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48.薄幸令嬢、前を向く

 病室に運ばれた小夜は、(はやて)の治療を受けた。


 目覚めた小夜は、彼女を心配していた全員から無謀を咎められた。


中には、屍食鬼を全て片付け終えた十夜まで交じり、遠回しに説教をされた。


 怒られることは昔から苦手だったが、瑛人(あきと)たちに怒られるのはどこか嬉しかったのは内緒だ。


 手首を数針縫い傷跡が残ってしまったことを心配されたが、一時でも旭を助けられたことを誇らしく思っている。


 旭は、特務陰陽部隊に連行され、研究所襲撃の実行犯として裁かれると聞いた。今は帝国陸軍の刑務所にいる。


 多くの人間を(さら)った罪、研究所を襲い()(しよく)()に研究員を襲わせた罪は小夜にかばいきれるものではなかった。


 小夜の血による効果は血清よりも効果はあるものの、一時的なものでもあるため、定期的に研究所から提供される血清を打たなければ屍食鬼(ししよくき)化してしまう。


 そのため、夜光を捕らえるために協力するという条件で血清の提供を受けている。


 華峰家に旭が連行され裁かれる旨が知らされると、(そう)は旭を勘当し華峰家との関係を断った。


「いい気味だと思ってらっしゃるんでしょう」


 瑛人(あきと)に頼み、旭の面会にきた小夜は、出会いがしらにすっかりすれてしまった旭に睨みつけられた。


「これ、差し入れよ」


「なんですの? キャラメル? それにあんこ玉。駄菓子ばかりではないですの。お子様のようですわね」


「罪を償ったら、私を訪ねなさい。瑛人(あきと)様も面倒を見ると言ってくださったわ」


「……ごめんですわ」


 差し入れに文句を言いながらも大切そうに抱えた旭は、ぷいとそっぽを向く。


「私は、働きに出ます。女一人の力で働いて、家を借りて、生活して。それから、傷つけてしまった方々にお詫びをして生きていきます。そこにお姉様の力は必要ありませんわ」


 傲慢だった華族令嬢の華峰旭の姿は、もうそこにはなかった。


「そう……」


「もう来ないでくださいませね」


 可愛げのないことを言った旭は、小夜を見送りながら差し入れのキャラメルを口に放り込み、甘いと呟いた。




「旭さんは、どうだった?」


 刑務所の一室で小夜を待っていた瑛人(あきと)が、心配そうに近づいてくる。


 見かけによらず小夜の行動が思い切りのいいことで、最近の瑛人(あきと)は小夜に対して過保護気味だ。


 今日も、面会に出かける小夜のために会議を休んで送り迎えを買って出てくれた。


「相変わらずでした。また、差し入れに来ようと思います」


「そうか……」


瑛人(あきと)様」


 落ち込んでいるかもしれない小夜にどう声をかけようか迷っていると、瑛人(あきと)を安心させるように小夜が微笑む。


「帰りに、()(しき)さんの駄菓子屋に寄って蛍さんにお土産を買っていきませんか?」


 小夜の言葉に、瑛人(あきと)は太陽のような笑顔を向けた。

こちらで一部が終了となります。

二部開始まで、しばらくお待ちください。


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