第65話 天神様と狐子供①
お待たせ致しましたー
お湯の温もりを堪能していると……私の隣に誰かが来たのだ。
「おにーちゃん! 抱っこしてるのなーに!?」
子どもだ。今の私よりも……はるかに幼い。
魔……ではなく、今の聖なる森で出会った、意識体のリーンよりも幼いか?
獣人らしい、頭に狐耳があり……髪で覆われているので人間の耳は見えない。もしくは、ないか。
その子は……フータに興味があるのか、こっちに来たようだ。親は……すぐに見当たらなかったが。
『ぼ……く?』
「! しゃべった!?」
「この子はフータ。僕の契約精霊なんだよ」
「? せーれー?」
「うん。そうだよ」
大人とは違って、知識が乏しいか見慣れていないのか。おそらく……後者だろうね?
狐耳の子は、フータをじーっと見つめていたが……無闇に触ろうとはしなかった。そこは、親の躾が良いのだろう。
「……抱っこ」
だが……いくらか欲はあるのだろう。
ぷかぷかしている、大福のようなフータの触り心地を知りたいのかもしれない。しかし、癇癪を起こすわけではなく……ただ見つめているだけ。
であれば……その姿勢に免じて、少し欲を叶えてあげよう。私だけの一存と言うわけにもいかないが。
「フータ。いやじゃなきゃ……この子に抱っこしてもらう?」
『だ……こ?』
「うん。いいかな?」
『う……ん!』
「お、おにーちゃん……いいの?」
「フータが良いって言ってくれたからね?」
『だ……こ』
「……抱っこする!!」
その声が大きく響いたのか……すぐに水が跳ねる音が聞こえ、もっと大きな狐耳の男性がこちらに来たのだ。
「レイン!? 居ないと思ったら!?」
「お……おとーちゃん」
「すみません。息子が何か」
『だ……こ?』
「え……精霊?」
親らしい彼は、フータを見るとぽかんと口を開けてしまったよ。
そして、子どもと交互に見ると……すぐに、子の方の頭に手を置き、無理に下げさせたのだった。
「え?」
「ほんとーに、申し訳ありません!! 息子が不躾なことを!!」
「い、いえ。僕の契約精霊を抱っこしたがっていたので」
「すみません!! ほら、お前も」
「……うん」
何故か子どもにまで謝らせるようだが。レインと呼ばれた子は、まだ何もしていないのに。
ここは……と、レインの前にフータを差し出してあげたよ?
「? あの?」
「フータは良いと言ったので……やらせてあげてください」
「し、しかし……」
「いいんです」
「……い、良いの?」
「うん。僕らは良いよ?」
手を掴んで、フータの身体に添えてあげれば。
思った以上の感触に驚いたのか、すぐに顔を輝かせたのだった。
次回はまた明日〜




