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薄幸令嬢は吸血鬼を狩る者に愛される  作者: 中西徹


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31.薄幸令嬢と通夜の席(2)

 夕刻、霧城邸まで自動車で送ってもらった小夜は真っ白な布団に横たえられた大和の傍に控えていた。


 処置を施された大和の顔は、どこか別人のように見えて。通夜に集まった大和の親族たちも、これが霧城子爵だとは思えない、と声を荒げている。


 声を荒げた親族たちの言葉を一身に浴びているのは、大和の死と同時に現れた大和の息子である霧城大河だ。


 大和には、長年連れ添い先立たれた妻がいたが、子どもはいなかった。


 突如として大和の遺言書と大河が大和の息子であることを示した戸籍を持ち現れた大河は、親族たち共通の敵だ。


 通夜ぶるまいの席でも、大河は親族たちに引っ張りまわされ本当に息子なのかと遠回しに問い詰められている。


 離れた席に、(そう)菖蒲(あやめ)と旭が陣取り遠巻きに小夜を見ては何事かを話していた。


 菖蒲(あやめ)に会ったら、嫌味の一つでも言われるかと思っていたのだが、通夜の間から今まで近寄ってすらこず、少々拍子抜けた。


 大和の婚約者であり、今回爵位も財産も相続する大河の婚約者にもなる存在として、小夜への周囲からの視線は厳しいものだった。


 怪しい場所で働いているらしいとか、男の多い場所らしい。など、小夜の粗を探しては引きずり落そうとしている親族たちの聞えよがしの陰口が途切れない。


 なんともぎすぎすした通夜の席だ。


 並べられた豪華な食事に手をつけることなく、黙って控えている小夜の元に、通夜にはふさわしくない笑顔を浮かべた旭が近づいてきた。


「ごめんなさい、お姉様。わたくしはダメだと申し上げたんですが」


 謝っていながら、得意気な顔でふふふと笑う旭の元に、大河がやってきて肩を抱く。


「謝る必要なんてないさ。父の婚約者でありながら、父が行方知れずなのをいいことに勝手に仕事になどついていたふしだらな娘だ。僕の婚約者にはふさわしくない」


「でも、子爵の遺言にはお姉様を大河様の婚約者にとあったのでしょう」


「父も小夜さんがこんな娘だとは存じていなかったのでしょう。父が見つかり、華峰邸に小夜さんを迎えに出向いたとき、事実を知って僕がどれほど悲しい思いをしたことか」


「ああ、元気をお出しになって。大河様」


 目の前で繰り広げられているのはなんの茶番だろう。


「傷ついた僕を慰めてくれたのが、旭さん。あなただった」


「まあ」


 両手で染まった頬を両手で隠す旭を、大河が抱き寄せ、通夜ぶるまいの席に向き直る。


「お集りのみなさん、本来であれば、父の遺言通り華峰小夜さんは、私こと霧城大河の婚約者になるのでしょう。しかし、彼女は私のみならず、父である霧城大和の婚約者にもあるまじき行いをしていました。よって、ここに婚約を破棄し、妹の華峰旭さんとの婚約を宣言します」


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