転移・転生?
今日もハルカと通学中。電車からバスに乗り換え学校を目指す。先日の電車内でも接近があったせいでいつも以上に意識してしまう。
季節は初夏、もうこの国に四季なんて無いんじゃ無いかと思わせるくらい暑い。5月でこの陽気。長袖シャツが腕に張り付く。彼女といるせいで自分が汗臭かったらどうしようなんて考えてしまう。
まだ冬服だがスカートに長袖シャツの彼女の格好は眩しかった。
少しだけ折り返したシャツから見える白い肌はとても美しく光っていた。少し短めのスカートから見える足も直視できないくらいだった。
ハルカは香水の類いは付けていない、薄く化粧をしているだけにもかかわらず、なんともいい匂いがする。髪が長いせいだろうか。かきあげるたびにその香りにクラクラしてしまう。
ハルカが言う。
「そーいやさ、今日皆既日食だよね?たぶんそろそろだよ?ソウタロウ厨二病だからそーゆーのすきでしょ?」
バスの椅子に座ったハルカは吊り革を掴んで立っている僕にイタズラに笑いかけてきた。
「厨二病なめんな!悪魔降臨させてやろーか!」
なんてふざけてみたけど、前屈みになっていたハルカの胸元のシャツから覗く胸の谷間に釘付けになっていた。目線はバレる。何かで見た情報。見ていてバレるのが気になって僕は少し顔を逸らした。
「日食かぁ」
確かに昨日からニュース番組で取り上げられていた。次見れるのは何十年だか何百年だか後だっていっていた。特別見たかったわけじゃ無いけど、ロマンはある。もしかしたら月と太陽が重なる時、選ばれ者[僕とハルカ]が異世界に転生されて勇者になって、魔王を倒して、2人は結ばれて、あんな事やこんな事をして、むふふふ。
キーーーーーーン
頭痛だ!マズイ耐えられないくらいだ!
頭を手で覆う。脳の血管が破裂しそうな痛み。
苦しい、、。
「ソウタロウ!大丈夫!?顔真っ青!」
言葉を返せない、、、。
「ソウタロウ!ソウタロウ!、、、、!」
ハルカの声が遠のいていく。
何とか目を開けハルカを見た。
ハルカは心配そうに僕を見ている。
倒れ込んだ僕を抱き抱えているのか。
彼女の頭上では太陽が日食の準備を始めていた。
バスの車内が騒めく。
僕のことでか、日食でなのか、乗客がザワザワしている。
あれ?日食ってこんな速さでなるっけ???
太陽を月が重なったらその瞬間。僕とハルカは宇宙に放り出された。
正確には実際の宇宙ではないと思うのだが、数多の星が煌めく空間といったらよいか。上も下も左右も重力もないその空間に僕と僕を抱き寄せるハルカ二人だけがいた。
静かだ、音がない。何も聞こえない。
頭痛は止まない。
耳鳴りは激しくなる。
僕とハルカの間で真っ白な小さな星が光っている。
彼女が何か喋っているが、口をぱくぱくしていて声は聞こえない。ソウタロウと僕の名前を言っているのはわかる。
酷く怯えている。
僕は冷静だった。大丈夫だよハルカ。
そう言いたかった。僕の声も聞こえないのだろう。
僕らは見つめ合った。涙を溜めて見つめるハルカの瞳からは不安、恐怖、心配、興奮が見てとれた。
とても美しかった。
その時。
だんだん白い光が強くなる。
その瞬間星は大きな光と衝撃波を発生させ、僕とハルカを引き剥がした。
「ハルカーーー!!」
「ソウタローー!!」
目の前は星の光に包まれて真っ白になっていた。