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山門 武
今日は、いつもより早く午前6時に起床。
早く起きすぎたかな、まぁ
別段困ることなど何も無いのだが
どうせ、独り暮らしなので
誰にも怒られないのだから。
早起きは三文の徳と言うし
寧ろ良いことなのだが
どうせ早く起きてもする事なぞ
何も無いのでしばし、放心する。
暫くして、覚醒しきってなかった
頭もだいぶ、スッキリしてきた。
時間は午前6時半
まだ学校まで時間があるな
そこでふと普段ならやらないことを
やってみようかなという気分になった。
さて……なにをしようか……。
何かすることはないか考えてみる。
そうだな久し振りに、父さんの使ってた
部屋の掃除でもしようかな。
思い立ったが吉日
思い付いたら直ぐに行動に移すかな
「……よっと。」
布団からでて布団を畳み
箒とか端的に言えば掃除に使う物を
持って義父の部屋に入る。
義父というのはそもそも
武が父と呼ぶ人物は本当の
父親では無い両親を早くに無くし
孤児院で生活していた彼を引き取った男が
武の父親、義久だ。
性も義父である義久の山門を名乗っている
自分にとっての親とは
幼くしてして生き別れた産みの親ではなく
自分を養子として引き取ってくれて
共に過ごした義久の方が
家族として大きかっただけの事
なので性は義父のものを名乗っている。
だがその義父も謎の衰弱死で
この世を去ってしまった。
「……凄いことになってるな
蜘蛛の巣と埃だらけじゃないか。」
さっそく掃除に取り掛か……んっ?
掃除をしようとして棚の本を退かすと
そこにあったのは、使い古された
アタッシュケースだった。
こんなものがあったのか
今まで全然気が付かなかった。
中身が気になってしょうがない
……開けよう。
おもむろに中に何が入ってるのか
気になりそのアタッシュケースを開ける……。
中には……なんだこれ?
アタッシュケースを開けると
中には何だか分からない
英語がズラリと並んだ書類が入っていた
マジック?、魔法?
何だかよく分からないが
魔方陣やら何かの図形がその書類には
書き記してあった。
なんていうか随分と
オカルトチックな書類だな……。
義父にこんな趣味があったことは
初めて知ったというか
英語読めるんだな父さん。
って、それより掃除掃除
は早く終わらせて学校に行く準備をしよう。
掃除を済ませて、朝御飯を食べて
学校に行く支度をして
さてと、問題無しそれではいざ、学校に……
「ひどいぃー、私の分の朝御飯を
なんで用意してないのぉ、ていうか
なんで1人で学校に行こうとしてるわけぇ。」
問題発生……。
勝手に家に入ってくるなり
大声で喚き散らす
同じ学校の制服を着た女性
名前は、山門 雅
1つ年上で現在高校3年生
義父の父さんの兄弟の子供
で要するに従姉弟である。
「いや、だって来るの遅いから
てっきり今日は寝坊かなと思って
先に朝食済ませて学校に行こうと。」
「うがー、私が寝坊なんて
するわけないじゃない
なんてったってこの1年毎日欠かさず
武の家に朝御飯を食べに来てるんだもの。」
エッヘンと無い胸を張る雅
自分の家で食べてくれ。
「もぉー、せっかく武が
1人寂しく朝御飯を食べてるん
だろぉなぁと思って来たのに。」
「わかった、わかった
直ぐに作るから急いで食べてくれよな。」
もはや、恒例と化した朝のやり取りに
諦めて家のキッチンにUターンする。
その後、急いで作った
ご飯に味噌汁、納豆のパックを
食卓に並べる。
「えー、これだけとか
雅ちゃんの胃袋は寂しいよー。」
もっと早く家に来てくれれば
もう少し凝った料理も作れるのだが
ていうか、無償で朝御飯を
提供してるのにこれ以上を
求めてくる意味が分からない。
「いいから、とっとと食え太郎。」
そして、雅が朝御飯を食べ終えたので
それを台所に持っていき水に浸けておく
自分の食器くらい片付けて欲しいものだ。
「いやー、食った食った
腹三分ってところかなー。」
物足りないといった感じの雅
これで腹三分とか
どんだけ食うんだよ全く
「それより雅もう学校に行かないと
だいぶ、時間がないぞ。」
「なっ、いつの間にか
こんな時間になってるー
早く学校に行かないとヤバイね。」
誰のせいだとおもってるのか
いや、もういいやどうでも
まったく早起きは三文の徳だと
今のところ何も徳になってないどころか
損してるような気がする。
「ほら、武早くー
学校遅れちゃうよー。」
先に家から出た雅に呼ばれ
やれやれといった感じで玄関に足を運ぶ。
玄関を出るとストレッチをしている
雅の姿が目に写った。
「ほら、行くよ武。」
「朝から元気だなー雅は、……。」
「もう、そんなこと言ってると
老け込んじゃうよ武。」
結局今日は朝から学校までマラソン
をする事になってしまった。