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薄幸令嬢は吸血鬼を狩る者に愛される  作者: 中西徹


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1.薄幸令嬢は婚約破棄される

「ごめんなさい、お姉様。わたくしはダメだと申し上げたんですが」


 線香の香りが(ただよ)い黒紋付の老若男女が通夜ぶるまいの席をしめやかにいとなんでいる中、悲しみの中に優越感が入り混じったような声音が響く。


「お集りのみなさん、本来であれば、父の遺言通り(はな)(みね)小夜(さよ)さんは、私、こと(きり)(しろ)大河(たいが)の婚約者になるのでしょう。しかし、彼女は私のみならず、父である霧城大和(やまと)の婚約者にあるまじき行いをしていました。よって、ここに婚約を破棄し、妹の(はな)(みね)(あさひ)さんとの婚約を宣言します」


 酷薄(こくはく)そうな顔に笑みを浮かべながら、ざわつく親族たちの前で旭の肩をとっている男は、小夜の婚約者であった老人の息子だ。数か月前に発見されたばかりの、だが。


 二十代後半ほどで、背は低いが美丈夫の部類に入る顔立ちで、大和の遺言により霧城家の財産と爵位(しやくい)を継ぐということならば、旭との婚約も華峰家は否とは言わないだろう。


 なんせ、華峰家は先祖の積み重ねた借金のため没落寸前で、霧城家の老人に小夜が嫁ぐという条件で資金援助を受けていたのだから。


 相手が変わるだけのことだ。


「本当にごめんなさい、お姉様。本来なら、わたくしではなくてお姉さまが大河様の婚約者にというお話だったのですが……。わたくし、大河様を一目見た時から、愛してしまったんです」


 旭は肩を震わせながら潤んだ瞳で姉である小夜を見る。


 そして、小夜の顔になんの感情も浮かんでいないことを確認し、小さく舌を打つ。


「お姉様の価値は、霧城子爵の婚約者だったことだけなのに。なんの価値もなくなったら華峰のお家にはいられませんね」


 小夜にだけ届くように(ささや)かれた言葉は、発した本人にとって望んだ効果をもたらした。


 旭の言葉により深くうつむいた小夜の、伏せた睫毛がわずかに震えたからだ。


 わずかながらだが、腹違いの姉である小夜の感情の変化に旭の中の優越感が刺激される。


小夜はいつも何の感情も持たないような表情で、淡々と日々を過ごしている。


 小夜の表情が豊かになると腹が立つが、自分の言動を淡々と受け流されるのも腹が立つ。


 父親の過ちによって先に産まれた小夜は、旭と旭の母である菖蒲(あやめ)に対して罪を償わなければならないのだ。


 伯爵家である華峰家の跡取りの旭が嫁ぐには、霧城家は家格が落ちるものの、潤沢な資金源を持っている。


 そのうえ、恋愛結婚を夢見ていた旭の前にあらわれた霧城大河は、大和に息子だと認められる以前から旭のことを好ましく思っていたと熱烈に求めてくれた。


 小夜の婚約者であった大和はどこか気味が悪く、年老いていて、近寄ることも(いと)うていたが、彼の息子はまあまあだ。


 年若く、背が低いことを除いては美丈夫ともいえる大河の告白は、愛され求められて嫁すことが女の幸せであると信じて疑わない旭を納得させるものだった。


「かわいそうな、お姉様」


 口を真一文字に結んだ小夜に、勝った。と心の中に喜びが湧きあがる。


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