s
s
耳に羽虫が。しつこい。僕はまっすぐ帰るつもりでいたんだ。もちろん、曲線がないわけではないけどね。
僕は唖然としたよ。家がなくなってたんだ。アラバマだからしょうがないかなと思った。
水色の砂の大地に埋もれて、いつか発掘された時に、こんな馬鹿らしい生活してたんだと思われればそれでいいよ。
それでも、一人暮らしの部屋は、僕がぎゅっと凝縮されたみたいで、友達が知らない間に死んでたって訃報を聞かされたみたいに、水臭いなと思ったよ。
故郷は遠きにありて思うもの。僕らはエレカの故郷の砂漠に戻ったよ。エレカはウインドペンのシャツを着てた。
カスタネットがあった所はそこだけ爆発があったみたいに抉れてるんだ。マントルまでどうのって言ってたけど、地球の芯は見えなかったな。
旅の果ては砂漠か。エレカと。タピオカなんて。オムレツを作るんじゃなかったのか、なあ、カスタネットよ。
暑い。僕はスモッグパーカを脱いでTシャツ一枚になったんだ。ヘインズを僕はずっとハーネスと読んでたよ。
「おみず」エレカがどこからかコップ一杯の水を持って来てくれた。「ああ」僕はそれを飲もうとしてこぼしちゃった。ヘインズが見る見る汚れていった。汚染水だったんだ。きっと誰かが煙草で汚したんだろう。
僕は色盲だけど、ちゃんと水色に見えるんだ。僕は、「どういう風に見える?」ってエレカに聞いた。エレカは手で大きな丸を作ってそれを割ってもぐもぐ食べてたな。オレンジなんだなと思ったよ。エレカは僕よりジェスチャーが上手かった。
僕にはオレンジが茶色く見えるんだけど、これは一体どうしたことかと思ったけど、放射線も見えてるんだなと思ったら合点がいった。
ジャクジーみたいに暑かったな。サウナスーツに着替えたらそれが制服になるだろう。僕のハイスクールは海の近くにあったからヨット部まであったんだ。
一回乗ったことがあるけど、ちっとも楽しくなかったな。だって、みんなに嫌われてたから。女みたいな男ばかりだったな。僕はそれよりも絵を描くことが好きだった。美術の先生に教員免許がいらなかったら美術の先生になってたかも知れないな。
あの時から一人暮らしが始まってたんだな。
スミソニアン博物館まで見えそうな遠い目をしてたら、水色の砂漠が僕の目に映り込んだ。ああ、そうか、目が青いから実在しない砂漠が見えるんだ。
みんながオレンジって言うんだからオレンジなんだろう、それを見てる僕の方こそ実在しないんじゃないかって思えてきたよ。
目から雨が。
「ナカナイデ」エレカが座ってる僕を心配してくれたんだ。
ああ、僕はずっと寒かったんだ。
僕は気付いたらエレカにすがり付いてた。
君の中に僕がいるよ。
いつもそばにいるからね。
終わりのないのは目を閉じてるからなんだ。
オレンジの果汁で書いた絵手紙みたいに火を近づけたらきっとこの光景が浮かんで来るよ。
美術の先生になりたかったなあ、生徒に絵を教えて、自分でも好きな絵を描いて、自画像で目を大きく描いて本の表紙にしたかった。
他人が書いた本でも僕のフォトグラフィーにするんだ。
僕の絵は進化してきっと喋り出すよ。
「ご賞味あれ」ってね。




