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そして、エリシアは駆けだす。

重たい地下の扉を開け、闇を抜けて、階段をのぼる。

この屋敷のすべてが眠りについているその中で――たった一人、“呼ぶべき名”の元へ。


向かう先は、ライナルト・ヴェルナーの部屋。


扉は閉まっていた。

けれど、今ならためらいなどない。


エリシアは拳を握り――強く、ノックした。


「ライナルト様――!」


沈黙。

一秒、二秒、三秒――


カチャリ


扉の向こうで、静かな音がした。

そして、ゆっくりと扉が開かれる。


そこにいたのは、この屋敷の主であり、かつてエリシアの名を書いた男――。

ライナルト・ヴェルナーだった。


彼は、少し驚いた顔をして、

そして、微かに微笑んだ。


「……君が、ここへ来るとは思っていなかった。

どうしたんだい、こんな時間に」


ライナルトは、ゆっくりとエリシアに向き直る。

薄いグレーの瞳が、いつものように穏やかで、少しだけ困ったように細められていた。


「……どうしたの?そんな顔をして」


少し砕けたライナルトの言葉に、エリシアは口を開きかける。

けれど、胸の中がぐちゃぐちゃで、何から話せばいいのかわからない。

影のこと、名前のこと、焼き印、鏡、封印――全部が重くて、言葉に乗らない。


「私……うまく、説明できないんです。……でも……」


彼の前に立って、拳をぎゅっと握る。


「でも……あなたを、連れていきたい場所があるの。

行かなきゃ、いけない気がするの……あなた自身が、戻らなきゃいけない場所」


沈黙。

ライナルトは驚いたように瞬きをする。

だが、その表情はやがて――

とても静かな、けれど深く優しいものに変わっていった。


彼は、小さく笑った。

それは、どこか諦めにも似た微笑――けれど、拒絶ではなかった。


「君がそこへ私を連れていくというのなら、それは、向き合わなくてはいけないということなのだろうね。」


そう言って、彼は手を差し出した。


「案内してくれるかい?君の見つけた夜の底へ。私自身が、ずっと閉ざしてきた“もう一つの私”のもとへ」

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