表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

r


 煙草を吸わなかったからよく眠れた。僕は夢の中で空を飛んでいた。

正確に言うなら空を飛べる骨を掴んだ。空を飛べる骨は「気を抜く」ことにあるんだ。

そうすりゃフワフワ浮く。思い通りにはいかないけど、風に流されたり、山にぶつかりそうになったり、大体事なきを得る。

やっと骨を掴んだのに、目覚めると忘れてしまうんだ。

朝、起きるとエレカがバナナとヨーグルトを食べていた。夢のように嬉しかったよ。

「僕の分は?」

エレカは元気がなかった。本当にイイ男は誰かを慰めたり励ましたりできる男だと思うんだよ。

「おすすめは何ですか?」

エレカはそっと笑ってチョココロネかクロワッサンか選べと言ってきたよ。

僕はさんざん迷ったあげくチョココロネを選んだ。

「嬉しいなあ、ちょうどチョコとコロネを食べたい気分だったんだ」

エレカはケラケラ笑った。僕はまずチョコの棒を引き抜いて食べ始めた、残ったコロネを見て「クロワッサンじゃないか」と言ったよ。

次の「おすすめ」はブラウンシュガーの乗ったプディングだった。エレカは枕を口に当てて笑わないようにしてた。僕はブラウンシュガーをこぼさないように食べ始めた。

「ティースプーンはないかな?」

エレカはヨーグルトを食べてた先割れスプーンを差し出した。僕はそれでブラウンシュガーをすくってヨーグルトにかけてあげた。

舌を上唇に入れて猿のマネをして、交互に指差し「食べろ」とジェスチャーした。子供には下らないジョークが通用するもんだね。エレカは足をバタバタさせて枕を叩いて笑ってた。

エレカのヨレヨレのスリップからシースルーの肌が透けて見えた。僕は全てが色で見えるんだけど、エレカは全身がピンク色だったな。

大人になってくると白色になるんだけど、女の子はピンク色を友達と思ってるのかも知れないね。

僕のポケットにはなぜか輪ゴムが入ってた。僕はそれでエレカの髪を三つにまとめてあげたよ。ぐっと大人っぽくなった。

クロワッサンだけが残ったから、それを僕の「おすすめ」にしようとして取っておいた。エレカの退院手続きをしていると、そこにワーイプ、ジッカ夫妻がいた。「次の世界が来た!」って言ってたよ。シナダレって神様は輪廻転生の神様らしい。

生まれ変わりなんてナンセンス。それじゃあ、この世は何のためにあるんだい? あの世は何の意味があるんだい?

「実家に帰れ」って僕は言ったよ。現金かと思われるかも知れないけど自分がさほど醜くないって分かってから何だか夢が湧いて来たよ。

タテイシは足を折ったみたいで宙吊りにされてたな。ナースがマスクをしてるのは臭かったからじゃない、みんな人間は人間らしく働いてるんだな。

「どこに居たんだい」「家で転んだんだ」そういう奴もいるさ。

「虫の知らせはあったかい」「何の話だ」僕はエレカと病院を出た。

灰色とピンクはよく合うから僕は灰色になろうと努めたんだ。幸い僕のスモッグパーカはサンドカモだったから砂漠と見分けがつかなかった。色のない水色の砂漠は空が落ちてきたみたいでどっからが空で、どっからが地で、海に来たみたいだったな。

エレカは体が強張ってた。多分、思い出したんだと思うよ。トラウマにならないといいな、僕みたいに朝しかめっ面しないで、トーストとコーヒーでどうか健やかに大人になって。

そのとき僕はいないだろうけど、青い目をした人がいたと思って。

いつだって愛だった。

そこに僕がいるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ