ハルカ、なのか!?
王様達が出て行ったあと。疲れているのかそのまま寝てしまった。
朝。空腹で目が覚めた。そういえば今日から何も食べていない。
ぐ〜っとお腹もなっている。
起き上がり窓を開けて外を見た。
綺麗な景色だ。ここは城なんだろ。石造りの洋風な城だ。あまり大きくはないが歴史を感じる。
今いるのは三階くらいかな。
城下には町が広がっていて。主に黄色やクリームいろの外壁に赤い屋根のかわいらしい家が重なり合って街を形成している。
城の前には広場があって、大きな噴水がより一層この国の雰囲気を醸し出している。
もしかしたらこの世界にハルカもきてるのかな?
会いたいなぁ。
以外に近い存在になって転生して、また一緒にいられたらいいんだけどなぁ。
ため息をつきながらそんな事を考えた。
部屋のドアの向こうで何やら声がする。
お嬢様おやめください!
はなして!
おやめください!!
なんだ?ケンカ??
キーーーン!
また頭痛と耳鳴り。
忘れていたこの持病のことを。
外の声が近づく。
お嬢様!!
バン!っとドアが開いた。
僕は目を疑った。
そこには離ればなれになったハルカが立っていた。
いやこの世界の衣装を着たハルカらしい人と言ったほうがよいのか。
でも僕の目にはハルカだった。
「ハルカ」
心細かった。
怖かった。
僕は泣きながらハルカに抱きつこうとした。
ドカっ!バキ!!
え?
顎に激痛。鳩尾にも鈍痛。息ができない。口の中が鉄錆を舐めた様な血の味になる。
苦しい、、。
殴られたとわかるまで、僕はなぜ何故と繰り返していた。
「兄上と騎士団の仇」
「お父様もお母様と騙されてる。私が切って捨ててやる!」
お嬢様おやめください。
昨日部屋にいた褐色のメイドさんが必死にハルカをなだめている。
「ハルカ、なのか?」
声を絞り出す。
「誰と勘違いしている?愚弄する気か?」
帯刀している剣に手をかける。
ヤバい。このハルカみたいな人本気だ。
本気で僕を殺そうとしている。
その時昨日の王妃様がドアを開けて入るなり叫んだ。
「何事です!」
「アリア!何故こんな事を!」
ハルカは不貞腐れている。
「コレで済んだと思うなよ。次はアリアのこの剣で兄上の仇を討たせてもらうからな!」
捨て台詞を残して部屋から出て行った。
いけない!王妃様がそう言って僕に近づき殴られた顎に手をかざし、何やら呪文の様なものを唱えると、優しい光に包まれ、痛みがひいていった。
「回復魔法?」
僕が思わず言うと王妃は笑って勇者様はご存じなのですねと言った。
なるほどやはり異世界を感じさせる。
しかしどう言うことだ?あの子はハルカじゃなくてアリア?兄上って言ってたし、今の感じだとお嬢様ってことはお姫様??
「無礼をお許しください勇者様、娘は兄を慕っていたので、まだ、心の整理ができていないのです。時が経てばきっとわかってくれるはずです。」
さぁ食事を用意しましたのでお召し上がり下さい。
王妃の用意してくれた食事はどれも珍しく、とても美味しかった。
「僕、雨生ソウタロウといいます。」
「色々ありがとうございました。」
「王妃クラウディアです。お名前伺うのが遅くなってしまいましたね。ソウタロウ様よろしくお願いします。」
「食事がすみましたら神殿へ案内いたしますのでぜひお越しください。」
そう言うと王妃は部屋を去って行った。
食後、褐色のメイドさんに連れられて神殿と呼ばれる、透明なガラスの様な素材で作られた広いホールに来た。日差しはガラスを通して明るいが、温度は適温でどこから空を見上げても青空が見える作りになっている。
神殿の奥には祭壇がありそこにはいかにも神父様という感じの人がいた。
その傍らには王様と王妃そして僕を殺そうとしたお嬢様がたっていた。
神父が言った。
これより儀式を始める。
その声は神殿に響き反響していた。