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7.ウォーキング


「い、痛い」


 翌朝、メルヴィを起こして待っていると、体を引きずるように寝室から出てきた。昨日のトレーニングの様子を見るに筋肉痛だろう。


「朝食出来てるよ」

「あの……体中が痛いんですけど」

「体を動かすたびに痛いんでしょ?」

「そう」

「特に背中が痛い?」

「うん」

「それは筋肉痛って言って、体の筋肉が成長している証拠だよ」

「そうなんですか?痛めたわけじゃないの?」

「大丈夫。しっかり食べて、今日は他の部位をトレーニングするよ」

「え……」


 筋トレを今日もやると思っていなかったのか、彼女の顔から絶望が伝わって来る。


「今日は休みって訳に……」

「いかないかな。絶対無理っていうなら強制はしないけど」

「えぇ、どうしよう」

「迷うくらいならやっちゃおう!」

「は、はい……」


 嫌々ながらも、承諾したメルヴィと一緒に朝食を取り始める。フォークとスプーンを使う度に、背中の筋肉痛に顔を歪める彼女を見ているのは、面白くもあった。


 朝食後、メルヴィ―を連れて外に出た。いつものウォーキングだ。本来は朝食前にしたいのだが、メルヴィに言ってなかったので後にした。


「ここら辺は空気が綺麗だよね」

「空気が綺麗ってどういう事ですか?そうなのかな?」


 この世界の自然の豊かさを空気の綺麗さで表現したつもりだったが、現代社会と違って排ガスなんて概念がない世界で空気が綺麗と言っても意味が分からない様だった。


「自然が豊かってこと……かな?」

「確かに、でもどこでもこんなもんじゃないでしょうか?」

「そうなのか。まぁいいや、ところでこれはなに?」


 話もそこそこに、生えている青色の木や、角の生えたウサギの名前を訊いてみたりしながら、川岸を散策する。どれも聞きなれない発音のもので、沢山名前を聞いたはずなのに、帰った時にはほぼ覚えていなかった。


「あのーなんだっけ、教えて貰った。鳥の名前、食べるのに向いているやつ」

「あぁ、フェイシャイラですか?」

「そうそれ!フェイナントカって家畜であったりするのかな?」

「そうですね、卵も毎日のように産むので、フェイシャ農家もいるくらいですよ」


 話を聞いている限り、ほぼ鶏の様なものだろう。貴重なたんぱく源として是非とも入手しておきたい。こちらの世界にプロテインがあるとは思えないし、そうなれば魚や肉からタンパク質を取っていくしかなのだ。


「街行ったら、買えたりする?」

「買えますけど……」

「けど?」

「ここらの森ならウヨウヨいるので、狩った方が絶対安上がりですよ?」

「か、狩り?」


 地方都市生まれ、都会在住、自炊もそこそこの圧倒的消費者たる自分にとって、狩りなんてものは無縁過ぎて出来るわけがなかった。


「無理かも……」

「もしかして、街生まれとかですか?」

「そうなんだよね、弓矢とか触ったことない」

「えぇ……本当に貴族なんじゃ?いや、それなら弓矢は扱うか……」


 メルヴィはこちらの出身をまた疑った後、何やら考え込んでしまった。


「……メルヴィ?」

「分かりました……私が狩りをします。方法も教えますよ」


 この世界で生き抜いていくには必須の知識だろう。教えてくれるなら、是非とも教わりたい。


「いいのか?」

「助けてくれたお礼も兼ねてです」

「ありがとう」

「そうなると、弓矢が必要なんですけど持って……る訳ないですよね」

「その通りです」

「今日、筋トレ?とかが終わった後で作りましょう」

「え、買わないの?」

「弓矢くらいエルフだったら誰でも作れますよ。自分の弓は成人した時に自分で作るモノですし、矢も勿論必要に応じて自分で作ります」

「凄いな」

「立川さんの分も作ってあげましょう」

「いいのか!?ありがとう」


 弓矢を作ってもらう約束をしたところで、家の前に到着した。体感にして1時間ほどのウォーキングは、十分な準備運動になった。

 今日は腕の日だ。肩の筋トレのミリタリープレスから始まり、ダンベルプレス等の重さを扱える種目を順調にこなしていく。自分はアップライトロウは肩を痛めるのでやらない。

 次に三頭筋の種目でナローのベンチプレスから、スカルクラッシャー等で苛め抜いて、ディップスで締める。

 最後に二頭筋の種目のバーベルカールとEZバーカールからインクラインカールなんかを経て、ネガティブのダンベルカールで終了だ。リスト(手首)はもう握力が残っていなかったのであきらめた。

 一緒にトレーニングを始めたメルヴィはというと、途中で突いてくるのが無理になったので、自分の半分のセットでやらせたのだが、それでも4時間の筋トレが終わるころには、ベンチの上に体を放り出して、寝転がっていた。


「はい、プロテイン」

「あの……」

「ん?どうした?」

「今日、弓を作るのは諦めましょう。スプーンさえ持てる気さえしないです」


 確かに腕トレの後は、仕事で文字を書くことを諦めていたことを思い出した。


「それじゃあ、明日頼むよ」

「はい……」

「さぁ、風呂に入って体を解してからゆっくりしよう」

「うぅ、体が動きません」

「仕方ないなぁ」


 その日は結局休日のように、ゆっくりして終わった。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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