第94話 天神様と労り
お待たせ致しましたー
───────……なんだろう。
温かい。
温泉に浸かっているかのように……とても温かい。
苛立ちや、憎しみに溢れ返っていた気持ちまでもが。
溶けてしまいそうだった。
これは……何か。
何が……起きたのだろうか?
私は……何を?
何を、憎んでいた?
何を……呪おうとしていた?
何に、制裁を下そうとしていた?
わからない。
だけど……温かい。
気持ちが、溶けていくのが心地良い。
目の前は、赤紫の光で包まれていたが。
ああ……ああ。
思い出せた。
この光は……聖樹石だけではなく。
『世界樹』のものだ。
『……落ち着きましたか? ミザネ』
光が落ち着き……人型の女性が出てきた。
赤髪が美しい……世界樹の分身体だ。
『……私は、道を間違えようと。またしてしまったんだね?』
かつての平安の世で。
私を貶めてくれた……皇族や貴族らに、怨みが重なり……怨霊となったあの時のように。
知人となった、レインを撒き込んだふぇありーとやらが許せずに……それまでの経験で得た心労が重なり、怨霊となりかけた。
『仕方がないことです。あなたは……今もとても優しいですから』
『……優しい、か』
その気持ちだけで、怨霊にはならないと思うけれど。
しかし、分身体は気にせずに私の歪な腕に触れた。
『ええ、あなたはとても優しい。だからこそ、この世界の神は、あなたを選んだ』
分身体が触れたところから……元の、少年姿の私の腕に戻っていく。
すぐに、他の部分も戻った。
『……これは』
『さ。あの子達に言いたいことは……『大人』らしく、きちんと叱ってやってください』
『……そうだね』
頭に血がのぼっただけで、怨霊となるのは情けないが。
きちんとすべきことはしよう。
私は光から出ることにしたよ。
次回はまた明日〜




