名前なんてそんなものだろう。」
「そうなの?……ま、いっか
ねぇ、それより。」
また楽しそうな顔をしてくる
「…なんだよ?。」
「なんで私を呼んだの?。」
「……なんでだろうな…悪い俺にも分かんない。」
「ふーん、…そっか!
じゃあいいや。」
「いいのかよ!。」
なんで楽しそうなんだ?
「なにか面白いことでもあるのか?。」
「んーん、なーんも面白くないよ!。」
女は満面の笑みでそう答えた。
なんなんだこの女は…。