表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄幸令嬢は吸血鬼を狩る者に愛される  作者: 中西徹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/48

27.薄幸令嬢と鶏レバー

 小夜が研究所の職員になって二月(ふたつき)ほどがたった。


 小夜を取り巻く環境が良くなってきて、健康状態が安定したため、ようやくいくらか血を提供できるようになっていた。


 ぱさぱさだった髪には艶が入り、痩せ細っていた体はやや肉が付き、真っ青だった顔は血色が良くなっている。


 痩せ細っているときは、頬がこけ目ばかり大きく見えていた顔もふっくらとして、もともと見栄えの良かった顔は、少女らしい美しいものになっていた。


 (ふところ)(かがみ)を貰って以来、いつもひとまとめにしていた髪は、瑛人(あきと)がくれた着物が映えるよう丁寧に編み込まれて結いあげられていた。


 運ばれてきた当時を知る研究所の面々は、容姿も身なりも各段に良くなった小夜を影ながら、よかったね。と言い合っていた。


 当初は、まだ血を提供することもできないのにこんな風に自分を扱ってくれるなと言っていた小夜だが、瑛人(あきと)に君は大切な存在だ。


けれど、いくら僕たちが君を大切に扱っても、君自身が君を大切に扱わなくては意味がない。僕たちのことを考えてくれるなら、自分を大切にしてほしい。と伝えられた。


 なぜ、自分を大切にすることが瑛人(あきと)たちのためになるのか分からないと首をかしげながらも、真摯な態度の瑛人(あきと)に負け、言葉に甘えることにして療養期間を心地よく過ごさせてもらう。


 この日は蛍が鶏を捌いてくれたので、皆で焼き鳥を囲んだ。


 蛍が研究したという、秘伝の焼き鳥のたれは非常に美味しく、この日のために熟成させておいたと聞いて申し訳なく思いながら口にする。


 初めて食べた肉の味は非常に美味しく、こんなにいいものをいただいてもいいのだろうかと戸惑っている内に、焼いた焼き鳥の串が次々と目の前の膳に積まれていく。


「ほらほら、早く食べないと冷めちゃうよ」


「焦らせるな、蛍。自分の塩梅で食べてもらえ」


 目の前に積まれた串を上品にけれど素早く平らげていく瑛人(あきと)に驚きながら、少しづつ食べた。


 炊きたてのご飯、焼きたての焼き鳥、温かい味噌汁、新鮮な菜。


 どれも美味しく、自分のために作られていると思うと、心が温かくなる。


 早く健康になって、もっと血を提供しなくては。と気持ちがはやり、ため息をつきそうになって飲み込んだ。


 こんな楽しい食卓に、小石を投げ込むような真似はしたくなかったからだ。


「あとね、これ。嫌だったら食べなくていいんだけど」


 小夜の前に恐る恐るといった様子で持ってこられたのは、これまでの鶏肉よりも色が深く、やや黒い塊が連なる串だった。


「これは……?」


 見慣れないものに首をかしげる。


「レバーという鶏の臓物だ」


「貧血に効果があるんだって。それを聞いてね、血を提供してくれてる小夜ちゃんにいいかもって、旦那が鶏ごと買ってきたんだ」


 おかげで捌くのが大変だったよ。とぼやく蛍に、瑛人(あきと)がすまんと謝っている。


「好みがあるし、嫌なら食べなくても……」


 じっと串を見つめている小夜に瑛人(あきと)が声をかけた時、小夜がぱくりとレバーの串を口にした。


 血抜きがしっかりされており、カリカリになるまで焼かれたレバーは、塩が効いていて美味しかった。


「美味しいです。ありがとうございます」


 笑顔で一串食べた小夜を、二人が嬉しそうに眺めていた。

よろしければ、ブックマークと評価いただければ嬉しいです。

評価は、本編下にある☆☆☆☆☆から入れていただけます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ