第70話 天神様と見学②
お待たせ致しましたー
いやはや……なかなかに広い場所だ、城の中と言うものは。
京の都にあったような……平安の世の屋敷とはまた違う。と言うより、比べものにならないくらい……広くて大きい。
天井も、私を祀っていた社と比較も出来ない。それくらい……飛翔しないと、届かないくらいに高いのだ。
道も迷いそうで……旗を持つ女性を見失わないように気をつけねば。トビトも離れないように、ピッタリと私にくっつくように歩いていた。
フータは、私の腕の中でキョロキョロとしていたがおとなしくはしていた。私達の代わりに、聖樹石の気配を探ってくれているのだろう。
「はーい。少し休憩にしましょう」
案内係の女性がそう言ってくれたので、やっと立ち止まることが出来た。
息切れはないが、しばらく歩いていたから……気持ちとしては、ひと息つけるのでありがたい。
トビトは目だけで周囲を探っていたが……今立ち止まった広い廊下では聖樹石の気配はないようだ。フータも身体を左右に振っていた。
「この後は、階段の上がり下がりが続きます。城は城塞も兼ねているので、敵の方向感覚を鈍らせるためですね」
そのような情報を与えていいのか? とも思ったが……すぐに、教えても大変だと言うことがわかった。
本当に上がり下がりの繰り返しで、覚えるのも億劫になるくらいだったからだ!
面倒で飛翔したくなるくらいだったよ!!
『マスター……だ、じょぶ?』
「……うん。大丈夫」
傷を負っていないので、回復魔法は役に立たない。
トビトも少し、辛そうだったが……前を歩く案内係の女性は……慣れているから、私達の歩幅を気にしつつ置いていこうとはしない。
意外に侮れない人間だと思ったよ。
「はい! あと少しですよ!! テラスに出れますので!!」
と、何度も言ってくれたが……慣れていないと『あと少し』が遠い距離に思えてしまう。
しかし、なんとか頑張った先には……石造りの、『展望台』のような場所に出ることが出来た。
案内された十数名が余裕で出ることが出来た場所。
そこは、地面からかなり離れているのか……すぐに、ラファエロの街が見渡せたのだった。
『き……れー!』
「……そうだね」
フータがそう声を上げるくらい……日の光に照らされた街を、私も美しいと思えたよ。
「……ぜー……ぜー……」
そして、トビトはまだ見下ろす余裕がないのか……肩で息をしていたよ。
大丈夫かと、声をかけてあげれば……とりあえずは首を縦に振ったが。
これをまた、帰りの順路も同じところを行くのなら……私よりも彼が大丈夫か気をつけなくてはね?
次回はまた明日〜




