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16.薄幸令嬢の血の力(1)

「吸血鬼。と彼らは名乗り、我々もそう呼んでいる」


 一息に説明されたものは、到底信じがたいものだった。


「まるで……おとぎ話のようですね……」


「おとぎ話ね。それならよかったんだけど。不知火(しらぬい)家は長い年月をかけて力を持つようになっていてね、屍食鬼(ししよくき)を不死の兵として扱う研究なんていうものにも手を出しているという噂なのよ」


 なんでも、屍食鬼(ししよくき)の口内には数多くの菌が潜んでおり、少しでも噛まれると同じように理性を欠いた生き物になってしまう。


 そのことを聞かされ、自分も噛まれてしまったことを思い出しぞっとした。


「最近、不知火(しらぬい)家がもともといた以上の屍食鬼(ししよくき)を作っているのではないかという話も出てきていてね、私たちは警戒を強めていたの」


 女学校で噂されていた事件も、屍食鬼(ししよくき)が起こしたものが多いという。


 しかし、責任を追及された不知火(しらぬい)家は、もともとの規定数の屍食鬼(ししよくき)しか存在していないと主張し、不知火(しらぬい)家が管理していない野良の屍食鬼(ししよくき)に関しては無関係を貫いている。


「私たちは、吸血鬼や屍食鬼(ししよくき)の生体を研究している政府機関の一員なの。この子は、ここの所長の息子で、あれらが起こす事件を処理する軍の部隊の隊長ね」


「そうなんですか……」


 突然、非日常的な話を聞かされた小夜は目を白黒させている。


 瑛人(あきと)が所属するのは、特務陰陽機関の中にある特務陰陽部隊という軍の組織だ。


そこで、民間人には知られないように吸血鬼たちの研究と討伐を行っていると言う。


 民間人には秘密だと言いつつも、小夜には語られていることに戸惑う。


 そんな小夜に、(はやて)は真剣なまなざしを向ける。


「私たちの研究はね、不知火(しらぬい)家に頼らず屍食鬼(ししよくき)を殺す方法を探すことなの。そこで、あなたの力を借りたいのよ」


「私の……力?」


 今では、香月(かげつ)家の研究の成果から銀の剣で首を切り離し、火葬することで屍食鬼(ししよくき)の復活を防ぐことができるようになったことが分かったそうだ。


 火で焼き、灰にまでしないと、銀の剣で切り離した程度では首と胴体それぞれが活動してしまうほど生命力が強い、と困ったように(はやて)が語る。


 昨今町を騒がせている野良の屍食鬼(ししよくき)たちは、瑛人(あきと)が率いる特務陰陽部隊が対処にまわっている。


「ここからは僕が言うよ、(はやて)


 自分に話が向けられ、驚いている小夜と視線を合わせるように瑛人(あきと)がベッド脇に膝まづく。


「君の血液を飲んだ屍食鬼(ししよくき)が、首を切り離しただけで絶命したんだ。それも、屍食鬼(ししよくき)である灰色の肌色も牙も無くした状態で。まるで普通の人間のようだった」


 瑛人(あきと)の言葉に小夜は体を強張らせた。


 言っている内容の意味はよくわからなかったが、それが特別な意味を持つことは言外に語られていて。


「君が寝込んでいる間に、血液を調べさせてもらった。その結果、君の血液は、屍食鬼(ししよくき)を人間化する作用があるかもしれないことがわかったんだ」


「それは……つまり……」


「君の血を分析して、薬を作ることができれば、屍食鬼(ししよくき)にされた人々が人間に戻るかもしれないということだ」


 それと、不死の吸血鬼を人間化することもできるかもしれないね。と呟いた瑛人(あきと)の声は、小さすぎて小夜の耳には入らなかった。


 しかし、(はやて)の耳には入ったようで気をつけろというように瑛人(あきと)を睨んでいる。


「君の血は、我々にとって特別なものなんだ」


 緊迫した雰囲気に、小夜はごくりと唾をのむ。


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